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ジャンベで盆踊りを奏でる午後

今日は前の職場の先輩と久しぶりに会った。

車に乗せてもらい、走り出したところで先輩が言う。

「後ろ見て」

振り向く。

ジャンベがあった。

ジャンベとはアフリカの太鼓である。

しかも、ちょこんと置いてある感じではない。

存在感たっぷりに後部座席を占領している。

思わず笑ってしまった。

そういえば韓国で会った時、その先輩が言っていた。

「ジャンベを思いっきり叩きたいんだよね」

あの時は、

「へぇー先輩、ジャンベ好きなんだー」

くらいに聞いていた。

一時帰国の貴重な時間に、こうしてジャンベを叩いているらしい。

先輩、なんかかわいいっすね。

そう思ってしまう。

ダム横の公園の木陰に座り、先輩のレクチャーが始まる。
先輩お気に入りのジャンベ奏者をYoutubeで見せてもらった。

ドコドコドコドコッ!
タタン!

と、体全体でリズムを刻んでいる。

何だこのかっこいいリズムは!!!

そしてさっそく叩いてみる。

ドドンがドン
ドドンがドン

……完全に盆踊りである。

どう頑張ってもアフリカにならない。

頭の中ではサバンナを駆け抜けているのに、出てくるのは町内会の夏祭りだ。

リズム感は無いと自負している。

だから予想通りと言えば予想通りなのだが、それでも叩く手は止まらない。

先輩のアドバイスでたまに「ターン!」と綺麗な音が鳴る。

すると嬉しくなって、また叩く。

しばらくするとまた綺麗な音が鳴る。

犬がおやつで芸を覚える気持ちが少し分かった。

ダムの向こう岸では人が歩いている。

意外なほど声がよく聞こえる。

ということは、こちらのジャンベも聞こえているはずだ。

向こう岸の人たちは今ごろ、

「あれ何の音だろう?」

と思っているかもしれない。

ジャンベの練習だと気づいてくれればまだいい。

盆踊りの自主練だと思われていたら少し恥ずかしい。

もっとも、私はモミジの陰に隠れている。

音は聞こえても姿は見えない。

それをいいことに調子に乗る。

ドン。

ドドン。

ドドドン。

もはやリズムではなく勢いである。

気がつけば夢中になっていた。

上手く叩けたわけではない。

アフリカにも行けなかった。

最後まで町内会の夏祭りだった。

だが先輩を差し置きかなり満足した。

楽しければ盆踊りでも構わない。


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