【毎週ショートショートnote(無頼ママチャリ)】[ スマホに映る思い出とか、 ]
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無頼、って、なに? 意味は? てか、何て読むの? そんなお話です。

[ スマホに映る思い出とか、 ]
いつしかGoogleマップで、地元を見る癖がついてしまった。
ほんの少しの好奇心で見始めたのに、今では気づくと、地元を見ている。
駅前のデパート、グループでデートした公園。
鳩のマークのスーパー。卒業した学校。
地元のいろんな場所を歩いた。
何度も見に行った場所もある。
思い出が強いところは何度だって行ってみたくなる。
ただ、一箇所だけ、行けていないところがあった。
今住んでいるこの街に出てきて、一年ちょっと。
その間、親とは会っていない。
親の反対を押し切って出てきただけに、自分から会いに行きづらい。
それはGoogleマップでも同じだった。
実家の近所までは行くが、直ぐに別の方向へ歩き出していた。
今日はよっぽど疲れていたのだろう。
今、画面には、実家が映っている。
庭付きの一戸建て、地方都市なら珍しくない。
2台停められる駐車場には、いつも停っているはずのワンボックスカーは無かった。
きっと父は会社にでも行っているのだろう。
車がない駐車場には、ポツンと古びたママチャリが無造作に停めてあった。
薄いブルーのママチャリ。
元からこんな色だったかまでは覚えていない。
母が、ずっと乗っているママチャリだ。
子どもの頃、荷台に括り付けられた椅子に乗せられ、鳩のマークのスーパーへよく連れて行かれた。
いつだか、俺の足が後ろの車輪に挟まってしまい、大騒ぎになったことがあった。
近くの自転車屋さんが飛んできて、俺の足を挟んでいる車輪に付いている棒を、1、2本切ったのを覚えている。あのとき、その棒がスポークという名前だと初めて知った。
めちゃめちゃパニクっていた母は、ずっと俺の頭を撫でながら「ごめんね、ごめんね」と何度も言っていた。
足が車輪から外れた時は、すごい力で抱きしめてくれたっけ。
あんなに抱きしめられたのは、あの時だけかもしれない。
ところで、あのあと、スポークは取り替えたのかなぁ。
中学校の三者面談の時、珍しく、それぞれの自転車に乗って、一緒に学校へ向かうことがあった。
俺の自転車に遅れまいと、母は必死な形相でママチャリのペダルを漕いでたっけ。
小さな体で、懸命に漕ぐ足の速さが尋常じゃなくて「アニメみたいだ」と笑うと、必死に漕ぎながら、被っていた帽子を押さえ、コチラに笑顔だけ向けてくれた。
その後も、いろんな光景が頭をよぎる。
なんだか、懐かしかった。
そうだよな……、懐かしいよな。
そして、なんだか、あったかいなぁ。
一度、帰ってみてもいいのかなぁ。
お盆も終わるし、在来線ならそんなに混んでないだろう。
ふらりとスマホの画面に現れた無頼のママチャリのせいで、俺は少しだけ、前へ進みたくなった。
おしまい。
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