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【片想い文芸部 | 月】

「月餅てさ、謎じゃない? 」
ずっと神妙そうな顔してたからお腹でも空いたのかと思ってたら、由佳は変なことを言い出した。
「なにが? 」
「いやだってね、月餅を食べたい! て思うことないじゃん? そしたら普通消えていくのに、まだしぶとく残ってるの意味わかんなくない? 」
「根強いファンがいるんじゃない? それか、おじいちゃんおばあちゃんになったら急に食べたくなるとか? 」
「なにそれ、こわっ……。謎のエキスとか入ってんのかな? 」
「謎のエキスやばっ!? なになにお年寄りから抽出された搾り汁みたいの? 」
「ひぃ……グロいのやめて! ちがうよ、高麗人参みたいのだよ」
「えー、高麗人参のがなくない? 」
「でもうちのおばあちゃん毎日飲んでるよ? 」
「由佳ん家のおばあちゃんだけだよ」

そのまま高麗人参が体にいいかどうか話してたら目的地のコンビニに着いた。
肝心の日焼け止めを買ってお金を払おうと思ったら、横から「これも一緒に」とあずきバーを由佳が置いてくる。
はぁ? とすこしイラッとしたから「ついでにこれも」とレジ横にあった月餅をレジに置いた。由佳は目をまん丸くしてこっちを見た。

「なるほどねー、こういう時に売れるんだね月餅て」
あずきバーのお金をしっかり貰って歩きながら月餅を食べる。
「いや、だいぶレアじゃない? 」
「そうかな? 意外とおばあちゃんたちもこういうやりとりで買っちゃってるんじゃない? 」
「そんなおばあちゃんたちふざけすぎててやだよ」
「えー、かわいいじゃん! うち結構ふざけてるおばあちゃん好きだよ」
「わたしは凛としたおばあちゃんのがいい」
「あーね、梓なりそうな気配ある」
「由佳も変わんなそう、てか月餅甘さがくどくてもう辛いんだけど? 」
「それはうちだってくどいうえに、硬くて全然食べれないんだけど? 交換してよ? 」
「やだよ! ぬるいあんこが冷たいあんこになるだけじゃん 」
ぬるいあんこ!? と由佳はお腹を抱えて笑い出す。
「ていうかチョイス渋すぎない? 絶対店員あだ名つけてる」
「明日からあずきバーと月餅が取り置きされてるかも」
「なにそれ変なプレッシャー」
「うちらは期待に応えるため死ぬまで買い続けなきゃならない……」
「そんな期待すぐ裏切った方がいい」
「梓それ辛辣」
「でもおばあちゃんになってもこうやっていっしょに食べながら帰りたいよね」
「その時にはあずきバーは安泰だけど、月餅はもうなくなってると思う」
「それこそ由佳辛辣」

なんか今日も かわされてしまった。これからわたしは何度振られ続けるんだろう、とすこし考えながら月餅を食べ切る。しつこい甘さにちょっとだけ元気が出た。


【片想い文芸部】参加作品です🙇‍♀️

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