【設定公開】森を知ってしまった少女(仮)
■あらすじ
森の近くに、一人の少女が住んでいた。
人々は彼女を特別視していたが、
少女自身は、そうは思っていなかった。
ただ、祖母の家へ行ったことがある。
それだけだ。
森には、古くから言い伝えがあった。
森には意思があり、
その意思を運ぶ者がいる、と。
人の姿を取らず、
獣の形をして現れるそれらは、
森の掟に従って歩き、
人の理屈では動かなかった。
祖母は、森の言葉を知っていた。
人の言葉と、森の言葉を、
静かに行き来できる者だった。
役目を終えた翻訳者は、
森に還る。
それが決まりだった。
その時、森の使いが現れる。
狼の姿をしたそれは、
翻訳者を食べ、
森へと返す。
それは死ではなく、
終わりだった。
少女は、その終わりを見届けるために
森へ入った。
次の翻訳者になるためではない。
ただ、終わったことを
人の目で確かめるために。
けれど、狼は少女も食べた。
それは、決まりにはなかった。
森の使いは、役目を越えた。
だから、狼は処分された。
処分を行ったのは、
かつて調停者と呼ばれた男だった。
森と人が交わる場所に立ち、
均衡が崩れた時だけ動く者。
だが、狼がいなくなり、
翻訳者が消えた世界で、
調停者の立つ場所もまた失われた。
男は去った。
罰せられたわけではない。
ただ、必要とされなくなった。
残ったのは、
森を知ってしまった少女だけだった。
人々は言った。
「お前は森を知っている」と。
少女は首を振った。
知ったのではない。
見ただけだ。
それでも人々は、
彼女に答えを求めた。
どうすればよいのか。
森とどう向き合えばよいのか。
少女は翻訳しなかった。
説明もしなかった。
彼女は、ただ黙って見ていた。
人は、理解したと思った瞬間に、
仲立ちを不要とする。
それが人という生き物だからだ。
やがて人々は、
自分たちの言葉だけで
森へ踏み込んでいった。
その最初の失敗を、
少女は見ていた。
■ 利用について
本設定は 自由に利用・改変可能です
二次創作・一次創作・ゲーム・小説・TRPGなど用途不問
著作権は放棄していません
使用時は
「原案:朔月」等のクレジット表記をお願いします
商用利用可(連絡要)
