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神戸のいちじくケーキ

 昨日、神戸に住む知人と十年ぶりに再会し、人形町でランチを楽しんだ。詳しくは昨日の日記に書いたので、今日は手土産にいただいた「いちじくケーキ」のことを書いてみたい。

 いただいたケーキは、箱を持った瞬間にずっしりとした重みが伝わってきた。帰宅すると、監視人殿(妻)は待ちきれない様子で包みを開け、早速二人分を切り分けてくれた。コーヒーをいれ、さっそく試食である。

 ケーキにたっぷり入ったいちじくを口にすると、独特のねっとりとした甘さのあとに、ほのかな酸味が広がる。実に味わい深い。監視人殿は「これはものすごく美味しい」と大感激で、「食べたあとのコーヒーまで美味しく感じる」と言う。そして、「取り寄せたいね」と、すっかり気に入った様子だった。

 私は姫路に住んでいた頃、日曜日になるとよく神戸へジャズを聴きに出かけた。しかし、その時に楽しむのは寿司か蕎麦ばかりで、いちじくケーキの存在は知らなかった。神戸には、まだまだ知らない名物があるものだ。

 もっとも、私にとって「いちじく」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、子どもの頃の思い出である。

 当時、東京・世田谷の社宅に住んでいた。木造の小さな社宅が十数軒並んでいたが、一戸ごとの敷地は比較的広く、庭にはそれぞれ木が植えられていた。

 隣の家では、境の塀沿いにいちじくの木を植えていた。その枝は塀を越えて我が家の庭まで伸び、毎年たくさんの実をつけた。隣のおばさんは、「どんどん採ってください」と、申し訳なさそうに声をかけてくれる。私たちは遠慮なくいただき、夏になると採りたてのいちじくを冷蔵庫で冷やして食べるのが楽しみだった。あの素朴で甘酸っぱい味は、今でも忘れられない。

 昨日は夕食後にも、もう一切れいただいた。監視人殿はまた「美味しい」を連発し、すっかりお気に入りになったようだ。大きなケーキなので、あと二、三日は楽しめそうである。

 神戸のお土産が、思いがけず子どもの頃の夏の思い出まで運んできてくれた。そんな意味でも、このいちじくケーキは忘れられない味になりそうである。

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