[超短編小説]りりちゃん
うちには1体のアザラシのぬいぐるみがある。昔から家にあったもので、妻が子供の頃に遊んでいたらしい。
家の片隅で眠っていたところをひょんなことから娘が手に入れ、つけた名前がりりちゃん。
りりちゃんは白くて丸っこく、妻が子供の頃に遊んだということなので、年代的にアニメの「少年アシベ」に出てくるアザラシのキャラクターである「ゴマちゃん」に便乗しやがったなと僕はにらんでいる。
ある日、娘が僕の枕をどこかに持っていってしまった。多分自分の部屋で何かの遊び道具にでもするつもりなのであろう。
さて寝るかとなった時、始めは枕がなくとも大丈夫、困るのは「妖怪枕返し」ぐらいであろうと高をくくっていたのだが、いざ寝ようとすると、思った以上に困ってしまった。頭がしっくりこないのだ。なにか頭と布団の間に挟むものはないかと周りを見渡してみる。
そんなとき手の届くところにりりちゃんがいた。
その丸っこい体。
その丸っこいお顔。
枕ぐらいの大きさ。
試しに頭の下に置いてみると、思ったよりしっくりくる。これはいけるぞ。
こうしてりりちゃんに僕の枕としての役割が与えられたのだ。
りりちゃんがいるので、枕のことはすっかりどうでもよくなって、日々は過ぎていった。
そしてある日、りりちゃんを枕にしようと手に持ったりりちゃんを見てみると、お顔がひしゃげて斜めに細長くなっているではないか。
夜の間、僕の頭と布団に挟まれ続けたからなのか。
お顔がひしゃげて細長いりりちゃん。
今にも「あべし」って言いそうなりりちゃん。
僕はそんなりりちゃんを見て笑ってしまった。
そして娘に怒られ、りりちゃんを取り上げられてしまったのだ。
僕の頭と布団に挟まれ、ひしゃげて細長いお顔になったりりちゃん。
挟まれたりりちゃん。
サンドイッチりりちゃん。
そして、僕はりりちゃんを元に戻す為、今まで力が加わっていた方向ではなく、反対方向から両手でりりちゃんの顔を挟み込んで逆サンドイッチを行い、見事にりりちゃんを元の愛らしい姿に戻した。
だが、もう枕がわりに使うことは娘が許してくれなくなってしまった。
りりちゃんは今日もお部屋の片隅でゴロンしている。
