「減っていない」という最大の恐怖。預金通帳の1000万円が、実質200万円の価値になる日 【正刊:お金の科学編】
中央銀行の主な役割は、国債などを売買して「金利」や「通貨供給量」を調整することです。株式のような価格変動リスクの大きい資産を購入することは中央銀行自身の財務を傷めるリスクがあるため、米FRBや欧州ECBなど他の主要中央銀行では行われていません。それにもかかわらず日銀が2010年にETF買い入れを導入し、2013年からの異次元緩和で急速に拡大した主な理由は、デフレ脱却に向けた投資家のリスク回避姿勢の打開と、株価急落時に買いを入れて市場の底値を支えるセーフティネットとしての機能にありました。
日銀が長年かけて積み上げた買い入れ総額(簿価)は約37.1兆円に上ります。2020年春のコロナショック以降、日本株が力強い上昇相場を描いたことで、日銀の保有ポートフォリオの時価は100兆円前後に達し、含み益だけでも50兆円から70兆円規模まで大きく膨らみました。これは東証プライム市場全体の時価総額に対して約7〜8%に相当し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と並んで、日銀は事実上日本企業の最大級の大株主となっています。
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この巨額の買い入れは市場に多大な影響をもたらしました。市場の試算では、日銀の存在自体が日経平均株価を総合的に約10%前後押し上げ、急落時のボラティリティ(変動率)を抑える大きな効果があったとされています。その一方で、業績に関わらず指数構成銘柄を一律で買い入れる仕組みであったため市場の価格発見機能や企業選別機能を歪めたほか、信託銀行を通じた間接保有により企業統治(コーポレートガバナンス)における適切な議決権行使が難しいという課題も残しました。
現在、政策のフェーズは完全に移行しています。日銀は2024年3月にETFの新規買い入れを終了させた後、保有資産の処分方針を固め、2026年からは年間簿価ベースで約3,300億円(時価で約6,000億〜7,000億円規模)という非常に慎重なペースで市場での売却を進めています。この売却ペースは1日の東証出来高の0.05%未満に抑えられ、相場急落時には売却を停止する安全装置も設けられています。簿価37兆円超の資産を消化するには単純計算で100年以上の時間を要するため、日銀は市場にショックを与えないよう、極めて長い年月をかけた「静かな売却」を続けています。
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