ラブリーで全て丸く収まるイギリス
きっかけは、運転中に鼻歌で小沢健二のラブリーを歌っていたときのこと。
オーベイビー、ラブリーラブリーと連呼するこの歌を歌いながら、そういえば、私は最近なんでもかんでも"lovely"と言ってるな、とふと思って笑ってしまった。
話を戻すと、英語の" lovely "は、日本では可愛いものを指すときに使う形容詞という認識が強いかもしれない。けれど、イギリスでは、“lovely”は人の心を温め、年齢も性別も関係なく、その人らしさを認める「魔法のようなことば」なのだ。
日本では、年齢を重ねるにつれて「可愛い」とか「素敵ね」と言われる機会はどんどん減っていっているような気がする。
年相応とか、大人らしくとか…そういう言葉に縛られて、自分を飾るのが少し恥ずかしく感じたり。
そもそも、知らない人に「素敵ね」なんて声をかけることなんて、普段イギリスで生活している私でさえ、日本では躊躇してしまうかも。
でもイギリスでは、場所も年齢も関係なく、素敵な人がいたらわりと誰にでもさらっと声をかけあう。
スーパーのレジでおしゃれなワンピースを着ていたら、
「Oh, that’s a lovely dress!」とサラッと声をかけてくれる。
通りすがりのカフェでにっこり笑ったら、
「You’ve got a lovely smile!」と言ってくれる。
80歳の女性にも、5歳の女の子にも、同じようにみんなが“lovely”を使うのだ。
年齢や立場に関係なく、人の魅力を自然に伝えるこの言葉に、私は何度も救われてきた。
イギリス人が言う“lovely”は、単なる「見た目が可愛い・素敵」なのではなく、
紅茶を出したら「Oh, lovely!」
新しい髪型にしたら「That’s lovely!」
スーパーでレジを終えたら「Thanks, lovely!」
小雨が止んでも「Lovely weather now, isn’t it?」
…何がそんなにラブリーなのか、一瞬戸惑うけれど(笑)、この“lovely”は、「いい感じだね」「ありがたいね」「気持ちいいね」「あなた、素敵よ」といった、曖昧で柔らかい褒め言葉の万能訳なのである。
“lovely”はその人の内面や行動にも向けられる言葉なのだ。誰かのやさしさ、心配り、空気の温かさ…。いや、人だけではない。ペットだって、料理だって、花だって、、、「目に見えない魅力」をさりげなく褒める文化が、イギリスにはある気がする。
日本人は謙遜の文化が根強いので、褒められるとつい「いえいえ、そんな…」と返してしまう。
でもイギリスでは、褒め言葉は人との距離を縮めるためのツールとしてごく自然に使われている。
私も以前初めて“Lovely”と言われたときは、「えー、そんなそんな」と謙遜していた。でも最近ではにっこり笑って“Thank you!”と返せるようになった。
とてもシンプルだけど、この会話を交わすだけで心が通い合ったような温かい気持ちになる。
長年イギリスに住んでいるうちに、私自身も“lovely”という言葉を自然にそれも頻繁に使うようになった。
お隣さんがケーキを作ってくれたときにも
「That’s lovely, thank you.」
友人が親身に話を聞いてくれたときにも
「You’ve got such a lovely heart.」
そして最も使うのは
「Have a lovely day!」ー よい一日を過ごしてね!
イギリスに長年住んで思うことは、「人は何歳でも“lovely”でいていい」ということ。
誰かを褒めることも、自分自身の“lovelyさ”を大切にすることも、年齢とは関係なく、笑顔も、気遣いも、服のセンスも、その人らしい温かさも——すべてが“lovely”なのだ。
“lovely”という言葉には、使えば全てが丸く収まってしまうような、不思議な力がある。怒っていても、困っていても、気まずくても、
まずはひとこと「Lovely!」と言ってみると、ふっと空気が和らぐ。
ちょっと疲れた日も、誰かを
褒めるのが照れくさいときも。
“Lovely”を使ってみれば、世界がほんの少し優しく感じられるかもしれません。
今日、ひとつでも“lovely”な瞬間が訪れますように。
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