漢字の文法 〈左(偏)は部首,右(旁)は音符〉を改めて意識した・・・前編
字素「王」について整理する。
結論から言えば,「王」が字の左(偏)に来るときは「玉」を意味する分類字素(部首)になる。
他の場所に「王」が来るときは「オウ」と読むことが多い。しかし,他の字素「壬/𡈼/主/全/羊/金」からの字形変化も多いため,単純でない。
字素検索のできる次のサイト[脚注]を利用して,常用漢字45字を選んだ。
国, 議, 全, 現, 理, 主, 球, 着, 環, 義,
差, 美, 望, 様, 程, 王, 皇, 玉, 儀, 徴,
養, 宝, 聖, 犠, 懲, 珍, 狂, 呈, 琴, 班,
潤, 珠, 釜, 窯, 斑, 栓, 玩, 旺, 瑠, 弄,
羞, 羨, 詮, 璃, 璽
共通部分があるため,ここに含まれているが,字素「𦍌」は「羊」から派生した別の字素になる。
議, 着, 義, 差, 美, 様, 儀, 養, 犠, 窯, 羞, 羨
「羊」は分類字素(または,部首,義符)や表音字素(または,音符,声符)としても使用されている字素である。これについての考察は別に行う。そのため,上の45字から除く。
国, , 全, 現, 理, 主, 球, , 環, ,
, , 望, , 程, 王, 皇, 玉, , 徴,
, 宝, 聖, , 懲, 珍, 狂, 呈, 琴, 班,
潤, 珠, 釜, , 斑, 栓, 玩, 旺, 瑠, 弄,
, , 詮, 璃, 璽
同じく,共通部分があるため一緒に掲載されているが,「王」と「玉」は別の字素である。それぞれ音を持っている。
王(オウ), 玉(ギョク)
字源も違っている。「王」についてはマサカリ(鉞)がもとになっている説が有力である。処刑の道具だったことから権力の象徴,または武器だったことから軍事力の象徴として使われたと考えられている。
「玉」についてはりなどにつかうたまからきている。
字素「玉」をそのまま使ってあるのは「国」「宝」「璽」である。
このうち,「国」「宝」は省略の結果,「玉」となったので旧字は「國」「寶」だった。
「國」の中,「或」は「惑星」で使われているように「ワク」と読んだ。「ワク」から「コク」への音韻変化となったと考える。「玉」となった理由として「コク」ならば,「ギョク」とも音が似ているからであろう。
「寶」の中には,「王」が字素として使われていた。略字として「宝」となった。「丶」は言わば,省略したことを示す記号として使われた。だから,結果として同じ字形になった。そして,「オウou」の音も「ホウhou」として残った。
残りの「璽ジ」は「玉」の意味で使用しており,「ギョク」とは呼んでいない。
つまり,「玉」は単独で用いる時のみ「ギョク」であり,表音字素「ギョク」にはならない。
他に「玉」を使う字では「完璧」もあるが,これも「ギョク」とは読んでいない。
次に「王」が字の左(偏)にくる字を選ぶ。次の11字になる。
現, 理, 球, 環, 珍, 班, 珠, 斑, 玩, 瑠, 璃
これらはすべて「玉」の意味で使われている。「玉を左」に置いた字形である。「王」の意味で使われている字はなかった。偏にくる「王」はすべて「玉」であり,部首となる。
今後,混乱を避けるためにも「おうへん」と言うのはやめた方が良いのではないか?
この中に「班, 斑」は,「王」が2つ使われている。「琴」も「王」が2つ使われているが,別の字源らしい。この部分は「糸巻きの付いた楽器」から作られた。糸巻きは両側にあるので「王」も2つある。この場合は,「玨」が楽器を意味する字素になる。「琵琶」にも使われている。
「琴」「琵」「琶」ともに「玨」は音を表していない。この場合,本来単独の部を設置した方が分類字素(部首)の役目をはたすはずである。『説文解字』では「玨」の部首が設けてあった。
部首数を減らそうとして統廃合が行われたようだ。
(残りの字は後編に続く)
