見出し画像

怖がりがホラーを書き続けたら、24日目でTALESのランキングがホラーになった話

気づいたら、ランキング画面が1番のホラーになっていた。


TALESのホラージャンル。
日間ランキング 1位。
週間ランキング 1位。
月間ランキング 1位。
そして、累計ランキング 1位。

全部1位ってあるんだ


画面の前で固まりながら、わたしが最初に思ったのは、感動より先に純粋な困惑だった。
どう考えても、そんなポジションはわたしのキャラではない。

そもそも、わたしはホラーが苦手だ。
以前も書いたが、ホラー映画はひとりで見られないし、ゲームのびっくり演出には毎回ちゃんと悲鳴をあげるタイプである。
もちろん、お化け屋敷は入口で引き返す派だ。

そんな人間が、ホラーで全部1位。
この世には、時々こういうバグみたいな出来事が起こるらしい。

ただ一つだけ、ここまでの流れで胸を張って言えることがある。
それは「最初から得意だったわけではない」ということだ。

最初の一本目は、こわごわの投稿だった

ホラーを書こう、と最初から決めていたわけではない。
ある日、日常の中でふと感じた「ちょっとした、ひやっと」を、短編にしてみたくなっただけだ。

コピー機の前での違和感とか、
オンライン会議で一瞬だけ声が途切れた瞬間とか、
スマホの通知が鳴った気がしたのに画面には何も来ていない時間とか。

普通なら「気のせい」で片づけてしまうような出来事を、文字にしてみたくなった。

書き上がった短編は、どう見てもホラー寄りだった。
けれど、ホラーが苦手なわたしがホラータグをつけるのは、なかなかの勇気がいった。
こわごわタグを選び、えいやと投稿ボタンを押したあと、スマホを伏せてしばらく見ないふりをしたのをよく覚えている。

「怖がりが書くホラーなんて、誰が読むんだろう」

そう思っていたのに、いつしか届いた感想は

怖いけどこれなら読める

という一文だった。

その言葉に、ものすごく救われた。
わたしの中にあった「ホラー=血しぶきと絶叫」のイメージが、そこで少しだけ書き換えられた気がした。

怖がりだからこそ拾えるズレがある

怖がりな人間は、日常の小さなズレに敏感だ。

コピー機がなかなか止まらないだけで、
「この機械、何かを増やしちゃいけないものまで増やしていないか」と考え始めるし、

エレベーターがすぐ来ないだけで、
「今この箱の中で、別の世界線の扉が開いているのでは」と余計な妄想をする。

みんなが「ちょっと変だな」と感じて流してしまうところで、
怖がりは一度立ち止まってしまう。
その立ち止まった時間ごと、短編にしていったのが、今のホラー短編集だ。

1本書けたことで、わたしは調子に乗った。
1本書けたなら、2本目も書けるかもしれない。
2本書けたなら、3本目もいけるかもしれない。

そんな軽いノリで書き続けていたら、
気づけば24日連続でキーボードを叩き、
40話を超える短編集になっていた。

このあたりから、もはや「ホラーを書いている人」ではなく、
「毎日ホラーを書かないとそわそわする人」に変化していったと思う。何故だ……

視点が育つと、世界が少し歪んで見える

毎日のようにホラーのことを考えていると、
世界の見え方が少しずつ変わってくる。

オンライン会議の画面に並ぶアイコンを見て
「ここに、1人だけ誰も知らない参加者が紛れ込んでいたら」
という妄想を始めてしまったり、

通勤電車で全員がスマホを見ている車両に乗り合わせて
「この中の1人だけ、まったく別の通知を受け取っていたら」
なんて考えたりするようになる。

怖がりのまま、ホラー用の視点だけがじわじわ鍛えられていく。
これが本当におもしろい。

そして、その視点が育っていく過程を、わたしは毎日の執筆で体験させてもらった。
最初はただ怖かったものが、少しずつ「素材」に見えてくる。
苦手なジャンルだと思っていた場所が、気づけば一番遊び回っているフィールドになっていた。ほんと不思議よね、創作って。

「とりあえず書いてみる」が物語を動かす

今回、日間・週間・月間・累計。
全部のホラーランキングで1位という結果をいただいた

わたし自身がいちばん驚いているし、
こんなことが起きるなんて、正直まったく想像していなかった。

けれど、ここまでの流れを振り返ってみると、
出発点はたった一つの行動だった。

苦手そうだけどとりあえず1本書いてみるか

この一歩がなかったら、ランキング画面がホラーになる日も、
読者さんからの「怖かったです」という感想も、きっと存在していない。

最初は苦手だったジャンルでも、手探りでいいから続けていれば、
どこかでふっと、1つの結果が返ってくることがある。

それを今回は、自分自身の身で体験させてもらえた。
非常に得難い経験だったと思う。

だからこそ、あらためて強く感じている。
まずは「書いてみる」って、本当に大事だ。

これから書く人へ

これを読んでいるあなたが、もし「書いてみたいけれど、わたしなんて」と迷っているなら、
ぜひ一度、自分の中の「苦手そうなやつ」にも目を向けてみてほしい。

ミステリーが難しそうなら、日常のちょっとした違和感から始めてもいい。
恋愛が照れくさいなら、友だちへのメモみたいな距離感から書いてみてもいい。

ジャンルを完璧に理解してから挑戦しなくても、
とりあえず500文字、1000文字。
1本だけ書いてみることで、世界のほうが少し動いてくれることがある。

最初は苦手だったホラーで、気づけば全部1位を獲ってしまった怖がりが言うのだから、
少しくらいは説得力があればうれしい。

わたしはこれからも、日常の小さなズレを拾い集めて、
あなたの見ている世界を、ほんの少しだけ歪ませる物語を書いていこうと思う。

その物語の続きが、あなたの「とりあえず1本書いてみる」から始まってくれたら———


それ以上の喜びはない。

いいなと思ったら応援しよう!