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靴下はどこへ消えるのか

きょうも、洗濯機の前で立ち尽くした。
靴下の片方が見当たらない。確かに入れたはずなのに、姿がない。

ふたを開けると、ぬるい湯気と柔軟剤の甘い匂いが立ちのぼる。

ネットを振る。Tシャツが出る。タオルが出る。もう一方の靴下が転がり出る。

肝心のやつだけが、なぜだか沈黙している。
ネットの口からのぞくと、糸くずが威張っている。お呼びではない。

理由を考える。まずは物理。
回転の端っこで押し固められ、ネットの角に潜り込む。

ファスナーの小さな隙間から、ぬるりと脱走する。
大きなタオルに帯電して貼り付き、二人三脚で干し場まで行ってしまう。

布団カバーの口は、ときどきワープゲートになる。
説明はつく。けれど、腑に落ちない日もある。

日常の手抜きも大きい。
洗う前から別れていることがある。

片方は洗濯かご、もう片方はベッドの下。
昨日のわたしの投げやりが、今日のわたしの仕事を増やしている。解せぬ。

加害者と被害者を一人で兼任するのは、なかなかにむなしい。許してたもれ。

ネットは万能ではない。
小さ過ぎる袋に詰め込みすぎると、内部は迷路になる。難攻不落のラビリンス。

角で引っかかった靴下が、出口を見失ったまま乾燥コースへ旅立つ。いってらっしゃい。
規則は過密に負ける。これは都会の通勤電車と同じだ。

後始末も難しい。
片割れ靴下を、わたしは簡単に捨てられない。
いつか戻る気がして、引き出しの隅に待機箱を作ってある。封印。

白黒ボーダー、濃いグレー、黒。似た顔ぶれが肩を寄せ合い、静かに時を過ごす。

ある日、奇跡の再会が起きる。

ただし、そのとき別の一足が欠員になる。
埋めれば欠け、欠ければ埋まる。水位の変わらない池みたいだ。

「なくなったら、足すだけや」


対策も試した。
同じ柄を大量にそろえる作戦。これはたしかに強い。
ただ、足は生き物で、厚みやゴムの張りの違いを覚えてしまう。

左右が微妙にけんかする。歩くたびに、ぎくしゃくする。
洗濯前にクリップで留めておく方法もある。
理屈は完璧だが、朝のわたしは完璧から一番遠いところにいる。
靴下を婚約させてから出勤する余裕は、たいていない。

それでも、回し続ける。
洗濯機の低い唸りを聞きながら、わたしは小さな成功を願っている。エロイムエッサイム、テクマクマヤコン、アブラカタブラ。

人生の大半は手に負えないが、靴下くらいは揃えたい。
ふたを開けた瞬間、きょうの運勢が決まる気がする。

見つかる日もある。
ベッドの下で丸まり、洗濯機の側面に張り付き、干し終えたバスタオルの陰に潜む。
手に取った瞬間の安堵と、同時に込み上げる自分への苦笑い。
わたしは布片に過剰なドラマを見ているのかもしれない。
それでも、こういう小競り合いが暮らしの密度を少し上げる。

学びは遅いが、ゼロではない。
ネットは一つ減らし、大きめに乗り換えた。
詰め込みをやめ、回数で稼ぐようにした。
待機箱はそのまま残す。あれはあれで、物語の保管庫だ。
帰ってきた仲間を静かに迎える場所があると、人は少しだけ優しくなれる。

きょうも一枚が見当たらなかった。
それでも、明日もまた洗うだろう。

理屈と面倒くささの真ん中あたりで、ほどよく折り合いをつけながら。
完璧よりも、だいたい揃っていればいい。
そのゆるさが、暮らしを前に進めてくれる気がする。

靴下はどこへ消えるのか。
答えは毎回違う。だから、探し続ける理由になる。


ほんま、なんでなんやろか......?😩

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