お袋の味をつくってきたあの日本酒はどこへ消えたのか?
あの一升瓶はどこに消えたのか?
僕は中学校まで家族7人で暮らしていた。
冬に学校から帰宅すると、母はいつも『お煮しめ』の大鍋を石油ストーブの上で温めていてくれる。
僕は夕食までの間、おやつ代わりに『お煮しめ』の鍋蓋を幾度も開けては大根や玉子、しらたきなんかを食べていた。
都度、母がタネを追加し醤油と日本酒を継ぎ足しして行くので凄い量の日本酒が調味料として減っていくのである。
(これはほんの一例として、お袋の味には日本酒がいっぱい使われる)
結果、一週間もあれば一升瓶のがほとんど空になっていたのを覚えている。
昨年末、麹を使った 「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録された。
その陰で昔、一般家庭の台所に常備してあった調味料としての日本酒が
僕のご飯に染み込んでいった、あの日本酒がどんどん消えていく。
それを近年、無性に懐かしくもどこか寂しく思い起こしている。(つづく)
