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【小説】博士のアルバム 15話 最終話


 久しぶりに故郷に帰ることを決意し、私は翌日の始発電車に飛び乗った。
電車の窓から見える景色は、都会のビル群から次第に田舎の景色へと変わっていった。故郷は、私にとって遠い過去の一部であり、心の奥底でずっと避けてきた場所だった。

なぜ自分がこんなにも母に対して距離を置いてしまったのか、その理由を理解できずにいた。

 母とはほとんど連絡を取らなくなってから数年間。自分がしてしまった不義理にも関わらず、母のことを忘れようと努めていたが、心の奥底では常にその存在を感じていた。

 病院に到着すると、看護師さんが私を病室へと案内してくれた。ドアを開けると、そこには痩せ細った母が横たわっていた。かつての強さはすっかり失われ、病に侵された体は、まるで別人のようだった。

母の目がゆっくりと開いた。私を見つめるその目は、ただ静かな光だけを宿していた。

「…来てくれたのね」

母の声はかすかで、今にも消えてしまいそうだった。私は母の手をそっと握り返した。その手は驚くほど冷たかった。

「お母さん、私、ごめんなさい、本当にごめんなさい…」

言葉が喉に詰まる。何を言えばいいのか、何を言いたいのか、まるでわからなかった。

母は微笑んだ。その微笑みは、かつての優しい母の顔だった。涙が頬を伝った。

母は私を許していた。
自分勝手で絶縁した私のことを。時間も、傷つけた言葉もすべて。




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