刑法上の占有、民法上の占有
刑法上の占有は財物を実際に支配している事実や意思が必要であるのに対し、民法上の占有は、財物を実際に支配していなくても成立するようです。
たとえば、窃盗罪(刑法235条)が成立するためには、他人の占有する他人の財物を窃取することが必要です。
※見方を変えると、他人の財物であっても、自分が占有している財物や、誰も占有していない財物であれば窃盗罪は成立しません。なお、自分が占有している他人の財物を自らのものにする行為は横領であり、誰も占有していない他人の財物を自分の物にしてしまう行為は占有離脱物横領になります。
刑法上、財物を占有しているといえるためには、①占有の事実と、②占有の意思と、が必要とされています。占有の事実とは、財物を事実上支配している状態のことです。一方、占有の意思とは財物を事実上支配する意思のことです。刑法上、占有があったか否かは、占有の事実、及び、占有の意思の両方を考慮して判断するようです。
財物を現実に(物理的に)所持している場合のような占有の事実が強い場合、占有の意思が弱くても占有ありとされることが多いと思います。また、離れたバス停にカメラ(財物)を置いてきてしまった場合のように占有の事実が弱い場合でも、その財物を置いてきたことを常に意識しているような占有の意思が強い場合には占有があると認められることが多いようです。
一方、民法においては、占有改定(民法183条)があるように、自分自身が財物を実際に支配している事実は不要です。
占有改定とは、占有の移転方式の一つであり、ある目的物の占有者がそれを手元に置いたまま占有を他者に移すことです(民法183条)。
自己占有(直接占有)は維持したまま、代理占有(間接占有)が意思表示のみによって移転します。それまで物(財物・目的物)の占有者であった者は、占有代理人となります。
・民法180条 占有権の取得
(占有権の取得)
第百八十条 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
・民法183条 占有改定
(占有改定)
第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
・刑法235条 窃盗
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
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