特許法 紫式部ジャム(特願2020-148573号)
一部で話題になった(と思う)紫式部ジャムに関する特願2020-148573号(特開2022-23751号)(以下、「本件出願」)ですが、2011年11月30日に特許査定されています。しかし、特許料納付がなされず、特許権の設定登録はなされていません。
なお、タイトルで使用させて頂いている画像は、紫式部の画像と思います。
1.本件出願の内容
本件出願の特許請求の範囲には、請求項1だけが記載されています。具体的内容は、以下の通りです。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容と健康と頭に良い紫式部ジャム。
請求項では、「美容と健康と頭に良い」という効果で紫式部ジャムが限定されています。
本件出願では、栄養価が低いことが課題とされています。紫式部の実で作ったジャムは、従来のジャムと比較して栄養価が高いため、美容と健康と頭に良いという効果が得られるのではないかと思います。
(57)【要約】
【課題】今迄のジャムは甘いだけで、栄養価が低い。
【解決手段】紫式部の実でジャムを作る事により、美容と健康と頭に良いジャムが出来る。
正直な話、適当な内容の出願かと思っていました。しかし、発明の詳細な説明を読んだところ、内容自体は正統派の出願と思いました。
具体的には、従来は、食用とされることのなかった紫式部の実ですが、紫式部の実が美容と健康と頭に良いとする文献があったようです。この美容と健康と頭に良いという効果に着目して、紫式部の実を、日持ちするジャムに加工したというのが、本件出願のポイントです。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
紫式部の実は、あの紫式部が食用に用いた事で紫式部と名付けられた。
【0002】
当時から世間で食用とされる事は無かったが、唯一紫式部に関する文献で1ヶ所、美容と健康と頭に良いとされている。
【0003】
現代でも食べられる習慣は無い。
【0004】
ここでは日持ちのするジャムにした。
【0005】
作り方は鍋に紫式部の実とその倍のハチミツ、その分量と同等の水を入れてコトコト煮込む。
【0006】
かき混ぜながら、ジャムに成ったら火を消して完成。
【0007】
美容と健康と頭に良い紫式部ジャムの、出来上がり。
本件出願では、2021/07/13に拒絶理由通知がなされています。
拒絶理由通知では、
①引用文献1、2には、American beautyberryをジャム(Jelly)にすることが記載されていること、
②当業者が、引用文献1,2の記載に基づいて、日本で同様のジャムを製造するために紫式部の実を使用することは容易、
という流れで本件出願の進歩性が否定されています。
2.拒絶理由通知に対する意見書の内容
この拒絶理由通知に対し、本願出願人は、以下のような内容の意見書を提出しています。補正はしていません。
【意見の内容】
進歩性
American beauty berryとJapanese beauty berryは全くの別物である。
私は両方食べた事がある。
あちらの方にも紫式部を食べて貰った事もある。
American beauty berryは甘くフルーティで果物という感じである。
Japanese beauty berryは不味い。
あちらの方も、第一答不味いと答えていた。
更には、American beauty berryは、食べ物だが、Japanese beauty berryは食べ物では無いと、答えていた。
この反応はほぼ全員そうであった。
現実に紫式部は食用とされていない。
不味い代わりに栄養価は高い話をすると納得していた。
良薬は口に苦しという。
アメリカのものよりも原種に近い紫式部。
大きさもアメリカの物はとても大きいが、紫式部は小さい。
実のつき方も全然違う。
原種の方が栄養で勝っているのは当然である。
別物という向こうの主張に、ではなぜ似た名前を付けた?と反論した所。
それは名付けた人に聞いてくれ、との事だった。無理である。
食用で無い物を食用のジャムとするは、容易に思い付かない。
やはり発明である。紫式部の実は、美容と健康、頭にも良い。
これを社会に提供するのは益である。
意見書で主張されたポイントは、
①紫式部は不味く、食用にはしない、
②食用で無い紫式部を食用のジャムとすることは、容易に思い付かない。
というところと思われます。
上手い流れで、阻害要因と、有利な効果とを主張されています。
確かにこの主張であれば、進歩性が認められそうです。本件出願では、この意見書が提出された後、2021/11/30に特許査定がなされています。
3.本件出願に対する個人的見解
3.1.請求項の構成
正直な話、出願人の主張が正しいのであれば、「美容と健康と頭に良い」という効果は、紫式部ジャムの固有の効果だと思います。このため、請求項の記載は、
【請求項1】美容と健康と頭に良い紫式部ジャム。
ではなく、
【請求項1】紫式部ジャム。
にした方が良かったと思います。
3.2.特許性(出願人とは別の方向から)
出願人の主張とは「別の方向」から、特許権を取得できるかについて考えてみました。
現状では、
①紫式部の果実が苦いことは公知であり、
②苦い果実の渋抜き等を行った後、ジャムにすることは公知であり、
③紫式部の含有成分として、フラボノイドやタンニンがあるらしいので、苦み成分はタンニンの可能性が高いと思われます。
・・・ムラサキシキブの果実は成熟すると紫色になり、秋頃に実らせます。その形状は球形になっています。紫式部に含有される成分では、フラボノイドやタンニンといったものがあります。
これらの①~③を考慮すると、渋抜き等により、タンニンが抜けることを丁寧に説明すれば特許されうるかもしれません。
3.3.特許権侵害について
最初に記事を作った時には、特許権侵害がなされることまでは考えていませんでした。
しかし、実際の侵害訴訟では、特許発明の効果(請求項1で限定された効果)を否定することになるでしょうから、請求項1の「美容と健康と頭に良い」を否定する流れになりますね。。。
紫式部ジャム特許について、もし侵害訴訟になったら、「美しくなったじゃないか」という原告に対して「いや、そんなことはない」と被告が反論し、「頭が良くなったじゃないか」という原告に対して「いや、頭は全く良くなっていない」と被告が反論する...という、おぞましい裁判になるかもしれない。
— Edison (@patenchu) April 7, 2022
●参考情報
・特願2020-148573号(特開2022-23751号)の公報
#弁理士 #弁理士試験 #弁理士試験の受験勉強 #知財 #知財法 #特許法
#特願2020 -148573 #特開2022 -23751 #紫式部 #紫式部ジャム
#毎日note #コラム #毎日更新 #note #毎日投稿 #note毎日更新 #毎日 #最近の学び #毎日更新倶楽部 #考察コラム #クリエイティブ #士業
