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特許法・商標法 「消尽」及び「商標機能論」と、それらの例外

1.概要

 特許権に対応した物の「譲渡」は実施に該当し、商標権に対応した物の譲渡は使用に該当します(特許法2条3項、商標法2条3項)。また、転々譲渡する行為は、複数回の譲渡行為に該当します。

 このため、特許法等を文理解釈すると、ライセンス等を受けていない者が転々譲渡する行為は、全て特許権等の侵害になります。特許権等の権利が侵害されている場合、権利者は、差止請求等(特許法100条等)ができます。この差止請求等は、知的財産権の行使とも呼ばれます。民法の領域では、これらの転々譲渡されることに伴う侵害行為は、共同不法行為(民法719条)に該当するとの解釈もありえます。

 しかし、通説・判例では、「対象物に特に変更を加える行為がなされない限り」、権利者は、その譲受人が対象となるものを転々譲渡する行為は知的財産権を侵害することはなく、知的財産権を行使することができないとされています。この知的財産権を行使することができない理由が、消尽論や商標機能論です。

2.消尽と商標機能論

 2.1.特許権の消尽について

特許法における消尽論は、例えば、BBS並行輸入事件(最高裁平成9年7月1日)で示されています。BBS並行輸入事件では、特許権者等が我が国の国内において特許製品を譲渡した場合には、当該特許製品について特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品を使用し、譲渡し又は貸し渡す行為等には及ばないものとされました。

なお、「消尽」という言葉を使う際には、「用い尽くされ消尽し・・・」のように、用尽と消尽とをセットで使うことも多いです。

 2.2.商標機能論について

 商標法では、消尽論ではなく、商標機能論を根拠として、我が国の国内において商標が付された製品を転々と譲渡等する行為に対する権利行使ができないとします。商標は、特定の商標が付された商品群を、他の商標が付された商品群から識別されることにより(自他商品等識別機能)、特定の商標が付された商品群の出所を表示・識別させる機能(出所表示機能)を有します。また、出所識別機能を基礎として、特定の商標が付された商品は一定以上の品質が保証される機能(品質保証機能)が発揮されます。これらの商標の機能が害されないのであれば、文理解釈上は商標権侵害であっても、実質的には、商標権を侵害するものではない(実質的違法性が無い)と考えられます。このような考え方を商標機能論といいます。つまり、商標権に係る商品に対しては、出所表示機能や品質保証機能といった商標の機能を害するか否かが、商標権侵害となるか否かの判断基準です。

3.消尽論や商標機能論の例外

 3.1.特許権での消尽の例外

 インクカートリッジ事件(最高裁平成19年11月8日)では、対象物に特に変更を加える行為がなされた場合には、特許権者は、その特許製品について、特許権を行使することが許されると判示しています。インクカートリッジ事件で示されたのは、特許法の範囲では、
①特許権者等が我が国の国内において特許製品を譲渡した場合、当該特許製品に係る特許権は消尽する。このため、特許権の効力は、その後、当該特許製品を再譲渡等する行為(流通ルートに乗って譲渡される行為など)には及ばない。
しかし、
特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められる場合には、特許権者は、例外的に、その特許製品について特許権を行使することが許される
ということです。

 インクカートリッジ事件には、知財高裁での判決もあります。インクカートリッジ事件(知財高裁平成18年1月31日)では、第一類型、第二類型の記載があります。この知財高裁での判断の後に最高裁での判断(最高裁平成19年11月8日)がなされています。論文試験では、基本的に第一類型、第二類型を記載する必要はないと思います。しかし、第一類型、第二類型に沿って論理を展開する場合には、あらかじめ、判決文等を研究するべきと思われます。

 3.2.商標機能論の例外について

 フレッドペリー事件(最高裁平成15年2月27日)では、3つの要件を満たす場合「のみ」並行輸入として商標権侵害にならないとした。これらの要件は、
 第1要件:外国における商標権者等によって商標が適法に付されたこと、
 第2要件:付された商標が、我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであること
 第3要件:対象となる商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商標とが、登録商標の保証する品質において実質的に差異がないこと、
です。見方を変えると、この3つの要件を全て満たさない場合は、商標権侵害となります。

 参考判例ですが、脱獄iphone事件(千葉地裁平成29年5月18日)では、最初の譲渡の後に商品に改変を加え、当該商標を付したまま転売することは、出所表示機能や品質保証機能を害するものであるから、商標権侵害を構成するとの判示がなされています。また、TWG事件(東京地裁平成28年11月24日)では、商標権者が販売した商品を小分けし、小分けした商品に商標権者の商標を付す行為は、出所表示機能や品質保証機能を害するものであるから、商標権侵害を構成するとの判示がなされています。

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