アレルギーはなぜ連鎖するのか?――免疫細胞が持ち歩く「炎症の記憶」

「子どものころ湿疹、大きくなって喘息」――これ、たまたまではないかも
赤ちゃんのころに湿疹(アトピー)があって、少し大きくなると食物アレルギー、やがて喘息やアレルギー性鼻炎……
こんなふうに、ひとりの人の中でアレルギーが次々と“リレー”していく現象は、医学の世界で「アレルギーマーチ」と呼ばれています。
「アレルギー体質だからね」で片づけられがちですが、ではなぜ、ある臓器の炎症が、別の臓器の不調へとつながっていくのでしょうか。
千葉大学のグループが2026年に発表した研究は、この長年の疑問に、ひとつの新しい見方を示しました。
キーワードは免疫細胞が持ち歩く「炎症の記憶」です。
免疫には「記憶」がある
私たちの体には、ウイルスや細菌と戦う「免疫」というしくみがあります。
その主役のひとつがT細胞という白血球の仲間です。
T細胞のすごいところは一度戦った相手を「覚えている」こと。
たとえば一度かかった病気に二度はかかりにくかったり、ワクチンが効いたりするのは、この「免疫の記憶」のおかげです。
相手を覚えているT細胞を記憶T細胞と呼びます。
ここまでは、わりと有名な話かもしれません。
今回の主役:「組織に住み着く」記憶T細胞(TRM細胞)
記憶T細胞の中には、ちょっと変わったタイプがいます。
ふつうの免疫細胞は、血液に乗って体じゅうをパトロールしています。ところがこのタイプは、特定の臓器(肺や皮膚、腸など)にそのまま住み着いて、そこを離れません。
これを TRM細胞(組織常在性記憶T細胞) といいます。
イメージとしてはその地域に常駐する「ご当地のおまわりさん」のような存在です。
その場所をよく知っていて、外敵が来たらすぐ対応できる――そういう頼もしい役割を担っています。
これまで免疫学では、「TRM細胞は、いったん組織に住み着いたらずっとそこにいる」と考えられてきました。
名前自体が「常在性(=住み着いている)」ですから、当然のように思えます。
今回の驚き①:住み着いていたはずの細胞が、外へ出ていく
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