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出張者は「安全弱者」 空港ロビー着後の攻防【アジア安全講座】

安全サポート株式会社
代表 有坂 錬成

駐在員や出張者は海外での危険から自身や家族をどう守るのか、専門家が連載でレクチャー。前回は本社の経営者や危機管理部問が知るべきことを紹介したが、今回は当事者にフォーカス。筆者が「守るべき弱者」と位置付ける、出張者のリスクと対策を聞いた

本記事は、NNAカンパサール別冊「安全特集」から転載
別冊はPDFで無料配布中。ぜひダウンロードください
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レクチャー1
フライト直後は魔の時間


――守るべき優先度が高い当事者とは、一体誰でしょう

まずは出張者です。なぜなら、
・現地をよく知らない
・金目の物を持っている
・疲労しがちで隙が多い

からです。

駐在員の場合、大使館や日本人会とのつながりを通じ、その街の様子や安全に関する情報も入ってきます。ただ、出張はそういう情報、経験、関係性が乏しいことが多く、より弱者であると言えます。出張者には安全性の高い対策を施さねばなりません。

出張者にとって一番危ないのは、現地の空港に着いた時
魔の時間です。

長時間のフライトで時差ぼけして疲れている。
狭い機内から解放され、荷物を回収し、入国審査も通過できた。
気が緩んだところに魔の手が忍び寄るわけです。

出迎えのふりをした犯罪者が空港のゲートにたくさん待ち構えています。
不慣れな人間はすぐに分かります。あらゆる手を使って、近付いてきます。サービスのよさそうな顔をして「お迎えに来ましたよ」「ホテルまで安くしとくよ」と連れて行かれてしまう。スリや置引もいます。

空港の到着ロビーは、隙だらけのカモがたくさん降りて来る「狩り場」なのです。

「到着ロビーはカモの狩り場」と有坂氏(NNA撮影)

――どう切り抜ければ

まずは相手にしないこと。大勢の前なら、力ずくで連れていかれることはないので、ついて行かなければいい。

空港からの移動方法を、あらかじめ決めておくことが有効です。自分の動きが決まっていれば、おかしな誘いにも乗らずに済みます。

有力な手段は公式の空港バスや、市内に定額料金で行くバスやタクシー。大体どこの空港にもあります。「チケットタクシー」と呼ばれる定額タクシーは運転手が登録されており、何かすると足がつくので比較的安全だと言われます。

――もし荷物を全て盗まれたら

会社や大使館・領事館に連絡してもらい、救いを求めましょう。それらの場所までタクシーか、もしホテルが決まっているなら、そちらでもよいです。

弊社と契約する顧客の場合、連絡がつけば遠隔で助けることも可能です。

たまにあるのが、強盗に身ぐるみ剥がされてお金も何もないと。
そういう場合でも、例えばその人が泊まるホテルに宿泊費を支払ってあげることができます。さらに「その人に500ドルの現金を渡してくれ」と、ホテル経由でお金の融通もできます。

ある程度の主要都市なら現地の旅行会社とのネットワークもありますので、現場に誰かを向かわせて、当座の居場所、資金、物資、連絡手段などを用意できます。

レクチャー2
ホテルに着いたと気を抜くな


――ホテルに着けば安心でしょうか

ホテルに着いたからといって油断はできません。チェックインする段階で、カウンター付近で荷物を盗まれる人が結構多いのです。

空港と同じで、ホテル到着時も気が緩みます。ようやく着いた、建物に入ったら安全圏内だと錯覚してしまう。そうすると、スーツケースや荷物から目を離してしまう。
ところが、そこにも利用客みたいな顔をした犯罪者がいる。そして荷物を持っていかれるという事案は多いですね。

――部屋の階数、位置や向きのお勧めは

可能なら3階以上。3階から6階くらいが望ましいといつも言っています。

なぜなら、銃乱射や爆弾テロが起きるのは路上や低い階です。1、2階は強盗や空き巣などが入る可能性がある。3階以上の方が安全だろうと言われています。一方、高すぎると火事の際に消防車のはしごや放水が届かないし、逃げられなくなります。

位置や向きは、テロの多い地域なら道路に面してない部屋がいい。道路側だと、路上で自動車爆弾を置かれたら爆風が直撃します。中庭があるホテルなら中庭側が良いです。

部屋の階層は「3~6階が望ましい」と有坂氏。
「高すぎると火事の際に危ない」とも(NNA撮影)

――滞在中、貴重品はどこが安全ですか

方法としては、携行、部屋の金庫、フロントに預ける、の3つ。

自身のトランクケースに入れて鍵をかけるという人がよくいますけれども、絶対駄目です。トランクの鍵は簡単に開けられますし、トランクごと持ち出されたらおしまいなわけですから。

――正直、スタッフも信用できません

もちろん信用できません。ただ、金庫から盗まれたとホテルに申し出れば、誰が盗んだのかは大体分かります。部屋の担当とか掃除係ですよね。その後の話は取り合ってもらいやすいです。

私がお勧めするのは、何日間か滞在するなら部屋やフロアの担当の人たちを名前で呼んで顔見知りになっておくこと。名前を呼ばれると、その客に認識されていると自覚するので、部屋の金庫や荷物には手を出しづらくなります。フロントに預ける際にも有効です。

出所:筆者情報を基にNNA作成

レクチャー3
「安全配慮義務」から考える


――出張者の意識はどうでしょうか

こうした知識の学習や備えが、本人任せでは危ないです。

会社は知識や危険性をしっかり伝えないと「安全配慮義務を問われることになるかもしれませんよ」と最近よく言っています。

出張先の安全に関する情報を与え、危ないなら何らかの教育や対策もして送り出す。それらをしっかりしていれば、会社が安全配慮義務違反を問われることも少ないと思います。

ただ、それはやはり大切な社員を守るためです。
私はあえて「安全配慮義務」という言葉を使い、そう仕向けるようにしています。今回の連載も当事者によく読ませておいてほしいですね。

(聞き手:編集長 岡下貴寛)


有坂 錬成(ありさか・れんせい)
安全サポート株式会社 代表取締役 上席コンサルタント

三井住友海上でドイツ駐在、本社での駐在員送り出し業務、および危機管理業務を担当。1999年、外務省に出向し、官民合同の海外安全対策を担当。「誘拐対策マニュアル」の編集や「海外安全ホームページ」の基となったサイトの立ち上げにも携わる。

安全サポート株式会社
創業20年。海外派遣者の危機管理に特化した危機管理会社。社員の命を守るために必要な、全ての業務をワンストップで提供。顧客は企業、政府機関、大学、業界団体など幅広い。企業担当者向け無料セミナーも多数提供。https://www.anzen-support.com/


本記事は、NNAカンパサール別冊「安全特集」から転載
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