yosugalaが創り上げた「ライブハウス・LINECUBE」——band set oneman『progress the night』【ライブレポート】
座席指定ホール公演特有の早めの入場を促すアナウンスに急かされつつ、
「本公演は演出の都合上お席にご案内できない時間がございます」
と、これまた会場規模の大きさを感じさせる掲示を横目にLINE CUBE SHIBUYAのホール内へ入ると、3階の隅々まで埋め尽くされた客席の様子に改めて驚いた。機材等での閉鎖も最小限、着券率も高く正真正銘の2,000キャパソールドアウト公演である——。
2022年6月結成の4人組アイドルグループyosugalaは、2枚のアルバムリリース・全国ワンマンツアー・多種多様なゲストを迎えての対バンライブの主催など精力的な活動により着実にファンを増やし、この日(2025年2月8日)、自身初のホール公演かつ自身初のバンドセット公演となるワンマンライブ『progress the night』を開催した。本稿では当日の様子をレポートする。
yosugalaがホールへ「連れてきた」ファン
SEに乗ってEREN(AliAのGt.でyosugalaサウンドプロデューサー)をはじめとするバンドメンバーら4人が登場すると、ステージ中央の巨大スクリーンが緞帳のように上昇し、yosugalaメンバー4人が現れる。バンドが鳴らすイントロは文字通りyosugala始まりの曲、『prologue』である。初期の代表曲ながら日頃の対バンライブではめっきり披露の機会が減っているが、ここぞというワンマンの1曲目に持ってくるのは通例のようになっており、グループのこれまでの歩みとこれからの時間への期待感を思わせるに相応しい幕開けである。この日は原曲よりキーを上げての披露というのもバンドセットならではの挑戦だ。
続く『indigo』はAliAと共にyosugalaサウンドの両輪を成すコンポーザー、平地孝次(yosugalaの先輩に当たるPassCodeプロデューサー)の初期提供曲。冒頭からキラーチューンの連投に沸き立つ会場であるが、筆者は何よりその歓声の大きさに驚いた。どのような人気グループであろうとも、1階から3階まである2,000人規模のホール公演ともなれば上階の観客は座って大人しく観ているというのもそう珍しいことではないようにも思う。しかし『indigo』が始まるや否やイントロのスタンダードMIXから大声量、AメロのクラップもBメロの「ちーあちゃん!!」コール*¹も3階の隅々まで割れんばかりの爆音。大サビ直前の「イェッタイガー!」はこれまで体験したこともない一体感である。
さらに続く『オヒメサマ?』ではメンバーらが1階客席通路へ繰り出し躍るといういわゆる「客降り」演出をいきなり解禁。グループ屈指の可愛らしいダンス曲を観客らと同じ目線で踊った。いつもなら未白ちあと汐見まといがグータッチを交わす間奏は、1人ステージに残った未白が観客の方を向いて躍る構成になっており、2階・3階も含めてより一層一体感を引き立たせる。どの段階で誰から出されたアイディアかは知る由もないが、筆者は昨年度の未白ちあ生誕祭での客降り演出を思い出さずにはいられない。
「分かんないじゃん、うちらがFRUITS ZIPPERさんみたいになったら近くに行けないからさ、皆の顔見とこうと思って」
「遠くへ行ってしまったような気がする」というのはアイドルグループがこの規模になってくるとしばしば聞かれる定型句であるが、ホール規模になろうと寂しい思いをさせず、これまで通りの距離感で楽しませよう、そして自らも楽しもうというメンバーらの想いを感じるシーンであった。
客席のメンバーたちに視線が集まる隙にステージ上に突如現れたのはギャルの神様・インド人ラジャと黒肌美女雑誌LOALO発の黒ギャル集団。『YOSUGAL伝説』のMVがLINE CUBEのステージ上で再現されたのである。脱力系なパラパラダンスと共にホール中がギャルピに染まった。
先週は渋谷公会堂でヨスガラさんのバックダンサーしてきたよ〜💝🫶
— るなこんが・Luna💜 (@runa090729) February 12, 2025
久々にデカい箱で踊れて楽しかった🫶 pic.twitter.com/g3jVVpyfDH
yosugalaがファン層を拡大させてきた手法はいわば“ライブ”アイドルとしての「正攻法」である。大規模な対バンイベントで手広いアイドルファンにチェックしてもらうだけでなく、界隈を横断する意欲的な2マンイベントを多数組んで相手グループについている固定ファンにその実力を見てもらい、ワンマンへ動員する。楽曲の魅力とミュージックビデオのプロモーションで口コミを呼び、全国ツアーを回りながら地方まで裾野を広げる。そうした着実な積み重ねの末に2,000人規模のホールまで連れてきたファンだからこそ、「ライブハウス・LINECUBE」とでも言うべき熱量あるフロアを座席指定のホールに創り出すことに成功していた。
チームyosugala
最初のMCではサウンドプロデューサーERENに話が向けられるも場面も。この日は筆者のように彼の久しぶりの演奏姿を見るのを楽しみにしていたAliAファンも客席に多くいたのではないだろうか*²。彼はホームのAliAでもMCの先導役として喋る機会が多く、当日のリハでもおふざけを挟んだ喋りを披露していたようであるが、本番では「今日の主役は皆さん(メンバー)ですから」と謙虚な姿勢を示した。
とは言えバンドメンバーらの魅せ場満載のパフォーマンスにも目を見張るものがあった。ERENとともにGt.を務めたYoichiはPassCodeバンドのメンバーとしてファンダムにもお馴染みのギタリストで、yosugalaの平地曲にもレコーディングで参加している。Dr.のRYOTAも同じくPassCodeバンド常連。Ba.のmaloは『〇×ゲーム』や『YOSUGAL伝説』、この日初披露の『コノユビトマレ』などAliA曲のレコーディングで既にyosugalaに参加している。前後・上下に段が分かれた構成のステージを時にワイヤレスシステムを使いながら縦横無尽に駆け巡り競い合うように弦を鳴らす3人に、動き回る訳にはいかずとも負けじとエネルギッシュな演奏を魅せるDr.RYOTA。yosugalaやwe-B studios*³と以前から縁のあるメンバーが揃ったからこその連携が見事である。
PassCodeは常日頃共にステージに立つバンドメンバーや、裏方のスタッフらも含めて「チームPassCode」である、という言い回しを各所で頻繁に用いているが、それと同じように「チームyosugala」と言うべき連帯が、バンドセット初回ながらも既に出来上がりつつあることが感じられた。
♢♦︎♢♦︎
『エスカレート』では前述の上下に段の分かれたステージを活用し、さらには背面のメインスクリーンを囲む4つの縦長のサブスクリーンがyosugalaメンバーの一人ひとりに対応して駆動する、大ホールならではのダイナミックな演出も見られた。
ワンマン直前にミュージックビデオが公開され、yosugala史上初のバンドセットでのお披露目となった新曲『コノユビトマレ』。「世界がまだ見つけていなくても、僕は君の輝きを見つけたよ」というメッセージは、演者に対するファンの想いを描いたものでありつつ、逆に聴き手に対する応援歌のようにも聴こえるという構造で、アイドルとそのファンならではのコミュニケーションのかたちがよく表れた一曲である。EREN提供曲のほとんどで作詞を担当するAliAのkey.TKTは、アイドルとファンの在り方への解像度が驚くほどに高い。自身もバンドマンとして普段から密にファンコミュニケーションをとっているからこその視点であろうか。
歌唱に見るメンバーの成長
続いて披露された『裸足のまま』ではメンバー4人がステージの段差にまばらに腰掛け、最初の1コーラスをERENのギター1本を伴奏としてゆったりとしたアレンジで披露。ステージ中ほどに座るERENよりも手前に位置していた未白が時折ERENの方を振り返りながらテンポをとり、それに応えるERENといった様子を筆頭として、yosugalaメンバーらの単に「歌がうまい」ということに留まらない音楽的なスキルの高さが感じられた印象的なシーンであった。
歌唱といえば、君島凪がホール規模での歌い方を見事にものにしていたのにも驚かされた。筆者はこれまで君島の歌唱について、ズレてしまわないギリギリまで攻めた前のめりのタイム感を持っていて、そのアグレッシブさが良い、という印象を持っていた。しかし、この日は他メンバーと遠く離れた客席での歌唱といったタイミングを取るのが難しいシーンでも、むしろ率先して正確なテンポをとりながら全体を整えていたように見えた。2年半の活動の中で、精神面はもちろんであるが、こうした実際的な技巧面においても着実に成長してきたということが如実に目に見えたポイントであったと思う。
黒坂未来にしても同様で、初期の頃と比べ、歌唱にしてもMCでの立ち回りにしても、さまざまな意味で奔放な他3人に対してゆったりと構えつつもリードしていくという、黒坂ならではの立ち位置をすっかり確立しているように見受けられる。
大人しそうとか真面目とか言われるんですけど、そんなことはない。(中略)え、真面目じゃないよ、他3人が破天荒なだけなんですけど……笑
当日抱えていた喉の不調が終盤にかけて顕在化してしまい、悔しさを滲ませた汐見を他の3人がさりげなくカバーしていたのも流石のチームワークである。
2チームそれぞれの歌詞が描き出すyosugala像
『ルパン3世』や『エヴァンゲリオン』をパロディしながらファンクラブ発足や野音ワンマン、全国ツアーを告知するyosugalaらしくアットホームな中間MCを挟んで、後半戦は『ソラノナミダ』、『アステリズム』、『Sparkle』と平地曲を中心とした構成で怒涛の展開を見せる。『Sparkle』で舞った華やかな大量の銀テープに、思わず古参顔で「昔はあれ、ドンキで買ったクラッカーで手動でやってたんだよなぁ」と感慨に耽ってしまったファンも多いのではないだろうか。
途中挟んだAliA曲『夜明けの唄』を含め、空模様、夜空や星の輝きをモチーフとした楽曲群はすっかりyosugalaの代名詞となっている。「ずっと夜のような日々が続いても、一晩中夢を見たい」との想いが込められたグループ名に端を発し、『prologue』で「きっと空はいつも味方だ」、『indigo』で「藍色彩る空はきっと目指す導きの縁(よすが)」と歌ったことから連綿と続いている、yosugalaのストーリーである。
何もないとこから始まったのにいつの間にか星のうたを沢山歌うようになってお肉がつけられてくのすごく楽しいな〜やっぱ宇宙とか銀河とかのうた歌うためにアイドルなったし!!
— 未白ちあ (@chia_ysgl) February 4, 2025
『prologue』『indigo』の呼応にしても、夜空や星のモチーフの定着から最新曲『コノユビトマレ』への流れにしてもそうであるが、楽曲提供を通してAliAチームと平地チームによりそれぞれ描かれるイメージが交錯し、次第に一つのyosugala像を形成していく過程は、yosugalaを追いかける醍醐味の一つであるように思う。
何色でもなってみせるよ 好きに描いてみたらいいじゃん
鮮やかに駆け出す未来だって 上手く輝けないなら
僕らなりの藍を描いてゆこう
君が見ている夜空は 何色なんだろう?
重なる空 僕らの星描くよ
…
見ている夜空が どんな色でも
僕らなりに 彩る星 描くよ
さぁ 進めば誰にだって 輝ける場所があるはずで
いつの日にか変わる 世界を愛してやろう
僕だけが気づいた 君の中にある輝き
世界が君を見つけるまで 僕が隣にいてもいいかな
♢♦︎♢♦︎
「今日はERENさんがいるということで」と前置きして披露されたのは【歌ってみた】動画でカバーし、『ヨスガラ夏の東名阪』ツアー等でも生歌唱していたAliAの代表曲『かくれんぼ』。
ERENとの初共演の機会に、満を持してのバンドセット披露となった。客席のTKTが喜ぶ様子も微笑ましい。
yosugalaさん曲が優勝してた。
— TKT@AliA (@tktless0000) February 9, 2025
いっぱい歌詞書いたなー。これからも微力ながら頑張ります!!
そして客席から見るかくれんぼ最高でした!!
おつかれさま!
贅沢なコラボレーションの興奮そのままに放たれたラストナンバーは会場中が一体となってシンガロングする『My Dear』。
伴奏の絶妙なタイミングを狙った「歌え!」の煽りに応える地鳴りのような大合唱、という見事な構図には、当日会場に足を運んでいた彼女たちの姉貴分と似た風格さえも感じられたように思える。ワンマンタイトル『progress the night』とも呼応する「夜を鳴らすよ」という結びのフレーズをそのまま目の前に具現化したような光景であった。
yosugala観てきた🥺きらきらしてて駆け上ってる時の無敵感というか、あの頃を思い出した。でも思い出すだけじゃなく、もう一度これをやりたいんだよなぁって思った、このチームで、頑張ろうって思えた、こんな風に思えるライブを見せてくれたyosugalaにありがとうしかないな〜、頑張るよ、PassCode❤️🔥 pic.twitter.com/b6mihR3ziC
— 南菜生 (@PassCode_nao) February 8, 2025
4人のかたちを変えることなく辿り着いた現在地
アンコールに応えて披露された3曲はAliAチームによる提供で、いずれもyosugalaというアイドルグループの絆を象徴するような重要な意味合いを持った曲である。
『canvas』のイントロ、ステージ上には黒坂の姿のみ。1階に君島、2階に未白、3階に汐見と分かれ、二度目の客降りである。座席位置を問わず隅々まで楽しませるという徹底した意地すらも感じさせるホスピタリティの高い演出であった。かつ、先述したように、イヤモニがあるとはいえ、ホールの反響の中で3フロアに分かれてステージの生バンドとタイムを合わせるという難儀な歌唱をさらっとやってのけたのも流石である。それでいて各々に付いたカメラへの「ファンサ」も卒なくこなすアイドル性も欠かさない。
『オトギバナシ』はアイドルにいつかやってくる終わりを意識させる楽曲である。「バッドエンドは決まっているの」と達観しながらも、共に過ごす時間を繰り返すことの意味を問う歌詞は、アイドルファンであれば誰しも共感する部分があるのではないだろうか。
そしてその「終わり」の先で「あの日止まった時計の針をもう1度だけ動かせたらな」と歌うのが、この日本当に最後の一曲『四葉のクローバー』である。4人の誰も欠けることのないように、との想いの積み重ねがおまじないのように込められて輝きを増してきた大切な楽曲。アンコール終盤、喉の状態がギリギリになっていた汐見が魂を振り絞って歌い上げたキリングパートは、本人としては悔しいものであったかもしれないが、これまでのどのライブよりも凄みのある歌唱になっていたように思う。ステージに集まった4人がそれぞれ差し出した手の先と前方スクリーン上にかわいらしい四葉のクローバーがしっかりと形作られ、鮮やかなラストシーンとなった。
♢♦︎♢♦︎
Appare!プロデューサーのカノウリョウが「ライブアイドル的な沸き方をするファンは2,000人程度」と提唱したのが話題となったのは既に1年前の話。
12/31の全曲ライブDay2の後にカノウPと直接お話しました。
— かたせ (@katasechan777) January 4, 2024
テーマは12/29の全曲ライブDay1におけるピンチケ狩りと、運営の方針についてです。
以下にその内容をまとめました。
駄文で恐縮ですが、興味のある方に見て頂ければ幸いです。 pic.twitter.com/TRaq95z4Ch
2,000人のホール公演の先、既存のアイドルファン以外も取り込み、yosugalaがさらなる高いステージへ進んでいくきっかけの象徴となるワンマンになる、と予感しながら足を運んだ筆者。しかしその目前で繰り広げられたのは「2,000人規模3階建てのライブハウス」とでも言うべき熱狂であり、それを生み出すことを可能にする「yosugalaのファン」を着実に、高い求心力で集めてきたこれまでのあゆみの結果としてのライブであった。これがきっかけなのではなく、実際にはとっくに何段も高い場所へと上がっていたのである。そしてその勢いはこの先も衰えることはないどころか、むしろ増していきそうだ。
「TikTokでバズんなくても売れたい。」と宣言し、実際それを目に見えるかたちにしつつある彼女たちのこれからがますます楽しみである。
セットリスト
yosugala band set oneman『progress the night』
2025年2月8日(土)@ 東京・LINE CUBE SHIBUYA
1. prologue
2. indigo
3. オヒメサマ?
4. YOSUGAL伝説
MC
5. aspiration
6. エスカレート
7. 会心の一撃
8. 僕に願いを
9. コノユビトマレ
MC
10. 裸足のまま
11. 夜更かしして寝坊するんだ
12. ソラノナミダ
MC(FC開設・野音ワンマン・全国ツアー発表)
13. アステリズム
14. 夜明けの唄
15. Sparkle
16. かくれんぼ
17. My Dear
En.
18. canvas
19. オトギバナシ
20. 四葉のクローバー
