不登校を受け入れる過程は死を受け入れる過程と同じだった
アメリカの精神科医エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した『死の受容過程(5つのステージ)』をご存知でしょうか。
終末期の患者やその家族が死を受け入れるまでに経験するとされる心の過程を表したもので、現在ではさまざまな悲しみや失望、困難な状況に直面した時の人々の反応を説明するフレームワークとして広く用いられています。
私が不登校を受け入れるまでの過程も、この死にゆく過程の5つのステージと同じ道のりをたどっていました。
すべての人が同じステージを経験するわけではなく、順番も同じとは限りません。
しかし、自分が置かれている状況や、これからどのように進んでいくのかを知る一つの手段として、経験談を交えながらご紹介したいと思います。
ステージ1 否認
自分の身に起きたことを受け入れられずに「これは間違いだ、そんなはずはない」といった反応が現れる。
我が家の生活が大きく変わったのは、娘が中学1年生、息子が小学4年生の夏休み明けでした。突然、2人とも学校に行かなくなったのです。
※詳しくはこちらをご覧ください。
それ以前にも腹痛を訴えて学校を休んだり、保健室に行くこともありましたが、私はそれを大きな問題とは考えていませんでした。
「学校を休みがちなのは単に体調が悪いからだ」と思い込もうとしていたのです。
子どもが完全に学校に行かなくなってからも、不登校という現実が受け入れられずにいました。
「しばらく休めば学校に行くだろう」
「うちの子が不登校のはずがない」
しかし、子どもたちが学校に行くことはありませんでした。
ステージ2 怒り
なぜ自分がこのような運命に見舞われるのかという怒りが湧き上がる。
何日経っても学校に行かない子どもたち。
今度は2人に対してふつふつと怒りが湧いてきました。
「なんで学校に行かないの?」
「どうしてこんなに私を苦しめるの?」
そして学校に対しても憤りを感じるようになりました。
先生が怒鳴ったのではないか。
友達からいじめられているのではないか。
疑心暗鬼に陥った私は、姿の見えない敵に対して怒りをぶつけていました。
ステージ3 取引
現実が変わらないとわかると、自分の運命を変えることができるなら何でもすると祈る。たとえば「もし神さまが私を助けてくれるなら、世のため人のために尽くします」と願う。
子どもたちが何をしても学校に行かないことがわかり、私は天に祈るようになりました。
「どうか助けてください」
「子どもたちが学校に行ってくれるのなら何でもします」
天国にいる祖母にこう祈ったこともあります。
「早くそちらに連れていってください」
今にして思えば、次のステージの「抑うつ状態」に陥っていたのかもしれません。
ステージ4 抑うつ
現実を受け入れる過程で、深い悲しみや無気力、絶望感が現れる。
天に祈ったところで子どもたちが学校に行くはずもなく、疲れ果てた私は仕事を辞めて、家にひきこもるようになりました。
自己否定や自己嫌悪、孤独感におそわれる日々。
「子どもたちが不登校になったのは自分のせいだ」
「こうなるまで気づかなかったなんて母親失格だ」
このような抑うつの状態は長く続きました。
我が家は一度、不登校支援の力を借りて再登校しています。
学校に戻って安堵したのもつかの間、すぐに別の不安が襲ってきました。
「また学校に行かなくなるのではないか」
「学校でいじめられているのではないか」
このような不安定な状態は、不登校を完全に受け入れるまで続きました。
ステージ5 受容
否認、怒り、取引、抑うつが済んだ後、現状を受け入れ、現実に対して平和な気持ちになる段階。
子どもが不登校になってしばらくして、少しでも家の中を明るくしたいという願いを込めて犬を家族に迎えました。
※詳しくはみつさよさんのインタビュー記事をご覧ください。
愛犬の存在が私たち家族を癒し、そして不登校支援と出会って子どもたちは学校に戻ることができました。
しかし、心は落ち着きません。
そんな中、とあるブログで「ありがとうの言葉の力で幸せになれる」という言葉を見つけたのです。
子どもが再登校しても不安から逃れられなかった私は、半信半疑ながら「ありがとう」を言ってみることにしました。
日々の些細なことにありがとう。
家族や愛犬にありがとう。
水や食べ物にありがとう。
すると不思議なことにだんだんと心が平穏になっていきました。
そして、いろいろなことが許せるようになったのです。
いい加減な対応をした先生
いじめをした生徒
不登校になった2人の子ども
父親として優しすぎる夫
そして母親失格の私
「ありがとう」を唱え続けて約1年。
もう不登校を受け入れようと思いました。子どもたちが学校に行っても行かなくてもいい。存在してくれるだけでありがたい。
そして、自分自身も受け入れようと思いました。今まで失敗もたくさんしてきたけれど、よくがんばった。心からそう思えるようになりました。

ステージX 感謝
すべてのことに感謝しながら心穏やかに暮らす。
『死の受容過程(5つのステージ)』を経て、私は今、すべてのことに感謝しながら心穏やかに暮らしています。
「幸せは不幸の顔をしてやってくる」といいますが、まさしく幸せが不登校の顔をしてやってきました。
今では不登校に心から感謝しています。
ここまで来るのにずいぶん長い道のりでした。
そしてこれからも人生は続いていきます。
娘の就職活動にやきもきしたり。
高校に進学せずに家にいる息子の将来を心配したり。
それでもきっと大丈夫。
「ありがとう」の言葉が心をラクにしてくれます。
就職活動にやきもきできるのも娘がいてくれるおかげ。
将来を心配できるのも息子がいてくれるおかげ。
子どもたち、家族になってくれてありがとう。
最後までお読みいただきありがとうございます。
何かの参考になれば幸いです。
※今回ご紹介した『死の受容過程(5つのステージ)』など、不登校に関するお話を一冊の本にまとめました。お読みいただけたら幸いです。
参考文献
『死ぬ瞬間 死とその過程について (中公文庫)』エリザベス・キューブラー・ロス(著)、 鈴木晶(翻訳)
『よく生き よく笑い よき死と出会う』アルフォンス・デーケン (著)
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