【名曲発見】様式美としての演歌から解き放たれた「日本文学的歌謡曲」『蛍の夜』。唯一無二のヴォーカリスト石川さゆりさんが魅せる男女の心の"静"と"動"。文学作詞家がいなくなった現代ではもう生まれない曲。

様式美としての演歌から解き放たれた?石川さゆりさんの「日本文学的歌謡曲」『蛍の夜』をUp致しました。

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石川さゆりさんの『蛍の夜』(2002年)。

(歌手生活30周年記念オリジナル・アルバム『さゆり』収録曲/2002年)

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・『津軽海峡・冬景色』などのドラマチックな演歌とは一線を画す、どこか谷崎潤一郎や泉鏡花の文学を短編映画化したような曲=「日本文学的歌謡曲」と呼ぶべき名曲だと思っています。

毎夏聴く、大好き、というか一人きりで耽っていたい曲。

蚊帳(かや)の中に漂う、日本的な、男女の想いの「陰と翳」の密室性がなんとも言えません…。

・制作も、吉岡治(作詞)×三木たかし(作曲)×宮川彬良(編曲)、エンジニア:内沼英二(録音時のマイクはさゆりさんこだわりの”ヴィンテージU-67”、更にモニター・ヘッドフォンは”ゼンハイザー HD560 ovationⅡ”)という豪華な陣営。

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・冒頭の「蚊帳のなか 螢を はなし」という一節から、明治・大正時代の静けさの中へ引き込まれました。明確な説明はありませんが、どこか“道ならぬ恋の夜の逢瀬”を感じさせる、美しくも妖しい世界観が広がります。

・特に印象的なのが、二人の掛け合いの歌詞。

「仕合せですか?」

「仕合せですよ」

「泣いちゃいますよ」

「泣いちゃいなさい」

「幸せ」ではなく「仕合せ」という言葉選び。大げさな表現を排除した余白にこそ、切なさと儚い諦念、そして日本ならではの美意識が宿っている気がします…

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・ 曲世界の「静」と「動」を表現する歌唱力も素晴らしいです。

【静】語りかけるようなニュアンス

コブシやビブラートを抑え、耳元で囁くような親密な歌唱で、登場人物の揺れる心情と空気感をリアルに表現していると感じます。

【動】夜空へ視線が抜けるダイナミズム

サビの「天までのぼれ」というフレーズでは一転して歌声が解放され、蚊帳の密室から広大な夜空へと心が解放されるような感覚を味わえます。もちろん蛍の儚い灯に、二人の関係の行く末を暗喩しているんだと思います…

・作詞の吉岡氏も作曲の三木氏も故人となった今、現代の音楽シーンではまず出会うことのできない“絶滅危惧種的”な、文学の薫り漂う楽曲だと言えます…。

・夏の静かな夜に独りでお聴き頂けたら幸いです。

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