呪いの連鎖【第1章】〜母の不倫⑧〜
あの襲われそうになった日から
不倫相手は戻ってこなかった。
母は何度か電話でやり取りをして
関係は戻った様子だったが
私の心は戻らなかった。
あまりに辛い日が続いていたが
彼氏から同棲しないか?と打診があった。
お互いに給料は高くはないが、ボーナスはそこそこ出る会社だったので
私は家を出る決心をする。
元々早く家を出たかったし、何より今母を見るのが嫌だった。同棲を母に伝えたが、特に反対はされなかった。
彼氏とアパートを決め、暮らし始めた。
最初にかかる費用は折半した。
冷蔵庫、洗濯機、エアコン、、、、様々な家具を決め、工事やら搬入やら
何故か私に請求がかかった。彼氏に追求しても
「とりあえず払って、後で返すから」の一点張り。
ボーナス後だったので一括で支払ったが
生活費はどうするのか…給料は彼氏の方が断然高いし、お金の話はキッチリしたかったが
話す時間がない。彼氏は23時くらいに帰宅し、翌朝に備えて寝て、私が6時に起こして…出社。ほとんど会話できず、結局毎日の食費は私が出して、作って、、、、私はローンとかはなかったが、それでも必要経費はある。お金がどんどんなくなっていき、お昼ご飯を削り夕食代に当てる。彼氏の生活リズムに合わせている為、夜も遅く、自分が衰弱していくのがわかった。
まだ暮らし始めて2週間とかだった。
慣れない生活で、朝寝坊してしまった。
「ごめん、寝坊した!」と彼を起こすと
いきなりぶん殴られた。開口一番「タクシー呼べよ!今すぐ!」と蹴られた。普段私の方が先に出社しなければならないのに、支度も出来ず
泣きながらタクシーを呼んだが、どこにかけても
すぐには来れないの返事。雨でみんなタクシーを使っているのだ。
なんとか一台つかまって、彼は飛び出して行ったが、私はこの時点で遅刻確定だった。
殴られた跡が腫れている。蹴られた場所は内出血。…何も考えず、身支度をし、私も出社した。
私は、幸せになりたくて彼と住んだんだよね?
私、今幸せ…??
お金も出さない、暴力はふるう。
ボロボロだった。
何が正解で不正解なのか
わからなくなっていた。
お金も底をつきそうになり
この日は実家に帰った。
悔しくて、帰りたくないが
頼る場所が実家しかなかった。無力だった。
母は私を見るなりびっくりした様子だった。
たった2、3週間でガリガリになり、殴られたアザ、生気のない顔。体重を計ったら38キロだった。元々痩せ型だったが、流石にこれは…。
「お母さん…同棲無理かも…」
全て事情を話して、同棲を解消することになった。
彼がいない時間を見計らって
母と不倫相手と2人の友人達に手伝ってもらい
私が購入したすべての家具を運び出した。
とりあえず、私が実家で使っていた部屋に全て搬入した。
もちろん彼も黙ってはいなかったが
自分の非もわかっていたのだろう。
退去手続きなどは彼がやったようだった。
後に話す機会があり、別れたくないと言われたが
戻るわけがなかった。
彼には大量の借金があることも、この時打ち明けられた。どうりでお金の話は避けるわけだ…
お金も心も無くなって
実家に戻ったが、母は変わらずいなくて
でも今はそれはそれで良かった。
何も考えたくなかったから。
仕事は行っていたが、体調不良の日が続いて
退職することにした。
塞ぎ込んでいたが
母に「働け!」と毎日言われ、ハロワに行ったりして仕事を探した。なんでも良かったし、どうでも良かった。
ただ、幸い退職金が思いのほか出て
当面お金の心配はなかった。
見兼ねた高校時代の友人が
自分の働いている工場の事務をやってくれる人を探しているので来ないか?と誘ってくれた。
毎日、遊んだり、スキーに連れ出してくれたり
その職場の人たちとのカラオケや飲み会にも
私を連れて行ってくれた。
事務も本決まりとなり、母もそれを聞いて
うるさく言わなくなった。
友人は変わらず私を連れ出してくれて
みんなで遊んだりしていると、その日初めて会う男性がいた。
「ほぇー、超イケメンだ。こんな人フツーに生活する中で存在してるんだなぁ」
そんな風に考えていたが
特に意識することもなく、ただその集まりを楽しんでいた。
後日また遊んだ時、その彼もいたが
会話することもなかった。
場を笑わせてくれる、楽しい人だった。
転勤でこちらにきている人ということを知り
ムードメーカーの彼を少し気にし出したが
まだ人間不信ぎみの私は、ただ素敵な人と思うに留まった。
たまたま、その日は2人で会話する時間があり
フツーのテンションでフツーの会話をたのしんでいたが、彼に
「付き合ってほしい、って言ったら引く?まだ会って2回目だし。」と言われた。
心の中で[ええ?イケメンから今すごいこと言われてるわ…騙されてる??]と思い
「彼氏と…別れたばかりで、今はそういうの考えてなくて」
「え!じゃあ付き合えるじゃん。別れたばかりでもいーよ!」
「いやいや…それは失礼でしょ。まだ気持ちが落ち着いてないから…ね」
「そんなん!別に付き合ってから落ち着くかもしれないじゃん笑、気にしなくていーよ、俺はあなたと付き合いたいんだ」
そして抱きしめられたとき
あ、私、この人と結婚するんだ。と思った。
まだ好きかどうかもよくわからなかったが
それでもいいと言うので
とりあえず、付き合ってみることになった。
あの変な感覚なんだったんだろ…
家に帰ると、これから出かけるのか母が
支度をしていた。
口紅が真っ赤で気持ち悪いが
同棲解消の時、助けてもらってから
あまり反抗的なことは言わないし、態度も出さないようにしていた。
「出かけるの?いつ帰るの?」
「出かけるよ、帰りは…うーん、わかんないなぁ。
それよりさ、あんたさー最近遊び歩いてるけど
仕事決まったからってさ
自分を安売りしない方がいいわよ笑」
母の顔を一瞬見たが
気持ち悪いので何も返さなかった。
なんでこんなのが母なんだろう。
なんでこの人にすがるしかないのだろう。
ワタシは強くなりたい。
なんでも1人でできるように
しっかりした大人になって
自立したい…!!
21歳の冬の決意だった。
