呪いの連鎖【第1章】〜母の不倫⑦〜
泣きつかれて寝てしまった私は
翌朝、病院に行って父への告知を初めて聞く演技をしなければならないため、会社に休みの連絡を入れる。
ついでに当面、定時で退社したい旨を伝える。
できる限りお見舞いに行きたかった。
定時で退社すれば長くて30分は会えるからだ。
母は眠れたのだろうか?
昼頃、一緒に病院へ向かう。
入院してから私は父と初めて対面する。
やはり慣れないせいか、父はあまり眠れていない様子だった。
「あー、なんかすまないな。お前会社休んだのか?先生話あるって言ってたもんな。申し訳ないな」と
見たこともないような顔で私に告げた。
「大丈夫だよ、私も聞きたかっただけだから」
看護師さんに呼ばれて
昨日と同じ部屋に通された。
先生からの告知は予定通りだった。
でも現実は違う。また涙が溢れてしまう。
父に見せないように、、、下を向いていた。
小さいガン、とは言え
父もショックな様子だった。
ベッドに戻り、私と母に背を向け
「もういいぞー。お前たち帰れ。今日はありがとうな」
父の背中がとても悲しかった。
でも予感はしていたのだろう。
父のサイドテーブルの上に
逸見正孝さんの闘病の本が読みかけの状態で置かれていた。
母は父の闘病中、よくやっていた。
病院食が食べられず、パート前、パート後に
水筒などにお味噌などを入れて病院に行っていた。
私も仕事帰り、できる限り見舞っていた。
土日は父の趣味である競馬の馬券を母が買いに行ったり、私が買いに行ったりしていた。
私が担当した時は、母は不倫相手と会っていたようだが、もうこの時はどうでも良かったし
私も父のことしか考えてなかった。
彼氏もいつも馬券を購入する時は付き合ってくれていた。
治療はしていた。化学療法は体力が極度に落ちた為中断。放射線も皮膚がただれてしまい中止。
食事も取れず、体重はみるみる落ち、おじいちゃんのようになってしまった。
時々外出許可がおりて、一泊だけ自宅で食事をしたり、馬券買いに行ったり…体力がないので
休み休み、貧血を起こしたら大量のチョコを食べさせたり、沢山砂糖を入れたコーヒーなどを飲ませるよう指示された。
夏に「実家に一度行きたい」と言い、無理を言って外泊した。新幹線が取れず、一泊だけ旅館を予約し、チケットを確保した。
念の為、紹介状も持たされていたが使わずに済んだ。
病院に戻る日、一度帰宅したいと自宅に戻ったがフラフラの状態で早めに病院に帰すことに。
タクシーをまっている間、父と2人きりになり
「やだよな、こんなの。申し訳ないな…」と言われ
「何言ってんの。全然大丈夫。早く元気になってくれないと」と笑ったが、胸が張り裂けそうだった。
病院に戻り、すぐさま診察と点滴を受けて
少し楽になった様子を見届けて帰宅。
その半月後に父は他界した。
慌ただしく葬儀が終わり
様々な手続きもひと段落し、
忌引き期間も終わり、出社することになり
私は初日、社内の皆さんに沢山協力いただいたことに感謝と謝罪をし、仕事をした。
帰宅すると
父の座椅子に…座っているのは…
不倫相手だった。
瞬間、嫌悪感、吐き気が襲ってきた。
まだ1週間。
しかも父の座椅子に当たり前のように座っている。母とお酒を交わしている。
混乱した。
何が起きているのかわからなかった。
不倫相手もそうだが
母の神経も疑った。ありえない。
しかも「今日から一緒に住むから」
母がサラッと言ってきた。
言葉が出なかった。
まだ父がいなくなった、喪失感で溢れているのに
これは一体どういうことなのか。
でも私は反対することができなかった。
なぜなら父はもういない。
【不倫】にならない。
心が嫌がって反対していても
もう表立って反対する理由がないのだ。
私から笑顔は完全に消えて
仕事をし、外食を済ませて自室にこもる生活になった。それ以外の日は彼氏と過ごし
彼氏にどっぷり依存していった。
殴られても蹴られても
彼氏と離れるのが怖かった。
誰も私を見てくれなくなってしまう、孤独の恐怖。
私を愛してくれてるのは、あなただけだよね??
そんな中
事件が起きてしまう。
私が自室で寝ていると、部屋のドアが開いた。
寝ぼけていると上にのしかかる誰か。
「ぎゃーっっ!!」
私はとっさにびっくりするような悲鳴をあげた。
母が飛んできた。
「あんた!何やってんのよ!!」
引き剥がされた、ソレを見たら
不倫相手が全裸で私の上に覆い被さっていたことを理解した。
2人はすぐ部屋から出て行ったが
震えが止まらなかった。
私、襲われそうになったの?どういうこと?
一睡もできなかった。
朝方、玄関で物音がした。
誰か出ていった。
母の声がリビングで聞こえる。誰かと電話しているようだった。
出て行ったのは不倫相手か…
安心してリビングに行くと、電話をしていた母が
ものすごい形相で私を見た。
まるで敵を見るかの目つきだった。
、、、え?
心配どころか謝罪もない。
それどころか、私は不倫相手を誘惑した憎い女…になってるってこと??
精神が崩壊しそうだった。
いや、していたのかもしれないが
実の母にあんな目つきで、女の目で
睨まれるとは思っていなかった。
父も失い
母には憎まれ
私、なんのために生まれてきたの?
誰か助けて。
