ポコペンで帰ってこなかったシュン君
僕の生まれた地方にはポコペンという遊びがあった。通常のかくれんぼと同様に鬼が1人いる遊びなのだが、多少の駆け引きが発生するところが私達は結構気に入って遊んでいた。この日の鬼はシュン君だ。鬼以外のメンバーは僕、タカちゃん、そしてヒロちゃん、計四名での遊び。
ルールは樹木等の起点となる場所を設定する。鬼は両手で目を覆い隠すようにし、そこに向かって立つ。鬼以外のメンバーは後ろに立ち「ポコペン・ポコペンだーれが、つついたか!」と歌いながら、1人だけが鬼の背中をつつく。その後鬼は振り向き、全員の顔色をチェックしながら、つついたと予想した人物の名前をコールする。この日のシュン君は「タカちゃん!」と言ったと記憶している。
次に鬼以外は「どーこまで?」と言い、鬼は当てる自信の大きさによって、絶対当たっていると思えば遠くに、自信がなければ近くの地点を指定する。
もしコールした人物が正解なら、コールされた者が鬼となる。間違っていたら鬼はそのままだ。この日のシュン君はよほど自信があったらしく、数百メートルは離れている神社の鳥居を指定した。(通常はせいぜい数十メートルの地点を指定する)しかし残念なことに、つついたのはタカちゃんではなく、ヒロちゃんだったのだ。
その後シュン君は多少の不服そうな顔を浮かべたが、ダッシュで鳥居まで走って行った。残された僕たちは、鳥居までの距離からかなり余裕を持って各々が隠れ場所を見つけたと記憶している。
さて、ここまでは、指定場所が通常よりかなり遠い鳥居だったことを除けば、通常のポコペンである。でも、ここで事件は起きた。タイトルにあるように、シュン君が待っても待っても帰ってこなかったのだ。距離からして予想する帰還時間は長くても5分くらいだと思っていたのだが、15分以上経過してもシュン君は戻ってこない。
各々隠れていたメンバーもさすがに痺れをきらし、ベースとなった樹木に集合した。そこでタカちゃんが言い出した「あいつ絶対に家に帰った!」
そう、鳥居はシュン君の家の隣の敷地にある神社のものだったのだ。ダッシュするときの不服そうな顔、自宅の位置、それらから僕たちはシュン君が友だちである僕たちを裏切り、自宅に帰ってしまったのだと思って子供なりに激怒した。地面に「アホ!」とか「うらぎり!」とかを木の棒で描いた記憶がある。その後僕たちはやることもなくなり解散してしまった。
そして翌日のことだ。小学生らしく、前日のポコペンのことなどすっかり忘れて登校した僕だったが、ヒロちゃんから衝撃的な話を聞いた。
「シュン君、交通事故だったんだって!」
裏切り者のシュン君としていた僕たちだったが、さすがにパニックになり、容態がどうなのかをヒロちゃんに尋ねたが詳しいことはヒロちゃんもわかってなかった。
確かその翌日、シュン君は元気に登校してきた。幸い事故によるケガは大したことなかったようだった。ホッとしたと同時に、裏切り者と決めつけて、ベース付近に残してきた罵詈雑言の数々が気になったのだが、所詮地面への落書きである。僕たちはそんなこともすぐに忘れて日常に戻っていったと記憶している。
その後、色んな人とポコペンのローカルルールについて話すことが何度かあったのだが「どーこまで?」がある地域と、そうでない地域があることがわかった。
でも、そんなことより。シュン君が帰ってこなかった時間の怒りに似た何とも言えない気持ちで頭がいっぱいになってしまう。
