妄想世界遺産旅|カレル橋 ― プラハ・チェコ
朝早く、理由もなく目が覚めた。
春先のプラハ。
カーテンのような霧が、
重厚なマラー・ストラナ橋塔の姿を
半分ほど隠している。
マラー・ストラナ橋塔をくぐり、カレル橋へ。
湿った石畳の上には、鳩がじっと佇んでいた。
橋は、昼間の喧騒が嘘のように静かだった。
三十体もあるという
聖人や歴史上の偉人たちは、
そのほとんどが朝霧の中に潜んでいる。
かすかな朝日の光が、
朝露に濡れた石畳を少しずつ照らし始めた。
この朝霧は、悠久の流れを今も讃える
モルダウ川から来ているのだろうか。
聖人たちの間から、そっと川を覗き込む。
ふと、マラー・ストラナ地区の方を振り返る。
まだ濃く残る霧の向こうで、
プラハ城ははっきりと姿を見せない。
旧市街の方へ向きを変える。
鈍い銀色に輝く石畳の先に、
旧市街橋塔が見えた。
聖人たちも、ひとり、またひとりと
姿を現し始める。
正直、すべての像の名前まではわからない。
それでも、濃い朝霧の中で、
こう問われている気がした。
どこに向かう?
そして、何をする?
それは、何のために?
いつの間にか霧は薄れ、
旧市街橋塔の聖人たちが、
ピンク色の朝焼けの中でこちらを見ていた
迎え入れられた気がした。
けれど、答えは何ひとつ持たないまま、
私は旧市街へ入っていった。
※「行った気になる世界遺産」という著書の視点に触れ、
行った気になって書いた妄想旅行記です🍡
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