【ギター式洗濯機】 #毎週ショートショートnote
我が家の洗濯機は、なぜかギターの形をしている。正確には「ギター式洗濯機」。ボディがドラムで、ネックが操作パネル、ヘッドには六つのダイヤルが並んでいる。父は「音で汚れを落とす最新家電だ」と自慢していたが、家族は誰も信じていなかった。
使い方は簡単だ。洗濯物を突っ込み、アンプにつなぎ、コードを掻き鳴らす。ただし下手に弾くと脱水が甘くなり、コード進行を間違えると柔軟剤が全部泡になる。母はフォーク、姉はポップス、父はなぜかヘビーメタル担当だった。
ある日、僕が適当にジャーンと鳴らした瞬間、洗濯機が情熱的なソロを返してきた。ガガガッと高速回転し、終わった後に出てきたTシャツは、真っ白で、しかも少しだけロックな匂いがした。
以来、我が家では「洗濯はセッションだ」が合言葉になった。
近所から苦情は来たが、なぜか苦情文の最後にはこう書いてあった。
「仕上がりは、嫌いじゃありません。」
(384字)
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