合戦バー #毎週ショートショートnote
――暖簾をくぐった瞬間、店内は戦国時代さながらの緊張感に包まれていた。
甲冑姿の客たちがカウンターにずらり。武田軍は赤ワイン、上杉軍は純米酒を注文し、それぞれの陣形を保ったままグラスを傾けている。店主は陣羽織姿で、まるで軍師のように酒瓶を操っていた。
「当店名物、川中島ハイボールいっちょ!」
威勢のいい声に、双方の武将がチラリとにらみ合う。
その瞬間、店内の照明が落ち、鼓の音が鳴り響いた。
「本日の合戦、開始でござる!」
客たちは立ち上がり、戦の号令とともに――グラスを一気に飲み干し始めた。どうやら飲み比べ合戦らしい。
武田軍も上杉軍も、顔を真っ赤にしながら次々と注文し、店は大盛り上がり。やがてどちらの軍もヘロヘロになって座り込んだ。
店主は満足そうに言った。
「本日の勝者は……どちらでもござらん。飲み干した杯の数、すべて店の売り上げでござるゆえ!」
こうして合戦バーの真の勝者は、毎夜変わらず店主なのだった。
(400字)
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