十中ハ九父誤算|#毎週ショートショートnote
「十中八九、勝てる」と父は言った。
町内の七五三ボウリング大会。賞品は高級米五キロ。
父は毎年参加しては二位、三位をうろつく“準常連”だ。
当日、父は気合満点の法被姿。
だが、となりのレーンには七歳の女の子がいた。
ピンクの玉をころころ転がし、ピンを三本倒しては歓声。
父はそのたびに眉をひそめた。
「油断してはいかん。ああいう子が案外強敵なんだ」
そう言いながら、第一投。勢いよく放たれた玉は――まさかのガター。
二投目も、なぜかピンの手前でスピンが止まる。
「おかしい。十中八九ストライクのはずだったんだが」
父はつぶやき、靴の裏を確認する。
「すり減ってる」と呟いた瞬間、転んでストライク。
笑いがどっと起きた。
結局、優勝はあのピンクの玉の少女。
父は五キロの米を逃し、参加賞のあめ玉をもらった。
「まあ、十中八九は“ほぼ”って意味だからな」
そう言って父は笑う。
「次は靴も新品でいく。勝算は百中百だ」
――その自信こそが、毎年の「十中ハ九父誤算」なのだ。
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