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月見バーバー #毎週ショートショートnote

町はずれの丘の上に、ひっそりと一軒の床屋がある。
名を「月見バーバー」という。
営業は月に一度、満月の夜だけ。看板も灯りもなく、ただ柔らかな月明かりだけが店を照らす。そんな奇妙な床屋なのに、なぜか常連が絶えない。
「今日は、どんな髪にしますか?」
椅子に座ると、マスターがそう尋ねてくる。
彼の鋏は、風のように静かで、星のように鋭い。
だが、「髪を切る」だけでは終わらない。
切り落とされた髪には、それまでの悩みや疲れが宿っているという。
恋の未練、仕事の重圧、老いの不安……それらを月明かりにさらしながら、マスターはそっと呟く。
「これも、月に返しましょう」
切られた髪はふわりと宙に舞い、やがて月へと吸い込まれていく。
散髪が終わるころには、心が妙に軽くなっている。
記憶はそのままだが、重さが消えているのだ。
帰り道、ふと空を見上げると、満月の中にうっすらと、誰かの横顔が浮かんでいるような気がする。

それが、今日、髪を切った誰かかもしれないし――

あるいは、あなた自身かもしれない。

(430字)

#毎週ショートショートnote
#月見バーバー
#チラ見バーガー

たはらかにさんの企画「#毎週ショートショートnote」に参加させていただきました!


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