該当作梨 #毎週ショートショートnote
会場の明かりが、すっと消える。
ざわめきが止まり、静けさが満ちる。
カーテンが、ゆっくりと動き出す。
――俺の人生が、ここから始まる。
演劇コンクール、作品タイトルは「梨」。
彼らはやり切った。
このコンクールに向けての練習は、決して無駄じゃなかった。
演出家の私は、時に厳しく演技指導もした。
間違いなくグランプリは取れる――そう信じていた。
だが、スポンサーの顔は浮かない。
まぁ気にすることはない。所詮は素人だ。
ついに結果発表のとき。
司会が声を張る。
「今回の該当作品は……該当作梨です!」
どうだ見たか。俺の作品以外に価値などない。
俺は天才演出家だ!
……そう思った瞬間、スポンサーが険しい顔でこちらに歩み寄ってくる。「お前の作品じゃない。“該当作無”ってことだ。
それに、あの演技はなんだ?セリフ飛ばしてた奴もいたぞ!
あれでグランプリが取れるか!」
血の気が引いた。
「つ、次は頑張ります!またチャンスを――」
「……君はもう、“ようなし”だよ」
(411字)
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