入学式の養殖 #毎週ショートショートnote
入学式の朝、体育館の裏にひっそりと設置された巨大な水槽。そこには無数の「新入生」が泳いでいた。
「今年の出来はどうだ?」
校長が白衣の男に尋ねる。
「ええ、今年はやる気多め・素直さ強化型を中心に育てました。多少の個体差はありますが、どれも扱いやすいですよ」
そう、ここは新入生養殖場。少子化の影響で、生徒はついに人工的に育てる時代になったのだ。
やがて時間になると、係員が網で一匹ずつすくい上げる。
「はい、あなたはA組。あなたはサッカー部向きね」
「この子は反抗期が強そうだな……B組に回そう」
スーツを着せられ、名札を貼られた新入生たちは、少しぼんやりした顔で体育館へ運ばれていく。
壇上では校長が誇らしげに挨拶を始めた。
「本日は、元気でフレッシュな新入生を迎えられたことを――」
そのとき、一人の新入生が手を挙げた。
「あの、すみません」
会場がざわつく。
「どうしたね?」
「ここ、淡水ですか? さっきまで海水だったんで、ちょっと息苦しくて……」
一瞬の沈黙。
白衣の男が青ざめてつぶやく。
「しまった……あれは転校用の海水タイプだ……」
その日、入学式は初の塩対応で幕を閉じた。
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