【面談エピソード】成績が伸びず焦る父と、追い詰められていた受験生のリアル
ある日の面談で、お父様からこんなお言葉を頂戴したことがあります。
「これだけお金も時間もかけているのに、成績が上がらないんです」
「本人に危機感が足りないと思います。もっと厳しく言っていただけませんか」
お話を聞いていて痛いほど伝わってきたのは、お父様がお子様の将来を本気で心配されているということです。
医学部受験は決して甘くありません。合格までに時間がかかることもありますし、学費や受験費用などご家庭の負担も小さくはありません。模試の結果が悪ければ、「このままで大丈夫なのか」と不安になるのは当然のことです。
しかし、この面談で私が強く気になったのは、お父様の「愛ゆえの心配」が、お子様にはまったく違う形で伝わってしまっているということでした。
親の「確認」が、子どもには「否定」に聞こえていた
お父様は現状を把握し、改善してほしい一心で成績の話をしていました。
一方で、お子様は「成績が悪い自分は、親に認めてもらえないんだ」と追い詰められていたのです。
模試の結果が返ってくるたびに、
「なぜこの点数なんだ」
「勉強時間が足りないんじゃないか」
「このままで医学部に受かると思っているのか」
問い詰められるたび、お子様にとっては「自分の努力をすべて否定された」ように感じられていました。
私はお父様に、こうお伝えしました。
「医学部受験において結果は命です。ですが、だからといってご家庭での会話まで、すべて成績を基準にする必要はありません。
成績を分析し、学習方法を修正するのは私たち予備校の役割です。ご家庭では、どうか『安心して帰れる場所』をつくってあげてください」
問いかけを「分析」から「関心」に変えてみる
そしてお父様に、お子様への「問いかけの角度」を少しだけ変えていただくようお願いしました。
✕ 今までの問いかけ(分析と問責)
「何点だった?」
「判定はどうだった?」
「なんでできなかったんだ?」
〇 これからの問いかけ(プロセスへの関心)
「最近、どの科目を頑張ってる?」
「何か大変なことはない?」
「親に手伝えること、何かある?」
無理に褒めたり、励ましたりする必要はありません。
まずは「子供の話を途中で遮らずに最後まで聴くこと」。
そして成績が悪かったときほど、「次にどうするかは、先生と相談しようね」と伝えること。
たったこれだけで、子どもが背負うプレッシャーは大きく変わります。
変わったのは成績ではなく「親子の空気」
後日、お父様から連絡をいただきました。
以前はお子様が模試の結果を隠すこともあったそうですが、面談後は自分から結果を見せ、「今回はここができなかった」と素直に話すようになったとのことでした。
お父様もすぐに小言を言うのをやめ、まずは話を聞くようにしたそうです。
すると、家庭で受験の話をしても感情的な口論にならず、お子様のほうから勉強の悩みを相談してくれる機会が増えていきました。
成績が急に上がったわけではありません。苦手科目が一瞬で得意になったわけでもありません。
それでも、親子関係が改善したことで、お子様は以前よりずっと落ち着いて勉強に向き合えるようになりました。
そしてお父様自身も、模試のたびに一人で不安を抱え込むことが少なくなったのです。
家庭は「評価する場所」ではなく「戻れる場所」
保護者の方も、巨大なプレッシャーと戦っています。つい成績や合否にばかり目が向いてしまうのは仕方のないことです。
ですが、親の不安をそのまま子どもにぶつけても、勉強への意欲は高まりません。むしろ「結果を出さなきゃ認められない」と追い詰められ、本当のSOSを出せなくなってしまいます。
成績の分析・指導: プロ(予備校・講師)に任せる
ご家庭の役割: 結果が良い日も悪い日も、安心して戻れる関係を守る
親子関係が安定したからといって、それだけで合格できるわけではありません。
しかし、長くて険しい医学部受験を最後まで走り抜くうえで、「家が安心できる場所であること」は、何より強力な味方になるのです。


