【ちょっと昔の世界一周】 #29 《Money please》
宿を後にした私は、とりあえず街の中心を目指すことにした。
ミラノでもそうだったが、イタリア(というよりもヨーロッパ)の街の作りは教会が中心になっている。
ドゥオーモ(大聖堂)を中心に街ができているので、そこへ向かえば何かはある。
駅でもらった地図を頼りに歩いていくと、人の流れが多い場所に着いた。
ここがボローニャの中心【マッジョーレ広場】のようだ。
やはり観光地だけあって賑わいがある。
だがミラノとは違い私には合っている気がする。
しばらく観光を含め散歩していると、よりその感情が間違いないと感じてくる。
気がつくとあっという間に日が暮れてきていた。
『この街に来てよかった〜』


何がというわけではないが、イタリアも捨てたものじゃないな…と思いながら、宿へと戻って行った。
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とてもいい滞在となったボローニャなのだが、問題はあった。
それは、、、
物価(€)が高い
ボローニャが、というわけではなくイタリア。ユーロ圏全域に言えることで覚悟はしていたものの、円安ユーロ高が相まって一日でアジアの何日分かかるのかといった具合。
とはいえ必要な物は必要である。
節約はしていくが、必ず支払い最も大事な物は【食事】
ミラノで覚えたカフェでのコーヒータイムは人間観察もできていいのだが、その一杯のコーヒーもなかなかいい値段がする。
せっかくなら本場の味も食べたいし、旅をしていく上でエネルギーになる物も食べたい。
食欲には勝てないものでたまには贅沢もしようとは思うが、しっかりとしたレストランに入るのはさすがに気が引ける。
そんな私の強い味方になってくれたのが、やはりカフェである。
その中でも特に気に入ったのが【パニーニ】
美味しいし、お腹も満たされる。
それに何といっても安い!(他の料理と比べればだが)
宿からさほど遠くない場所にあるカフェで朝の軽食、午後のコーヒータイム、夕食のパニーニを食べるのが日課となっていた。
そのカフェによく行くようになったのには理由がある。
初日の夕方に一息つくために立ち寄った時のこと。
まるでジブリのお母さん役といった感じで、愛想もよく元気な店員にコーヒーを頼み、道路沿いの席に腰を下ろす。
『いい街だ…』
そんなことを考えながら道ゆく人を眺めていると、一人の女性に目がいった。
その女性、いや老女は全身真っ黒。
真っ黒というよりは黒い服がズタズタになって汚れている。
こちらはジブリではなく、ディズニーの魔女というイメージがピッタリの物乞いであろう。
その老女はゆったりと、だが確実にこちらに向かって歩いてきている。
そして、私の前で歩みを止め手を出して一言。
「Money please…」
目を合わせないようにしてみたが、動かない。
いつもなら避けて進むが、今は注文待ち中。
動くことはできない。
『さてどうしたものか…』
どうしようかと考えながら、老女の顔を見てみる。
ジーッとこちらを見て手を動かさない。
なかなかやる気に満ち溢れた物乞いである。
何だろう?
こちらもやる気が出てきた!?
手を出しながらの一言を言い続けている老女に、同じように手を伸ばしこちらも一言声をかけた。
「This is your Job ??? Why don't you working ???」
(これが仕事?どうして働かないの?)
その瞬間、老女は目を丸くし『えっ!?』と言った表情を浮かべた。
が、すぐにそれまで通りに手を伸ばしいつもの台詞を続けた。
「Money...Money...」
ブレない老女に先程の店員が気づいたようで、こちらへ向かってきてくれている。
『あいつは!』といった表情なので、多分追い払ってくれるだろう。
だが、店員が着く前に私は行動に移した。
「Me too...Money Please !!!」
改めて老女に手を伸ばし、こちらも同じ台詞を言ってみる。
「This is my Job !!! Please, Money Please...」
今度も老女は驚いた。
さらに、近くの席のお客さんたちや目の前に着いた店員も驚いている。
「Your job, I understand...and This is my Job !!! Like You !!!」
(あなたの仕事は分かった。そして、これが私の仕事だよ。あなたのように!)
呆気に取られる老女を店員が追い払う。
そして、私に声をかける。
「Your job???」
私は頷き、老女を指差しながら返す。
「Yes !!! But...only for them !!!」
(そうだよ!彼ら用のね!)
その瞬間、店員を含めみんなが吹き出す。
こんな返しをする人が珍しいのだろう。
私もそう思う。
変な考えだが、アジアで見たきた物乞いの方がもっと必死だった。
今回のように散歩がてらに手を出してもらおうなんて、考えが浅すぎる。
こんなことがあったこともあり、このカフェによく行くようになった。
*****
ミラノに比べれると人との関わりを多く感じることができたボローニャでの滞在。
いい街なのだが、長居し過ぎるとあっという間にお金がなくなってしまう。
名残惜しさを感じながら、私は次の街へと旅立った。

