【ちょっと昔の世界一周】 #44 《交差路》
朝の予期せぬ幸運な出会いを終え、私はパンを抱えながら宿へと戻っていった。
中に入るとトルコの〝宮沢りえ〟(女将さん)が、パンを抱えた私を見て驚いたものの、話をすると笑いながら「おかえり!」と出迎えてくれた。
ヤン君と若干の二日酔いを感じさせるシオリさんも起きてきて、朝の出来事を話しながらもらったパンで朝食を済ませる。
意外にも!?シオリさんは今日の予定を覚えていたようで、朝食後はセリア達が来るまで荷物をまとめつつ待つことにした。
ヤン君はもう一泊サフランボルに泊まり移動をするとのことだったが、シオリさんはというと私と同じく、今夜カッパドキアへと向けて出発する予定。
今日はみんなで観光をして、その後は私とシオリさんはバスターミナルへと向かう。
なので先に支払いを済まし荷物を置かせてもらう。
そうこうしているうちに、セリア達もやってきて手配しておいた車へと向かう。
どこに行くかはなんとなく聞いてはいたものの、私の英語力ではよく分からないのが正直なところ。
シオリさんも聞いていたが、コソッと聞いてみると
「私も分からないわ〜笑」
といった感じ。
とりあえず行き先は三人に任せ、楽しむことに集中をしてみた。
*****
私たちを乗せた車はしばらく走っていたが、目的地に着いたのか止まった。
マギーがシオリさんに、上着着なくて大丈夫?といったジェスチャーをしたが、全然大丈夫だよ!といった感じで返し、運転手が指を差した方に歩いていく。
そこで、私はマギーのジェスチャーの意味に気づいた。
目の前にあるのは洞窟。
しっかりと整備されていることを考えると、要するに鍾乳洞だろう。
薄着のシオリさんに対し、鍾乳洞の中は寒くなるから!といった感じでアドバイスしたのだろう。
シオリさんも行き先が分かったようだが、とはいえ今更戻るのも…と思ったらしく、そのまま鍾乳洞探索。
(調べたところによると【ブラク・メンジリス】という場所だったようです)
全長はかなりあるようだが、見学路はその中の一部。
しっかりと整備もされているので観光するには問題ない。

これから訪れるカッパドキアではないが、トルコの〝岩〟観光を満喫した私たち。
唯一、真夏用の格好をしたシオリさんが予想通り寒がり
「ねぇ、めっちゃ寒いんだけど!」と皆んなにひっついてきながらも、楽しい鍾乳洞観光になった。
車に戻り、次の目的地を聞くと
「景色が良くていい場所!そして寒くない!」
という感じでセリアが教えてくれた。
鍾乳洞からはそれほど時間もかからず着いた場所。
それは確かに絶景だった…


とても見晴らしのいい渓谷。
そこに橋がかかっている。
(【インジェカヤ水道橋】という観光スポットで、高さは地上60m、長さ116m、幅は僅か110cn〜220cm!!さらに横に柵はない…)
・・・・・
このメンバーには言っていないが、私は高所恐怖症である…
しかも、歩道橋ですら限界を迎えるレベル…
以前、タイで時間潰しに参加したツアーで橋に行ったが、比べるまでもなく人生最恐の場所…

そんな私を尻目に、どんどん進んでいくシオリさん&マギー。
あろうことか腰を下ろし、足をブラブラさせている…
「ノブ君もこっちおいで〜!Come on !!」
どうやら、ヤン君&セリアも苦手のようだが、まだまだ私のレベルではない。
少しずつ橋に近づいている二人。
その後ろで、動いているのかどうなのかすらわからない動きで進んでいく私…
そんな私の様子に気づいたようで、全員笑い始める。
そうなって当然である!
しかし、無理なものは無理!
とはいえせっかくなので、少しは近づこう…
半ば諦めの気持ちで少し歩くスピードを上げたところに、二人の悪魔がやってきた。
その悪魔の名前は【シオリ&マギー】
両手を掴まれ、グイグイ引っ張られる…
最終的に、恐怖に包まれた私を橋に乗せ、皆で記念写真を撮って満足したようだった…

*****
その後、昔ながらの民家が残っている村を訪れ、サフランボルに戻りツアーは終了。


少し遅めの昼食を取り、私とシオリさんの出発時間まで街歩きをしたりお茶をしたりして過ごす。


不思議なものである。
シオリさんとはギリシャでの出来事があるが、こうして話をするようになったのは前々日の夜にイスタンブールのバスターミナルで出会ってから。
ヤン君も同じタイミングで出会った。
セリア達とは、出会ってほぼ一日しか経っていない。
今までも色んな人たちとの出会いがあった。
それだけでも私の性格からしたら、想像もできないことであった。
元々、人とずっと一緒に過ごすというのは得意ではなかった。
ありがたいことに友達はそれなりにいるが、皆でワイワイするよりも自分の時間を取りたいと思うタイプ。
そんな私を旅は変えてくれたようだ。
旅をすることで、本当の意味で一人になった。
その結果、人が好きになった。
旅先で日本人と出会い、話した時の安心感。
言葉は通じなくとも、旅を続ける為、さらに話せることの安心感を得るために様々な人たちと関わってきた。
結果、こうやって国籍など関係なく楽しい時間を過ごせる仲間に出会えた。
まるで以前からよく知った中のような会話を交わし、私たちは時間を過ごしていた。
段々と日が暮れてくる。
すると、セリアが昨日行った高台にまた行こう!と言ってきた。
もちろん全員一致で賛成し、坂を登っていく。
そして、昨日と同じように沈んでいく太陽を眺めながら、それぞれがそれぞれの思いに浸る時間。
それまでのおしゃべりタイムが嘘のように、静かに、それでも同じ場所を眺める。
こういう時間はあっという間に過ぎるものだ。
気がつくと、出発の時間が近づいてきている。
一度宿に戻り女将さん一家にも挨拶を済ませ、バックパックを背負う。
バスターミナルまでは少し距離があるので、タクシーを使う。
少し先にいたが、荷物を背負っている私たちのを思ってか、マギーが呼び止めに行ってくれる。
「Nice Trip !!」
今回出発するのは私たち。
しかし、この言葉はお互いに対して使える。
それぞれがそれぞれの旅を…
一般的な時間ではない、大切な時間。
それを心に刻んで、バスターミナルへと向かった。
*****
カッパドキアの拠点となるギョレメへのバス。
カウンターでチケットを確認し、出発時間まで待合室で過ごす。
と、ここでシオリさんがこれからの予定を聞いてきた。
「ここ来た時はノブ君に宿の話を聞いてよかったけどさ、ギョレメではどこに泊まるか決まってるの?」
もちろん、トルコ各地のオススメ宿情報はツリーで集めてきている。
ギョレメは観光地ということもあり、洞窟を使った宿が多いようだ。
その中でも、私よりも先にギョレメへと向かったツリーのメンバーが行っているであろう人気の宿があった。
もちろんそこに行く予定だったので、そう伝える。
シオリさんは?と聞くと
「私は〝バギー〟に乗ってみたいんだよね!イスタンブールで泊まってた宿の人から、知り合いの宿って紹介されたとこがあるんだ。そこだとバギーツアーもあるみたいで、だからそこにしようかなと思ってる。よければノブ君も一緒に来る?」
確かに、こうやって二人旅も気楽でいいものだ。
話し相手もいれば、ちょっとした時に荷物の心配もいらない。
さらに言えば、旅人にも色んな人がいるがシオリさんと旅すると楽しいだろう。
しかし、自分の中で答えは決まっていた。
「ありがとうございます!もし、部屋が空いてなかったら行ってみます。そうじゃなくてもギョレメってそこまで広くないから、どこかで会うかもですね!」
そう。
一人旅だからこそ、こういう時の楽しさが増すのである。
楽しい時間は長いほうがいい。
しかし、何事も終わりがやってくる。
私の旅人としての勘は、この道を示している。
それが正解かどうかは分からない。
分かる時はやってこないだろう。
旅はそれぞれの道の交差路。
文明の交差路と言われるトルコで交わった私たち。
これからのお互いの旅を想像しながら、私たちはバスを待った。
