【ちょっと昔の世界一周】 #26 《旅人の道》
バスはバンコクへ向け、勢いよく凸凹道を走る。
基本的に凸凹で平坦な道路ではないのだが、時々やってくる大きな段差を通る度に椅子から飛び上がる。
思いつきで決めたカンボジア滞在だったが、とても素晴らしい体験の連続だった。
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昨日はベンメリアを訪れ、その後いつものように宿でみんなでご飯を食べた。
私だけでなく、ベンメリアに一緒に行ったカズさん、さらに友達同士二人で旅をしていたカオルさんとナオさんも同じバスでバンコクへ向かうこともあり、このメンバーで過ごすのは最後。
そんなこともあり、いつにもまして話が盛り上がる。
一階の食堂の営業時間だけでは物足りず、宿のバルコニーでさらに飲めや話せや大盛り上がり。
コジロウ・タクミとは同い年ではあるが、旅の経験でいえばはるかに先輩。
二人の話は新鮮でもあり、考えさせられるものばかり。
『自分もこの旅の終わりにはこんな考えを持てるようになるのかな?』
そんなことを考えながらカンボジア最後の夜の大騒ぎは、日付けも変わりもう少しで空が明るくなるであろう時間まで続いた。
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カンボジアとタイの国境が近づいてくる。
昨夜のこともあったので、本当ならば眠りたかったのだが、このバスで眠るのはなかなか難しいものだった。
寝不足ではあるものの楽しい時間も過ごしたり、行動を共にする人がいるのは心強い。
私以外の三人は海外旅行は初めてではないのだが、個人旅行としては初めてということもあり、なんだかんだお互いに協力しながら行動することができた。
三人ともタイからカンボジアへ入国してきたのだが、陸路での国境越えはその時が初。
さらにその時はそれぞれ国境越えツアーでガイド的な人がいたこともあり、案内されたようだったが、今回はバンコクまでは行くがガイドという感じの人はいない。
なので、意外にも陸路国境越え経験は私が一番あった。
『俺に任せとけ!』
といった感じで行こうとしたものの、他にも人があまりいない&一本道ということで特に迷うこともなくあっという間に出国手続きが終わる。
建物の外に出るとフェンスに囲まれた道がある。
道の先には同じような建物が見え、こちらに向かって歩いてくる人たちが何人かいる。
バックパックを背負った彼らは、私たちと同じような旅人だろう。
あそこがタイのイミグレーションである。
建物に入れば、先ほどとは逆にタイの入国審査が待っている。
ここは国と国の領土の間。
旅人たちが交錯する旅人の道。
すれ違いざまにどちらからともなく
「Hi , Nice Trip !!」
と声をかけ合いすれ違う。
言葉ではなく、旅人同士が感じる不思議な仲間意識の共有を済ませ、タイに向かい歩みを進める。
と、カオルさんが「ねぇ、あれって?」と小声で聞いてくる。
指を指した先には、二人の子どもの姿。
どう見ても旅をしている様子ではない。
私たちの先を歩いていた人に声をかけ、何かを言われ距離をとっていた。
「多分、物乞いですね。話に聞いてたけど...」
タカダさんたちから聞いたことを思い出した。
「国境越えの不思議なんだけど、国と国の間に物乞いいるんだよね〜。国によるけど、密入国する気になればあの人たち簡単にできんじゃない!?でも、移動したところで何かできるわけじゃなくて、結局最後は物乞いだから誰も気にしないのかな?」
島国の日本では考えられないが、この現実は世界中どこでもあるのだろう。
国と国の狭間に生きる人たち
自分たちのような旅人はその狭間を通り抜けるだけだが、そこに生きる人もいる。
とはいえ、その人たちの生活はだいたい同じようなものだろう。
そうなるまでにどんなことがあったかは分からない。
でも、物乞いに対しての私の考えは変わらない。
歩いて行くと、当然彼らは声をかけてきた。
「Money...Money...」
渡す気はない。
手を出せば何でも手に入るほど甘い世の中ではない。
もちろん、彼らは私以上に現実の厳しさを知っているだろう。
だからこそ渡せない。
できれば彼らが幸せに暮らせる世の中であってほしい。
金額にすれば募金のようなものかもしれない。
でも、ここで渡すことは違うと思う。
何とも表現しづらい葛藤の中、私は先に進んで行った。
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タイの入国審査も何も問題なくスムーズに終わる。
バンコク行きのバスに乗り込み、夜には到着するだろう。
カンボジアとは違い、凸凹もほとんどない道路をバスは進んでいく。
おかげであっという間に睡魔に襲われ、気がつくともう少しで到着という時間になっていた。
久しぶりのバンコク。
なんだかとても懐かしい感じがする。
バスを降り三人と共に歩き出す。
せっかくだから夕食でも一緒に食べようとなり、宿に荷物を置いたら時間を決めて集まろうということになる。
三人とも予定を組んだ旅をしていたこともあり、すでに予約をしていたようだ。
私はというともちろん予約などしていない。
そんな私の事情を察し、ナミさんが
「私たち泊まるとこ、多分部屋空いてるから聞いてみる?」
と言ってくれた。
嬉しいお誘いなのだが、ナミさんたちが泊まる宿はなかなかいいお値段の宿。
短期の女性二人旅なら安い方だとは思うが、私のお財布事情ではだいぶ値がはる。
正直、前回の滞在に泊まった宿ですら今となっては高いと感じるようになってしまった私にとっては、高嶺(高値)の花である。
ひとまず自分で探して、見つからなかったら行ってみます。と伝え一度解散することにする。
日が暮れてからの単独宿探し。
だが、ここはカオサンロード。
なんとかなる!
そう思い私はある場所に向かった。
向かった場所はあの旅行会社。
あそこからラオス行きのバスに乗り、多くの経験をしてきた。
私にとっては思い出の場所である。
入り口に抜け中に入っていく。
いつものように椅子に座りゆったりしている店長の姿が見える。
「こんばんは」
挨拶をすると、こんばんは。と返してくれた後に少し間が空き、
「あ〜、ラオスに行った人でしょ!久しぶり〜、元気そうだね!」
覚えていてくれたようで、すんなりと話が始まった。
宿を探していることを伝えると、一枚の地図を出してきて説明してくれた。
どうやらその地図は種類があるらしく、宿のランク的に松竹梅と分かれているらしい。
私に紹介してくれたのは梅ランクの宿一覧の地図。
「だいぶ旅慣れしたみたいだね。雰囲気が全然違うよ。今ならどこでも泊まれるでしょ!」
そう言われ周辺の安宿がビッチリと書かれた地図を見ながら紹介を受ける。
カンボジアに行ったことで、バンコク・タイを出発するのは明後日。
正直時間はない。
そんなこともあり、少しはゆっくりできつつ安い宿を教えてもらい外に出る。
『旅慣れか…』
以前ここにいた時に比べれば、少しは旅人らしくなったのかもな…
そんなことを考え、多少嬉しくなりながら宿へと向かった。
*****
宿も決まり、カズさん達と合流し久しぶりの夜を楽しむ。
こうした出会いが私の旅を充実させてくれているのかもしれない。
三人とも私と同じく明後日にはタイを離れる。
とはいっても、みんなは日本へ帰る。
私は次の目的地であるヨーロッパ・イタリアへと向かう。
国境越えの時に感じた旅人の道。
もちろん国境という場所は旅をするからこそ通れる本物の道である。
だが、本来なら一生出会うことがなかったかもしれない人たちと旅を通して関わる瞬間。
その一瞬一瞬も旅人の道を通っているのかもしれない。
バンコク滞在はあと二日。
アジアでの旅はもう少しで終わりを迎える。
