【ちょっと昔の世界一周】 #19 《過去と今をつなぐもの》
自転車で風を切って走る。
道は舗装されてはいないものの何の問題もなくペダルをこぐ。
先ほどまでとは違い、最小限の荷物で身も心も軽くなりぐんぐん進んでいく。

気がつけば景色は草原から建物に変わっている。
徒歩では時間がかかりそうだったが、自転車を使うことであっという間に街の中心と思われる場所まで着いたようだ。
宿や食堂と思わしき看板を眺めながら考えた。
『本当ならこの辺りまでバスで来るはずだったのかな…』
今となっては過去のこと(一時間ほどだろうか)だが、おかげで滅多にできない経験ができた。
なるようになった
結果として問題はない。
今もこうしてワットプーへ向かっている。
中心部を抜け再び自然が増えてくる。
川沿いの草原に目をやると牛がゆったりと草を食べている。

ラオスに来てから野良なのかどうかはわからないのだが、道端で牛を見ることが多くなった。
インドでは牛は神聖な生き物なのでどこにでもいる。
そんな話は知っていたがラオスもなかなかである。
以前にタカダさんから聞いた鶏の話ではないが、自然の中で伸び伸びと動物が育っていけるいい環境なのであろう。
ゆったりとした風景の中を進んでいくと【Wat Phou(ワットプー)】の文字と矢印が書かれた標識が見えてきた。
もうそろそろでワットプーに着くようだ。
標識に従って進むのだが、矢印は山の方を指している。
『そういえば遺跡は山にあったはず』
出発前に調べていた記憶を思い出し、目的地が近づいてきたこともありペダルをより力強くこいでいく。
すると山の麓にあたる場所にゲートが見えてきた。
どうやらここが遺跡の入場口のようだ。
入場料を支払い敷地内に入る。
敷地内といっても遺跡は山の中。
ここから山に入っていくようだ。

順路(何となくなのだが)に従って進むと道の先に建物跡が見えてくる。
今回の旅で初めての遺跡観光だ。
自然と心が弾んでくる。


詳しい説明はないが山へ向かう道が一本ある。
周囲を石柱や石壁などで遮られ、訪れた者たちを山の方へと導いている。
吸い込まれるように道を進み山を登っていく。

正直にいえば遺跡に興味はなかった。
それがここ(ワットプー)に来たことで180度変わった。
建築美や建造の意味といったことに興味を持ったわけではなく、過去と現在を繋ぐ〝何か〟に引き込まれた。
〝何か〟が何なのかはわからないのだが、もっと色々な遺跡を見てみたい!という気持ちが急激に湧いてきた。



一通り遺跡を見てまわり再び入口へと戻ってきた。
簡単に言えば、遺跡は昔の建造物跡地だ。
建築、さらに歴史の知識もない私にとっては無縁の存在だった。
世界一周をしようと決めたものの、遺跡に関してはほとんど興味がなく、ワットプーにしてもラオスに行ってみたいからという理由で何となく決めたもの。
しかし、観光を終え再び自転車に乗っている私の頭の中は
『次はアンコールワットだ!』
ということでいっぱいだった。
当初の予定ではタイ〜ラオス、そこから再びタイに戻りゆったりしてからヨーロッパだったのだが、今となってはアンコールワットを見るためにカンボジアへ行きたくて仕方がない。
世界一周航空券はバンコクからの便なので、日にちにさえ間に合えばどこに行っても問題ない。
『明日パークセーに戻ったらカンボジア行きを考えてみよう』
そんなことを考えていると、どこからか声が聞こえてくる。
「サバイディー!!」
自転車を止め、声のする方を見てみるが誰もいない。
するともう一度「サバイディー!!」の声が聞こえる。
はて…??
自転車を降り近づいてみる。
すると、目の前にあった木の上から子どもたちがこちらを見ている。
手を振りながら挨拶を返すと何人かが降りてくる。
「ジャパン?チャイナ?」
いつものような会話を交わしていると私のお腹がなった。
時計を見るとお昼を過ぎていた。
考えてみると朝から何も食べていなかった。
それはお腹も空いてくる。
するとそこにいた子の一人が「ランチ、カモン!」と言ってくる。
どういうことだろう?と思っていると、そこから見える家を指差している。
ついて行くとどうやら食堂のようだ。
外国人を連れて帰ってきた子どもたちを見てお母さん(女将さん?)は驚きながらも出迎えてくれた。


せっかくだから。とそこで昼食を済ませ再び宿の方へ戻る。
途中にあったネット屋でアンコールの情報を調べたり、宿を一度通り過ぎ小舟を降りた場所に再び行ってみたりしながら時間を過ごしていると、あっという間に日が暮れてきた。
自転車があるので街中まで行ってもいいのだが、宿にレストランがあることだし夕食をそこで取ろうと思い戻ることにした。
オーシャンではなく、リバービューのレストラン。
リゾート気分に浸りビール(Beer lao)を飲みながらメコン川に沈む夕日を眺める。

今となっては〝遺跡〟と呼ばれる建物が、遺跡になる前の時代に生きていた人たちも同じような景色を眺めていたのかなぁ…
そんなことを考えながら遺跡の魅力に引き込まれた一日が終わっていった。
