【ちょっと昔の世界一周】 #21 《アクシデントも旅の醍醐味》
窓を見ると真っ暗な風景と降り続く雨がついた窓ガラス。
先程まで聞いたことのなかった街にある宿の部屋から私は外を眺めていた。
『どうしたものかな...』
打ちつける雨音を聞きながら、カンボジアでの旅が始まっていた。
*****
ラオス最後の一日は本当に楽しいものだった。
パークセーに戻り、旅行会社に着いた私をいつもの店員が迎えてくれた。
チャムパーサックへのドタバタは聞いていなかったようで、何事もなかったかのように話をする。
次の目的地は【アンコールワット】があるカンボジアの【シェムリアップ】
流石にアジアでも有数の観光スポットであるシェムリアップの名前は外だけでなく、建物の中にもたくさん書いてある。
私はシェムリアップまで行きたいことを伝え、いくつかのプランを紹介された。
カンボジアの首都【プノンペン】へ行ってからシェムリアップへ行くこともできるが、私の目的地はあくまでアンコールワット。
最短でシェムリアップへ着くコース(ツアー)を申し込み準備を開始する。
準備といっても特に何もない。
唯一準備らしいことでしたことといえばシェムリアップでの宿の情報を調べたぐらい。
元々訪れる予定がなかったこともあり、何も情報がない。
ネット屋でシェムリアップの宿を調べていると、聞いたことのある名前を見つけた。
タケオゲストハウス
ビエンチャンにいた時にタカダさんから聞いた宿だ。
タカダさんが教えてくれたのには理由がある。
それはタケオが【日本人宿】だから。
日本人宿とはオーナーが日本人、もしくは昔からの流れで日本人旅行者が集まりやすい宿。
日本で調べていた時は日本人宿に対してあまりいい印象を持っていなかった。
『わざわざ海外に行ってまで日本人と会うことはないだろう』
そう思ってはいたものの、これまでのことを考えると日本語で話せるというのは魅力を感じられた。
泊まるならここだ!と決め住所を書き写す。
こんなことをしたぐらいで後の時間は散歩をして過ごした。
もちろん夕飯はいつものサンドイッチ。
二日ぶりの再会で話も弾んだが、翌日には出発することを伝えると気持ちの良い笑顔で送り出してくれた。
表現は難しいのだが、ラオスに来てから心から気持ちがいいと思えることがたくさんあった。
タイにいた時と比べ、私の考えが変わってきたこともあるかもしれないが、それは間違いなくラオスという国、人のおかげだろう。
私にとってはラオスという国は素晴らしい思い出を与えてくれた国だ。
『この国に来ることができてよかった』
そう思い、ラオス最後の夜は眠りについた。
*****
翌日、旅行会社に行くと数人の人たちが集まっていた。
今回は全員同じようにカンボジアに行く人たち。
中にはプノンペンに向かう人もいたが、ほぼシェムリアップに行く人ばかり。
前回のようなことがあっても今度は私たちの方を優先してもらえるだろう。
車に乗り込み出発する。
流れとしてはこのまま国境を超え、カンボジアに入ってからシェムリアップ・プノンペン行きのバスにそれぞれ乗り換えるようだ。
私たちを乗せた車は順調に進んでいく。
段々と街の抜け草原、森の中を抜けていく。
しばらく行くとゲートが見えてきた。
その横には銃を構えた人たちが数人。
どうやらここが国境のようだ。
銃は持ってはいるものの、形式上らしくみんなのんびりとしている。
場所によっては緊張感のあることも考えられるが、ここはそれほどでもない様子。
一同車を降り出国・入国手続きを行う。
タイ〜ラオスの時と比べて、全員が外国人旅行者ということもあってかスムーズに進んでいく。
その中でも日本のパスポートを持っている私は早い方だった。
手続きを済ませブラブラしていると、同じ車に乗っていた若者と目があった。
車内の様子を見るからに彼はもう二人、両親らしい人たちと来ているようだった。
「Hi :)」
どちらからともなく挨拶をする。
もう二人も加わり、私の英語力だが会話をした結果、やはり親子で旅をしているようだった。
ドイツから来た人たちで、息子さんは16歳。
夏の休みを利用してアジアを観光しているようだ。
私は世界一周の旅をし始めたばかりということを伝えると、驚きながらも(会話力の問題だろう)話を聞いてくれた。
そんなことをしているうちに、全員の手続きが終わったようで出発することになった。
ここからカンボジア内の長距離バスターミナルへはこの車で行き、そこでそれぞれの行き先へ乗り換える。
彼らはプノンペンに向かうとのことだったので、そこまでは心強い仲間ができた。
カンボジアに入国したからといって景色にあまり変化はない。
とはいえ無事に3カ国目。
私の心は弾んでいた。
しばらく走ると、開けた場所に出た。
いきなり大勢の人たちが現れ、車・バイクもたくさんある。
どうやらここがバスターミナルのようだ。
私たちを乗せた車は駐車場(あってないようなものだが)の端に止まり、運転手が声を出す。
ドイツ人親子に説明してもらったところ、それぞれの行き先のバスはまだ出ないので、昼食を食べたらここに戻ってきて欲しいとのこと。
せっかくなら一緒に食べに行こう。そう言われて断る理由もない私は彼らとともに食堂へ向かう。
そこでも私の拙い言葉を理解してくれ、楽しい時間を過ごせた。
食事も終わり、バスに戻ろうとすると父親が一枚のメモをくれる。
そこにはドイツでの彼の家の住所が書いてあった。
「予定にはないかもしれないが、今回の旅でなくてもドイツに来ることがあったら連絡してくれ!」
言葉では表せないほど嬉しかった。
これが旅の醍醐味なのかもしれない。

「Vielen Dank !!(ありがとうございます!)」
知っているドイツ語で感謝の気持ちを伝えバスへ戻る。
すると運転手がなにやらアタフタしている。
何が起こったか聞いてみると、シェムリアップ行きのバスがパンクして出発できないらしい。
まさかここでもアクシデントが…
ここまで来るとあの旅行会社はすごいとしか思えなくなる。
心配そうな顔でこちらを見ているドイツ人親子だが、一言。
「OK !! This is my Travel !!」
そう言うと苦笑いを浮かべながら
「Have a nice trip !!」
と言いプノンペン行きのバスへ向かっていった。
そうは言ったものの困ったものである。
しばらく待ったものの、一向に動きが見えない。
シェムリアップ行きの他の人たちも諦め、怒り、困惑とそれぞれの様子で時間を潰している。
一時間が過ぎ、もうそろそろ二時間というところで変化が生まれた。
シェムリアップ行きのバスは今日は無理。
その代わり別の街まで行き、そこからシェムリアップへ向かうというもの。
改めて、あの旅行会社すごいなぁ〜。
と感じながらその流れで動き出す。
が、出発してすぐに大雨が降り出した。
すでにバスに乗っていたので濡れはしなかったのだが、新たな問題が…
雨の影響で通れなくなる道路があり、到着が遅れる可能性があるとのこと。
ここまでくると皆、もうどうにでもなれ!である。
特に驚くこともなく、進んでいくバスに身を任せる。
目的地に着いた時には雨のせいもあり、辺りは真っ暗になっていた。
すでにシェムリアップ行きのバスは出発しているので、旅行会社持ちで宿を手配してくれていたのはいいのだが、さらにトラブルは続く。
運悪く翌日はその街からシェムリアップ行きのバスの運休日。
強制的に二泊三日のツアーである。
なんだか無性にノリのいいスタッフに部屋まで案内され窓に目をやる。
『どうしたものかな…』
ドタバタのカンボジアでの旅が始まった。
