【ちょっと昔の世界一周】 #55 《旅は道連れ、世は情け》
一騒動あったものの、宿には辿り着けた。
荷物も下ろし、特に何かというわけもなく廊下へ出る。
廊下を挟んだ向かい側はドミトリーの部屋があり、そこのドアを出たところに椅子が置いてある。
そこには数人の日本人らしき人たちの姿が見える。
ここに泊まっているということは、日本人で間違いないだろう。
とりあえず、挨拶しとこうと思い近づいていくと見覚えのある顔が見えた。
「あれっ、ツリーいましたよね?」
「そうです、そうです!いましたもんね!?」
ツリーの力、恐るべし!
イスタンブール、いや、ツリーに着いた時にヨルダン行きの飛行機を取ろうと思い、航空会社のオフィスを聞いた時に教えてくれた人だ!
瞬時に記憶が蘇る。
確か、「俺もシリアを抜けてヨルダンに行くから会うかもね!」と話をしていた。
そして、出会った。
「シリア行ったんですよね。どうでした?」
こんなにスムーズに会話をするとは...
過去の人見知り時代の自分に見せてあげたい...
彼、リョウタ君は、いや〜...と話してくれた。
「メチャクチャ暑かった〜...それしか思い出ないわ!ホントはもっといる予定だったけど、早めに切り上げたもん...」
シリアは暑い。
それはツリーでも話のネタの一つになっていた。
世界では、どういうわけか国境を越えた瞬間に暑くなる謎の国があるらしい。
そこで話になっていたのは、シリアと南米のパラグアイ。
どちも隣国と陸続きなので、それほど差がないはずなのになぜか暑い...
イスタンブールにいる旅人にとっては、トルコ〜シリアは旅のルートとして有名ということもあり、その話題がよく話されていた。
リョウタ君はトルコからシリアに入り、アレッポ・ダマスカスと定番ルートを周った。
本当は他の場所も行く予定だったらしいが、入国と同時に予想以上の暑さで諦めたらしい。
不思議なものだ。
ツリーではそこまで話すことはなかったが、こんなにもスムーズに話している。
これが旅の魅力だろう。
そんな感じで話をしていたが、段々とお腹が空いてきた。
こういう時は同じ旅人に聞くのが一番!
ということで、流れでご飯情報を聞いてみる。
すると、
「ここから近いとこに食堂あるよ。流石にこの時間なら空いてきたかな?もし混んでたら、途中の店でなんか買えると思うな〜」
時刻は午後九時近い。
こんな時間まで混むとは、なかなかの人気店なのか?と思っていると、
「ラマダン始まって、みんな気が短い感じするから気をつけてね〜」
ラマダン
詳しくかどうかは別として、一度は聞いたことがあるだろう。
イスラム教の断食である。
そういえば、今日からラマダンが始まるはず...
それで気が短くなるとは、、、
ある意味、中東を感じられるいいタイミングかもしれない。
それで一悶着が起きたら嫌だが、そうでなければいい経験かな...
そんなことを考えながら、ひとまず外に出てみることにした。
*****
翌日は特に予定がなかったので、街歩きをして過ごしさらに翌日。
私はペトラ遺跡の拠点となる【ワディ・ムーサ】行きのバスを待っていた。
宿を出る時に一泊で戻る予定を伝えると、余程でなければベットは空いてるから安心しな!と言われ、幾分気が楽になりやって来るであろうバスを待つ。
しばらくして車がやって来た。
バスといってもミニバスである。
ワディ・ムーサ?と確認すると、そうだ!と言いながら、乗りな!と合図をする運転手。
先日のタクシーとは違い、他にも人が乗るであろうからボラれることはないだろう。
「Japanese ?? マンスール?クリフ?」
とホテル名を確認してくる運転手。
やはり、アンマンで日本人といえばマンスールかクリフホテルを利用しているとすぐに気づくのであろう。
他にも宿はあるだろうが、私の身なりである。
さすが、多くの旅人と関わっているだけある。
と、無駄に感心をしながらいざ乗りこもうとしていると、一台のタクシーがやって来た。
そこから降り、こちらへやって来る一人の男性。
見るからに日本人のようだ。
といっても、バックパッカーという雰囲気ではなく、観光で来ました!という感じ。
なんというか、久しぶりに見た雰囲気だった。
日本人にはよく会う日々だったが、基本的にバックパッカー・旅人というタイプの人たちだったので、いわゆる〝普通〟の旅行者との出会いに多少戸惑う私がいた。
彼も気がついたようで、軽く目が合い頭を下げる。
聞こえはしないが、お互いに小声で『どうもっ..』と言っている感じがする。
すると、先ほどの運転手が
「Japan ?? He is Japanese !!」
と私を紹介してくる。
気が利くというかおせっかいというか...
とはいえ、おかげで旅の仲間ができた。
車の中で自己紹介をしながら話したのだが、マエダさんというらしい。
同年代の人たちとはよく会っていたが、マエダさんは私よりもだいぶ年上。
休みを利用して、好きな中東の遺跡を見るために日本からトルコに飛び、昨日ヨルダン入りしたとのこと。
ヨルダンに来た目的は、やはりペトラ遺跡。
なので、流れで一緒に行くことにした。
*****
想像通り、ボラれることもなくペトラの起点となる街、ワディ・ムーサに到着する。
宿の情報はいくつか調べていたが、マエダさんもアンマンで泊まっていた宿で教えてもらっていたらしく、そちらに向かうことにした。
変な話だが、マエダさんの泊まる宿は私よりもランクが高いであろう。
だが、一泊しかしないし今日は値がはってもいいかな…という考え、旅行者らしい考えに染まることにしてみた。
そして、想像通りそれなりにしっかりとした宿にたどり着く。
値段は意外と高くなく、宿の主人とちょっとした話になったのだが、問題なくチェックインを済ます。
そして、二人でペトラへと向かって歩いた。

とにかく歩いた…

本当に歩いた…

果てしないと思えるほどに歩いた…

結果、、、

感動しかなかった。

言葉では表現しきれないほどの、自然の力と人間の力が混じり合った世界。
この為にヨルダン訪問を決めて良かった…
本当にそう思える光景、体験になった。

※写真はこちら→【Petra,Jordan】
こう考えると、ギリシャでの出来事も意味があったかもしれない。
そして、このタイミングだったからこそ同行者もできた。
マエダさんが日本語のガイドブックを持ってきていたこともあり、珍しく遺跡の意味を知りつつ観光することができた。
さらに、繰り返すがとにかく歩いた…
主要スポットを見るには最低でも六〜七時間、全てを見るには二・三日かかるとも聞いていたが、さすがにそれはないだろうと考えていた。
しかし、実際に行ってみるとその通りだと痛感した。
そんなハードな観光である。
一人では心が折れていたであろう。
マエダさんも想像以上に歩いたようで、お互いに『一緒に見て回る人がいて良かった〜』という気持ちになっていた。
観光中は途中で、ロバに乗るか?と何度も声をかけられた。
観光気分、さらに肉体的にも疲れることからロバに乗っていく人もいる。
しかし、マエダさんもこういう時は高値をふっかけられたり、ボられたりすることを聞いていたからか、歩いていこうという考えだったらしい。
私はというと、もちろん払いたくない。
そんな私たちだったが『乗ったら楽だろうな〜…乗りたいな〜…』という気持ちに負けそうになるほどの道のり。
しかし、お互いに励まし合い無事に徒歩で観光を終えることができた。
宿に戻ってきた頃には、日も暮れ始めていた。
一度部屋で一休みして夕飯でも…ということになりベットに腰掛ける。
一度横になったのだが、これはすぐに寝てしまうと思い、久しぶりに部屋に備え付けのシャワーを浴びる。
こういう時の水シャワーは最高だ。
暑くなった体を冷やしつつ、汗と砂埃を洗い流す。
『明日、アンマンに戻ったら次はエジプトか…』
予定外のヨルダン滞在。
だが、素晴らしい経験をすることができた。
