【ちょっと昔の世界一周】 #41 《旅の仲間》
バスターミナルのドアが開く。
そこに立っていた女性は、ギリシャからトルコへの寝台列車で隣の部屋にいた日本人で間違いなかった。
「あの、、、ギリシャからの列車で隣でしたよね?」
私からの質問に対し、彼女はこちらに近づきながら答える。
「だよねー!!だと思った!!見た瞬間、あの時の人っぽいなぁ〜と思ったんだよ!ホント偶然だね〜、ねぇねぇ、ここにいるってことは夜行バス?どこ行くの?」
、、、、、
質問に対し、想像以上に返ってきた...
立ち話もなんですので、、、と隣の席に置いていた荷物をどかし、席をすすめる。
話をすると、なんと彼女も【サフランボル】に向かうために同じバスに乗るようだ。
「え〜っ、これってもう運命じゃない!やった〜私ってついてる〜!夜の移動って不安だったけど、この前といい一緒に行く人と出会えるなんて!」
、、、、、
なぜこれだけのキャラの人がツリーに泊まってなかったんだ...
そんなことを考える暇もなく、
「あっ、名前言ってなかったね。私は〝ヤザワ シオリ〟永ちゃんと同じあのYAZAWAだからね〜!シオリでいいよ!」
こうして、久しぶりの一人旅の気分に浸っていた私は、シオリさんと共にサフランボルを目指すことになった...
*****
バスの出発までは時間がある。
その間、(なかなかのキャラである)シオリさんとお互いの旅の話をしていた。
話を聞くと、なんと彼女はドイツに住んで保育士の資格を取るために勉強しているとのこと。
今は、夏のバカンス休暇を利用してフラッと旅をしている途中。
ドイツ在住&バカンス休暇旅行...
言葉だけ見ると、なかなか普段の私の旅では出会わない人だ。
しかし、本人を前にするとそんな雰囲気は全くといっていいほど感じさせない。
カウンターでこれから乗るバスのチケット確認をしている様子を見る限り、英語力は私よりはあるがペラペラではない。
さらに言えば、これってどういうこと?と私に聞いてくるぐらいなので、旅慣れもあまりしていなさそう。
私も今までの旅の流れを話していると、
「ノブ君いるなら大丈夫そうだね!よかった〜。頼んだよ!」
と完全に任される立場になっていた...
こんなシオリさんだが、しばらく一人で旅をしてきた私にとっては、一緒に行動するにはとてもいい仲間だった。
海外で旅をするには悪く言えば不用心なのだが、コミュニケーション能力が高いこともあり、周囲の人たちとすぐに打ち解けている。
おかげで待ち時間も周囲を巻き込んで楽しく過ごすことができた。
そんな中、一人のアジア人っぽい見た目の青年がいた。
雰囲気的に私のように!?グイグイいかないタイプであろう。
少し距離をとった場所でこちらの様子を見ている。
それに気づいたシオリさん。
開口一番、
「あれっ、日本人ですか?」
なんのためらいもなく日本語で質問していく。
ここまでサッパリと聞けるのはさすがだな...と見ていると、彼が答えた。
「No...I'm from Taiwan...」
台湾、、、日本人じゃなかった...
その答えを聞き、シオリさんはサッと私の影に隠れ、あとは任せた!と目で合図を送ってくる...
シオリさんは単語は私よりも知っていて、コミュニケーションをとるのも上手いので、ちょっとしたやりとりはスムーズなのだが、しっかりとした会話はあまり得意じゃないかな。とそれまでの会話で感じていた。
日本人だと思って話しかけたが、違ったことで焦ったのだろう。
意外にもシャイな一面も見せつつ、私の背中を小突いて話しかけてアピールをしている。
しょうがないなぁ〜と思いつつ、同じ日本人としてその後の会話は引き継いだ。
とはいえ、そこは私の英語力...
しかし、話せないからこそのコミュニケーション能力はこの旅で磨いてきた。
さらに、彼が台湾人ということもあり〝漢字〟を使った方法も使えた。
そんな私の会話術によると、彼の名前は〝ヤン〟といって休暇をとって旅行中、さらにいえば人生二度目の海外で初めての一人旅とのこと。
私の隣で聞いていたシオリさんも内容を把握し、多少慣れてきたこともあり通常モードのキャラに戻っていた。
ヤン君もサフランボルに向かうというので、流れで一緒に行動することにした。
英語を問題なく話せるが、初一人旅で多少緊張しているヤン君。
グイグイ引っ張ってくれるが、意外に人任せなシオリさん。
そして、なんだかんだ三人の中では最も旅慣れしているであろう私。
周りの旅行者は白人バックパッカーばかりなので、私たちアジア人チームは一致団結しバスに乗り込んだ。
*****
翌朝、早い時間に私たちを乗せたバスはサフランボルに到着した。
トルコのバスはアジアに比べ、とても快適なものだった。
二人がけの座席もそれなりの広さがあり、シートも悪くない。
私は通路側でシオリさんが窓側。
ヤン君は通路を挟んで隣にいたこともあり、一人での移動に比べ気持ち的にも余裕があった。
イスタンブールを出発し、しばらく進んでから就寝用にバスの電気は消えた。
それまでは窓から望める景色を眺めているシオリさんをよそに、ヤン君と話をしていたのだが、消灯が近づくにつれ静かになっていく車内の様子を察知し、お互いに段々と口数を減らし周囲の人達同様、就寝モードになっていく。
星空を眺めていると、さっきまで起きていたはずのシオリさんがあっという間に眠りにつき、私の肩に頭を乗せてくる。
シオリさんが窓側にいることもあり、夜空を見るにも頭がジャマでなかなか見づらい。
起こさないようにと体勢を戻すが、何度も繰り返すので私も諦めてそのまま眠ることにした。
そんなこともあり、サフランボルに到着した時にしっかりと睡眠をとれて調子がいい。
唯一、長時間シオリさんの頭が乗っていた方の肩がこっているが、旅の仲間だ。それはよしとしよう。
荷物を受け取り、バスに乗っていた他のバックパッカー達は海外では定番のガイドブックを持って各々の道を進んで行く。
一方、私たちアジア人チームは作戦会議を始めていた。
議題は宿探し。
ヤン君は候補があったが決めきれていないし、シオリさんはノープラン...
そんな中、私は泊まりたい宿があった。
ツリーでサフランボルを紹介された時に教えてもらった宿【バストンジュ】
通称【杖屋のペンション】
日本語も多少は通じるし、トルコの【宮沢りえ】と呼ばれる女将さんがいるらしい。
その話を伝えると、シオリさんは即決。
ヤン君も流れにのって行ってみることになった。

早い時間だったが宿は開いていて、宮沢りえ!?が出迎えてくれた。
部屋の確認をすると、ちょうどトリプルの部屋が空くらしい。
しかし、まだ早いのでチェックアウトが済んだら案内してくれるということで、無事に宿を見つけることができた。
荷物はフロントに置いてもらえるということで、一安心。
しかし、部屋が空くまでまで時間がある。
バスであまり寝れなかったと言っている(私の知る限り熟睡していた)シオリさんは、リビングで休んでいるというので、ヤン君と共に少し街歩きに出ることにした。
とはいえ、時間も早いこともあり店が開いているわけではない。
ブラブラと歩き回り少し高い場所から街を眺める。
サフランボルは街並みが世界遺産になるほどのものなので、それを眺めるだけでもいいものである。

うっすらと朝霧がかかっている街の雰囲気もより魅力を増してくれている。
改めて、こういった景色を見れること、そして新たな出会いがあることを感じ
『旅っていいな...』
仲間と共に、私の新しい旅が始まった。
