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《謹賀新年》 2022年も多様で多彩に! 【週刊新陽 #40】

『週刊新陽〜校長室から』、本年もどうぞ宜しくお願いいたします!

新年第1号は、冬休み前の全校集会から。多様な考えや生き方に触れる『人物多様性対談』に、松中権(まつなか ごん)さんが出てくれました。

対談相手が来校してくれたのは今回が初めてで、集会後には生徒たちとの交流もあり、性の多様性についてみんなで考える良いきっかけになりました。

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フォビアは溶かすことができる

全校集会の前半は、いつもどおりオンラインの講演会。

権(ごん)という珍しいお名前は、音楽の先生をされていたお父様が「ゴーンという響きがいいね」と命名されたのだそうですが、子どもの頃はよくからかわれたり笑われたりして嫌だったとのこと。

でも大学4年で留学した時にできた友達が、他の学生に「He is Gon(e), but he is here. He's still alive.」と紹介してくれた時のあたたかい笑いによって、自分の名前に対する印象がネガティブからポジティブに変わった経験をしたそうです。

周りや社会にあるネガティブな感情が、だんだん自分の中に埋め込まれてしまうことがあります。それを「フォビアの内在化」といいます。

フォビア(嫌悪感)は当事者を苦しめますが、溶かすことができます。その一番のきっかけは、周りの人が「そのままでいい」「LGBTQは当たり前」「多様性って大事だよね」と言ってくれること。

「今日は、当事者がどんな感じで人生を送るか想像してもらい、フォビアを溶かすきっかけになったらいいなと思っています。」と、ゴンさんのお話が始まりました。

LGBTQとは・・・Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング)の頭文字からなる言葉で、性的マイノリティを表す総称のひとつ

LGBTQと、いろんな人と、いっしょに。

ゴンさんは石川県金沢市出身で、三人兄弟の次男。保育園で気になる相手は男の子でした。そして「男の子は女の子が、女の子は男の子が好きなもの」と知るにつれて、「男の子のことが好きな自分は、本当は女の子だったはずが間違って男の子に生まれたのかもしれない」と悩んだ時期もありました。

中学、高校、大学とずっと自分がゲイであることを受け入れられず、ひた隠しにしながら「明るい次男坊」というキャラクターを演じ、女の子が好きなフリ、合コンに行けば盛り上がっているフリをしていました。そうしなければ、大切な仲間たちがいなくなってしまう、自分の居場所がなくなってしまう、そう思っていました。

それが変わったのは大学4年生の冬。ゴンさんは多文化共生の国オーストラリア・メルボルンに留学し、初めてカミングアウトします。

ドキドキしながら「I am gay.(僕はゲイなんだ)」と言ってみると、返ってきたのは「 I see, any boyfriend ?(あっそう。ちなみに彼氏は?)」という反応。

あまりに自然に自分のことを受け止めてくれたことが衝撃でした。そして、自分を出せるだけでこんなに安心するなんて。人生で初めて大きく深呼吸をして、身体中に酸素が巡ってくる感覚だったそうです。

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そのまま海外で就職するつもりでしたが、「日本人でカミングアウトしている人は珍しい。将来うちの会社で活かせるかもしれないね。」と広告代理店の電通の方に言われたことがきっかけで帰国。

2001年に電通に就職。でも結局日本ではまた自分を隠す日々が続きました。10年経ってゲイであることをオープンにし、性や年齢・国籍も越えた色々な個性の人たちが自分らしく歳を重ねていける場所づくりのためのNPO法人グッド・エイジング・エールズを立ち上げました。

それからしばらくは会社員と二足の草鞋を履いていましたが、2016年に転機が訪れます。そのきっかけになったのが、一橋大学の法科大学院の学生がゲイであることを暴露(アウティング)されてしまい、後に転落死した事件です。

かつて一橋大学の法学部で学ぶゲイの学生だったゴンさん。他人事とは思えませんでした。

「自分はカミングアウトして、会社で働きながらLGBTQの活動もできて幸せだと思っている。でもそれはたまたまラッキーなだけで、人生の歯車が違えば自分が命を落としていたかもしれない。不安の中で綱渡りの人生を過ごしている当事者はまだまだいる。」そう痛感し、2017年7月、電通を退職してLGBTQの活動に専念することにしました。

プライベートでも数年前に大きな変化がありました。

親友でトランスジェンダーの杉山文野さんとそのパートナーに精子提供し、現在、3歳と1歳の子を3人で育てています。ゲイの自分が子どもを持つなんて思ってもみなかった、とゴンさん。

社会は変わり始めています。みんなで社会を変えていければ。」という言葉で講演を締め括りました。

▼ゴンさんたちのファミリーエッセイ『3人で親になってみた

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▼講演内で紹介された、LGBTQのポートレート・プロジェクト『OUT IN JAPAN』メッセージ・ムービー第3弾。

▼情報発信を行うプライドハウス東京レガシーのLGBTQの子ども・ユース支援プログラム『ラップアラウンド・サポート』。オンライン相談も可能。


一人ひとりの中にある多様性

ゴンさんのパーソナルストーリーを聞いたあとは私から質問。

- どんな高校時代でしたか?

いつも自分を偽って、ゲイだとバレないようにすることに必死だった気がします。心から笑った記憶がないんです。

でも本当は、心を開いて話をしたり誰かとぶつかったりしたかった。

だから、LGBTQのユース(若者)が自分が自分であることを否定して可能性を閉じてほしくない、と感じています。

- LGBTQの情報発信に関する活動をしていて良かったこと、大変なことは?

良かったと思うことばかりですね。情報を知るだけで世界が広がって、偏見が解けていく人たちを見ると幸せに感じます。

唯一、大変だと感じるのは、対話する前に壁を作られてしまうとき。一部の方はまだ保守的で、そういう方々にどうやったら理解してもらえるかな、と試行錯誤の日々です。

- 価値観が違う人と心を通わせるのは難しいですよね。違う意見をプラスに変えるコツはありますか?

僕は、"全く考えが違う人"というのはいないのではないか、と思ってるんです。表面的には相容れないようでも、実際は共通のものがあることが多い。

たとえば「同性婚を認めたら家族が崩壊する」と言う方がいます。話をよくよく聞くと、人と人が一緒になって幸せに家庭を築いていくことが大事という意見で、それは同性婚の法制化をすすめたい僕達が目指していることと全く同じ。

対立は疲れるし対話もパワーを使うけれど、まずは深呼吸して落ち着いてから話を聞くようにしています。

それから、電通で働いている時などに色々な考えからアイデアが生まれる経験をしてきているので、意見の違いにも価値を感じています。

- これからの目標は?

性に関して「一人ひとりを大切にしよう」と活動していますが、人種や国籍など多様性やマイノリティの切り口は実はいろいろ。多様性を大切にしている人同士もっと繋がったらいいなと思っています。

自分が多様性の一部であることもあるし、一人の中にも多様性がある。人とは複層的で多層的なものということを当たり前にしていきたいですね。

ゴンさん教えて!トイレから人類の話まで

いつもの全校集会はここで終わりですが、「気になることがあれば何でも聞いてください。どんなことでも大丈夫!」と言ってくれたゴンさんの呼びかけに、生徒たちから質問が寄せられ、2人で教室を突撃しました。

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Q. 男性同士のデートはどんな感じですか?男女のデートとどう違うの?

一緒に居て楽しい場所でデートするのは男女のカップルと同じ。とはいえ日本では人前で男性同士が手を繋いでいると注目されることもあるので、人があまりいない場所に行くカップルは多いかも。温泉の大浴場で一緒にのんびりできるのは同性カップルならではかな。

Q. 日本で同性婚が認められないのはなぜですか?

憲法で婚姻は両性の合意のもとで成立するとされていて、男女のカップルのみが家族と思っている人たちがいるからです。

男女のカップルしか見えていない人たちに、まずは男性同士、女性同士のカップルもいることを知ってもらい、慣れてもらうことが必要。だから、同性カップルも幸せにしている、普通じゃん、と感じてもらえるよう可視化する活動をしています。

Q. 今後、人間の性のあり方や認識が変わっていくかもしれないことに興味があります。ゴンさんはどう思いますか?

うちのファミリーの子どもは上が女の子で下が男の子なんですが、保育園のときから、男の子とは、女の子とは、という価値観のシャワーを浴びていると感じます。だから自分たちは決めつけないように気をつけて、周りから聞かれれば敢えて「今のところ女の子」「今のところ男の子」と言うようにしています。男か女かではなくて、その子自身を大切にしたいですね。

性の捉え方で言うと、アメリカでは「ノンバイナリーと答える若者が増えている」という調査結果も。社会的な性との関わりや自分の性のあり方はみんながそれぞれでいい、という考え方にだんだんなっていくのではないかな。

Q. 企業の女性役員比率についてのニュースなどを見て、男女という2つの性だけで社会進出について語られることに違和感を覚えます。ゴンさんはどう感じますか?

今は男女のバランスが取れていないから女性の働く場やポジションをプッシュする力が必要な時期なのだと思います。

僕が勤めていた電通も女性社員や役員が少なかった。そして、実はそういう男性中心の社会の弊害は、LGBTQの問題とも繋がっています。たとえば「男はこうあるべきだ」という考えは、ゲイとしてプレッシャーを感じることがあります。

ちなみに最近、海外では履歴書に性別だけではなく名前を書く欄もない企業が出てきています。それは名前で人種や出身などルーツがわかってしまうことがあるから。能力だけで採用しようとする企業も増え、社会も少しずつ変わってきていると思う。

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Q. 公共のトイレやお風呂で困ることはありますか?

僕は男性として男性用のトイレやお風呂に行くだけなので困らないけど、トランスジェンダーやクエスチョニングの人などは違和感や困り感があります。

性に限らず様々な多様性の観点から、「中規模の個室トイレを複数作ること」が色々な人にとってハッピーという研究結果が。実際、北欧の図書館や学校では、性別の区別なく個室が並んでいるだけのトイレエリアも増えていますよ。

Q. Xジェンダー、中性と両性の違い。どう説明するとわかりやすいですか?

エックスジェンダーとは、生まれた時に割り当てられた性別に違和感はあるけど、性自認が明確に男性もしくは女性と言えない方。

そのなかにも、「男性か女性かは答えられない、まんなかあたりに自分がいる感じ」という中性、「日や季節によって、男性/女性の軸足がゆらぐ」という不定性、「男性も女性も、どちらの自分も存在する感覚」という両性など、さまざまな性のあり方が存在しています。

でも、実はLGBTQだって型にはめているとも言える。まずは「そもそも性は一人ひとり多様」という大前提に立って話していることを理解してもらうのが大事だと思う。

Q. 男の子はたくましく、女の子は美しく、などの固定概念をなくすことはできないのでしょうか?

まず、固定概念は人間が作っているものだよね。そして、人間が作ったものは人間が変えられる。

昔は、街で外国の人が歩いているだけで「ガイジン」と指差す人がいたけど、今はいろいろな国の人がいるのが当たり前。だからいつか、多様な性があることが可視化され、当たり前になる日が来ると信じています。固定概念を変えるためのアクションが増えれば、必ず変わっていくはず。

Q. スポーツインストラクターを目指しています。人と関わる仕事において、LGBTQの人と初めて関わる時に気をつけること、人間関係を築く上で心がけることはありますか?

相手がカミングアウトしているなら、それを踏まえた会話をするのが良いと思います。たとえばゲイなら「彼氏いるの?」、カミングアウトしていない人なら「お付き合いしている人いる?」という(彼氏、彼女、と括らない)聞き方だと、相手を異性愛者と決めつけない人だと感じて心を開きやすい。とはいえ世の中には、アセクシャルやアロマンティックの(他者に対して性的欲求や恋愛感情を抱かない)人もいる。

大切なのは、自分の発言が何かを決めつけてしまっていないか気にすること、決めつけないように心がけること。

それからLGBTQの人には、体についてコンプレックスがある人も少なくないので、スポーツインストラクターであれば、体に関してどこまで話をしたり触れたりしていいか、最初に聞くと良いと思うよ。

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「知る」ことはすぐにできるアクション

最後にゴンさんからみんなへメッセージ。

自分が高校生の時に、皆さんのように「LGBTQのことを知りたいな、学びたいな」という人がいたらよかったと思います。

この校舎の中にも、自分はLGBTQかもしれないと悩んでいる友達がいたり、LGBTQの先生や職員の方もいるかもしれません。

自分の身近にいるかもしれないと思い浮かべながら、『知る』ことを繰り返してくれたらすごく嬉しいです。今日は本当にありがとうございます。

集会後、職員室に戻ると、すぐに数名の生徒がやってきました。

みんな少し興奮した様子で感想を伝えたり、「カミングアウトしている人と会うのは初めて」と質問をしたり。個人的な悩みを打ち明ける生徒もいました。似顔絵付きの感想を書いて持ってきた生徒には、ゴンさん感動で目がうるうる!

一人ひとりとしっかり目を合わせながら話を聞いてくれるゴンさんに、生徒たちも前のめりで話が止まりませんでした。

ある生徒からは、「偏見は、それを知らない人たちによって生まれると思う。だから関心のあるなしに関わらずみんなが知ることが大事だし、いろいろな進路の人が集まっている高校で学ぶことに意義があると思います!」と言われました。

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「ユース世代の仲間もいるから交流する?」と聞くと「したいです!」と生徒たち。「大人は口だけって言われないようにちゃんと実現しようね(笑)。」と約束して、ゴンさんは帰って行きました。

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【編集後記】
札幌を発ったゴンさんから「質問をくれたけど答えられなかった生徒さんと、駅までの帰り道でおしゃべりしました!」とメッセージが来ました。関心を持って自分から声をかけたんだなぁ、と嬉しかったです。
ゴンさんがくれた『知る』きっかけを、生徒たちと一緒に大切にしていきたいです。

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