【閉館】池上一郎博士文庫の思い出
先日、屏東県竹田にある、池上一郎博士文庫が2026年3月末に閉館されることになった、というニュースを見た。
台湾南部の日台交流の貴重な拠点として活躍し続けたこの文庫も、世代交代、建物の老朽化、その他様々な思惑などにより、先日閉館が発表されたのである。

台湾好きの皆さんにはおなじみの存在かもしれないが、筆者にとっても格別に思い出深い場所だ。
文庫との出会いは2015年だっただろうか。初めて台湾一周をした時、地球の歩き方の片隅に載っていた、この小さな文庫のことを知り、この機会に訪れてみようと思って、立ち寄ったのだ。

11年前、初めて竹田を訪れた筆者に声をかけてくれたのが、近くに住む邱さんという男性。日本語で話しかけてきてくれたのだが、聞くといわゆる日本語世代ではないという。それでも、日本語世代の先生に日本語を教わり、筆者ともほぼスムーズに日本語でやりとりできるほどの日本語力をお持ちだった。
話が弾んで、なんとご自宅にお誘いいただいた。まずはお茶を勧められたのだが、せっかくだから泊まって行ったらどうか、どのお誘いまで受けてしまった。あいにくこの日は、台東まで移動して、そこの宿に泊まる予定だったので、丁重にお断りしたのだが、それから何回も邱さんのご自宅にお邪魔し、本当に泊めていただいたこともある。
筆者の台湾に対するイメージをかなり決定づけてくれた大切な場所なのだ。

池上一郎博士文庫が設立されるもととなった池上博士は、1943年に軍医として竹田に赴いた。博士は軍医として活躍しただけでなく、竹田の人々の医療にも大変尽くしたそうだ。その池上博士から二十数年前にたくさんの日本語書籍が竹田に寄贈され、駅の横に残っていた木造倉庫を修復して、日本語図書館として運営を開始したのだ。
運営当初は、まだまだご存命の日本語世代も多く、日本語の書籍は大いに喜ばれた。

その後次第に、この個性際立つ図書館、そしてそこに集う台湾人のお年寄りとの交流を求めて、日本人旅行者が訪れるようになった。
池上博士の誕生日である1月16日を記念して、現地では1月第二週あたりの毎年土曜日に記念祭が開かれるようになった。

そんな個性的な施設も、地域再開発の大きなうねりの中で姿を消そうとしている。たしかに、池上文庫は利益を出したり、地域経済の起爆剤になるような施設ではない。だが、積極的な日台交流を求める人が日本・台湾ともに一定数いる現在、日本と台湾をつなぐこのような施設がなくなるのは、本当に残念だ。

池上文庫の隣に建っていた、古い倉庫は、大幅にリノベされて、カフェに様変わりしていた。奥は民宿になるという。

「蘭禾屋」と名付けられたお店は、内装も綺麗で、コーヒーもなかなかおいしい。地元産の食材をふんだんに使った料理も提供するようで、これはこれとして未来に向けた一つの運営の答えになると思う。

試験営業だといってあるのに、すでにお客さんが何組も来ている。

本当は池上文庫に残ってほしいのだが、それが叶わないのなら、このカフェにも、末永く頑張ってほしいと思う。

もし今月中に台湾南部へ出かける予定がある方は、チャンスがあったら、ぜひこちらの文庫に立ち寄ってほしい。
【施設情報】
「池上一郎博士文庫」
住所:屏東縣竹田鄉豐明路23號
開館時間:8:30~11:30(日曜・月曜定休)
(これ以外にも臨時に休むこともあり得るので、事前に問い合わせたほうが確実)
