【ホームデポ: FY27Q2カンファレンスコール】既存店売上は1.7%増へ改善――大型リフォームは低迷も、Pro・SRS・配送強化でシェア拡大
ホームデポ(The Home Depot)が発表した2027年度第2四半期決算は、売上高が前年同期比5.7%増の478.6億ドル、調整後EPSが4.92ドルとなり、売上高・EPSともに市場予想を上回りました。
既存店売上高は1.7%増、米国では1.3%増となりました。月別では5月1.2%増、6月1.5%増、7月2.3%増と改善しています。調整後営業利益率は前年同期の14.8%から14.7%へわずかに低下しましたが、調整後EPSは前年同期比5.1%増となりました。
一方、取引件数は1.0%減となり、平均客単価が2.8%上昇しました。1,000ドル超の大型取引件数は2.4%増となったものの、会社は引き続き大型の裁量的リフォーム需要には圧力が残っていると説明しています。
2027年度通期ガイダンスは据え置き、既存店売上高は横ばい~2%増、総売上高は2.5~4.5%増、調整後営業利益率は12.8~13.0%、調整後EPSは前年同期比横ばい~4%増を見込んでいます。
今回の決算で重要なのは、住宅市場が本格回復していないにもかかわらず、既存店売上高がプラス圏へ戻り、カテゴリーの強さも広がってきた点です。
16の商品カテゴリーのうち13カテゴリーで既存店売上高がプラスとなり、特に電気、配管、金物、工具など店舗中央部の商品が好調でした。上位20カテゴリーのうち季節商品は3カテゴリーだけであり、春商戦だけに依存した改善ではありません。
一方で、会社自身は住宅市場の底打ちを宣言していません。住宅売買件数は歴史的な低水準が4年間続いており、金利低下時には多少の改善が見られるものの、「現時点で変曲点を示す兆候はない」としています。
では、今回の改善はホームセンター市場そのものの回復なのか、それともホームデポが市場シェアを奪っている結果なのか。大型リフォーム、Pro、SRS、デジタル、配送、粗利益率を中心に、QAセッションを確認していきます。
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今回のQAで最初に注目したいのは、経営陣が第2四半期の改善を「市場回復」よりも「シェア獲得」と捉えている点です。
アナリストからは、第1四半期から第2四半期に既存店売上高が約110bps改善した背景について、住宅リフォーム市場全体が改善したのか、それともホームデポ固有の施策によるものなのかという質問が出ました。
CFOは、住宅関連市場には依然として強い圧力があり、その中でホームデポのチームが市場シェアを獲得したと説明しています。
これは重要です。
ホームデポの業績は住宅価格、住宅売買件数、住宅ローン金利などマクロ環境の影響を強く受けます。しかし今回の改善は、住宅市場そのものが急回復した結果ではありません。
店舗在庫の改善、商品力、配送スピード、デジタル、Pro向け機能など、過去数年の投資が売上高へ転換し始めている可能性があります。
特にデジタル販売は前年同期比11%増となり、5四半期連続で2桁成長となりました。アプリはデジタル接点の中で最も高い成長を示し、AIを活用した「Magic Apron」には月間数百万件の質問が寄せられています。
さらに配送速度も大幅に改善しています。
在庫のある小型商品では65%超が当日または翌日配送となり、大型商品でも55%が2日以内に配送されています。全国展開を始めたExpress Deliveryでは、追加料金を支払えば3時間以内、実際には大半が1時間以内で届いています。
ホームセンターでは「今日必要」という需要が多いため、この配送時間短縮は単なる利便性改善ではありません。
作業現場で部材が足りなくなったPro顧客や、庭作業中に追加商品が必要になったDIY顧客にとって、1時間以内配送は店舗へ行く代替手段になります。配送能力自体が販売機会を増やしている点は、今後の競争力を見るうえで重要です。
次に注目したいのがProです。
第2四半期はProの既存店売上高がプラスとなり、DIYを上回りました。SRS(屋根材などの建築資材を専門業者向けに販売・配送する流通会社で、ホームデポがPro顧客向け事業を強化するため2024年に買収した企業。)も全事業領域で既存店売上高がプラスとなり、全社平均を上回っています。
ホームデポが現在作ろうとしているのは、店舗だけで完結するPro事業ではありません。
店舗、SRS、GMS、HVAC、QuoteCenter、配送、B2Bサイトを一体化し、住宅建設業者、リフォーム業者、商業顧客が必要とする商品を横断的に供給する仕組みです。
その象徴がQuoteCenterです。
従来は店舗にない大型商品を外部販売網から調達する仕組みでしたが、SRSとGMS(石膏ボードや天井材、鉄骨下地などを専門業者向けに販売する建築資材流通会社で、SRS傘下に加わることでホームデポのPro向け商品群を拡充しています)を傘下に入れたことで、ホームデポ自身のグループ内で受注を完結できるようになりました。直近12カ月では店舗の90%がSRS経由の販売を経験しています。
これは買収のシナジーを見るうえで重要です。
SRS単体の売上高成長だけを見るのではなく、ホームデポ店舗のPro顧客へSRSの商品を販売したり、SRS顧客へホームデポやGMSの商品を提案したりすることで、顧客1社当たりの取引額を増やせます。
会社は2026年度にSRSで1桁台半ばのオーガニック売上高成長を見込んでいます。
一方で、大型リフォーム需要はまだ弱いままです。
経営陣は、消費者が小規模な修繕・メンテナンス案件には引き続き支出しているものの、大型で裁量性が高く、ローンを利用するようなプロジェクトには圧力が残っていると繰り返し説明しました。
ここがホームデポの業績回復を考えるうえで最大のポイントです。
現在の成長は、住宅市場が正常化する前の段階で起きています。
もし将来、住宅ローン金利低下や住宅売買件数の回復によってキッチン、バス、大規模改修などが再び動き始めれば、現在の小口需要とPro成長に大型案件が加わる可能性があります。
反対に、住宅市場の停滞が長引けば、既存店売上高の大幅な再加速は期待しにくいでしょう。
その意味で今回の通期ガイダンス据え置きは妥当です。
第3四半期の開始時点でも第2四半期と同程度の需要が続いていますが、会社は住宅市場の停滞や消費者の不確実性を考慮し、既存店売上高横ばい~2%増という予想レンジを変更しませんでした。
また、今回の決算では粗利益率を数字だけで評価すると誤解しやすい点があります。
第2四半期の粗利益率は前年同期から25bps改善して33.7%でしたが、IEEPA関税の還付金によって売上原価が6.85億ドル減少しています。
会社が実際に受け取った還付金は7.30億ドルで、そのうち6.85億ドルがすでに販売済み商品の売上原価へ反映されました。残り4,500万ドルは在庫に残っています。
この還付効果は粗利益率を約145bps押し上げました。
一方、燃料、エネルギー、樹脂、金属などの追加コストが約60bpsの逆風となり、GMSなどの買収による事業構成変化も約60bps押し下げました。
したがって、粗利益率改善の大半がそのまま恒常的な利益率改善ではありません。
ただし会社は、関税還付の恩恵を通期では追加コストが完全に相殺すると説明しており、その前提でも年間ガイダンスを維持しています。第4四半期には粗利益率が前年同期比ほぼ横ばいへ戻る見通しです。
つまり、今回の還付金を「一時的な利益上振れ」とだけ見るのも正確ではありません。
ホームデポはその恩恵を価格へ還元し、燃料・商品原価などの予想外のコスト上昇を吸収するために使っています。短期利益を最大化するのではなく、競争力のある価格を維持することを優先しています。
客単価の上昇についても注意が必要です。
平均客単価は2.8%増でしたが、同一商品の価格上昇だけではありません。冷蔵庫、ポータブル電源、パティオ商品など比較的単価の高い商品の販売や、カテゴリー内でより高価格の商品を選ぶ動きも寄与しました。
つまり、既存店売上高1.7%増を単純なインフレによる成長と見るべきではありません。
一方、取引件数は1%減です。
今後、本格的な需要回復を確認するには、客単価だけでなく取引件数が継続的にプラスへ転じる必要があります。
SRSについてもポジティブな材料が多い一方、天候要因には注意が必要です。
2025年後半は暴風雨が少なかったため屋根材需要が弱く、SRSの業績も圧迫されました。2027年度は1桁台半ばのオーガニック売上高成長を見込んでいますが、屋根材など一部カテゴリーは気象条件によって変動します。
そのため、SRSの評価では自然災害関連需要だけでなく、QuoteCenter、クロスセル、住宅建設業者・商業顧客へのシェア拡大を確認する方が重要です。
総括すると、今回のホームデポ決算は、住宅市場が依然として停滞する中でも、既存店売上高がプラスとなり、商品カテゴリー、Pro、SRS、デジタル、海外事業へ成長が広がった内容でした。
ポジティブな点は、既存店売上高1.7%増、13カテゴリーでのプラス成長、デジタル売上高11%増、Proのプラス成長、SRSの全事業領域でのプラス成長、配送速度改善による販売機会拡大です。
一方で注意点は、取引件数が1%減であること、大型リフォーム需要が依然弱いこと、住宅売買件数に回復の兆候がないこと、第2四半期の粗利益率が関税還付の影響を大きく受けたことです。
今回の決算を受けると、ホームデポを見るうえでの焦点は、既存店売上高がプラスかどうかだけではありません。住宅市場が停滞する中でも市場シェアを拡大し、取引件数をプラスへ戻せるかが重要です。
今回のQAを踏まえると、特に注目したいのはPro事業です。店舗、SRS、GMS、QuoteCenter、配送、AIを活用したMaterial List Builderまでがつながり始め、単なるホームセンターから建設・リフォーム業者向けの総合調達プラットフォームへ近づいています。今後は米国既存店売上高、取引件数、大型案件の回復、SRSのオーガニック成長、Proのシェア拡大、粗利益率、そして住宅売買件数に変化が出るかを確認することが重要だと思います。

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