見出し画像

「瞬くとき」第3話

隣県・公園
公園の端にある、あの日と同じベンチに座っている瞬。
小さい子どもとお母さんが砂場や遊具で遊んでいる。
両足に両肘をつき、手のひらに顎を乗せてその様子を見ている瞬。
瞬M(金髪男性あのひと、来ないかな…)

(回想)総合病院・総合受付
瞬「お願いします!命の恩人なんですよ」
瞬、受付カウンターを乗り越える勢いで、受付嬢に頼み込んでいる。
受付嬢「何度も申しますが、個人情報になりますのでお教えできかねます」
瞬「そこをなんとか!悪用なんてしません!ただ、お礼が言いたいだけなんです!」
瞬、顔の前で両手を合わせ、お願いのポーズをする。
そこへ、あの日瞬の担当であった救急外来の看護師が通りかかる。
揉めている様子を見かねて、瞬に声をかける。
救急外来看護師「どうしましたか?」
瞬「…あ!あの日の看護師さん!」
救急外来看護師「あれ?公園で倒れてた…青木さん?だっけ?どうしたの?」
瞬「そうです!覚えててくれたんですか?」
救急外来看護師「すごく…お母さんに怒られてたから印象に残ってる」
救急外来看護師、含み笑いで答える。
瞬「あ、そ、そうですか…」
恥ずかしそうに笑う瞬。
救急外来看護師「もしかして、助けてくれた男性のことが知りたいの?」
瞬「そうなんです!あの、なんというか、お礼がしたくて…」
救急外来看護師「それがね…」
救急外来看護師、声をひそめ、総合受付から少し距離をとり、瞬に手招きする。
救急外来看護師「あの男性、身内じゃないから付き添いの義務はないのに、心配だから目が覚めるまでは付き添いますって言ってくれて…」
瞬「…へぇ…」
救急外来看護師「あくまで善意で付き添ってくれてただけだから、連絡先までは確認してないのよね」
瞬「そうだったんですか…」
瞬、肩を落とす。
救急外来看護師「あ、そういえば!青木くんが倒れてた公園の近くに大学があるんだけど、あそこの学生だって言ってたの思い出した!」
瞬、表情がパッと明るくなる。
救急外来看護師「でも、あの男性について分かるのはそのぐらいかな」
瞬「いや、助かります!ありがとうございました!」
一礼してその場を去る、瞬。
(回想終わり)

隣県・公園
瞬、変わらず公園のベンチに座っている。
公園にある複数のベンチで、学生らしき若者やスーツ姿のサラリーマンが昼食をとったり、公園内を散歩したりしている。
瞬M(大学っていっても、めちゃくちゃ学生多いし、名前も分かんないから聞きようがないよな。正門で突っ立てるだけだと不審人物扱いされっし…)
瞬「でも、もし偶然会えても、なんて話しかけよう…まぁ、まずはお礼を言って、それから?」
瞬、左小指の赤い糸を見る。
瞬M(このことは言えないし…とにかくもう1回、赤い糸の先が繋がってるかどうか確認して、それから考えよ)

同・公園(夜)
公園のベンチの上、寝袋に包まる、瞬。
瞬「こりゃあ、耐久戦だな…」

同・公園
瞬、日中は公園のベンチに座ったり、大学の周辺をウロウロする。
夜になると、寝袋に包まる。
金髪男性に会えないままの、瞬。
3日目の夜、警察官に注意を受け、公園を後にする瞬。

国道沿い・コンビニの前・外(夜)
野宿一式をママチャリに乗せ、コンビニへ移動する瞬。
コンビニの前に座り、手持ちの残金を確認する。
財布からは小銭にしか出てこず、寂しく夜空を見上げる。
コンビニを通り過ぎる若い男性。
引き返し、こちらに近づいてくる。
無意識に男性の動向を目で追う、瞬。
男性「すいません」
瞬の目の前で立ち止まる男性。
瞬「はい…?」
瞬M(おいおい、またインバウンドか?金髪?どっかで見たことが…)
男性「良かった、元気になったんですね」
笑顔を浮かべ穏やかな口調で話しかける男性。
瞬「…んあ、はい…?」
瞬、男性の顔を訝しげに見て、ハッとする。
瞬「ああ!」
瞬、叫んで立ち上がる。
瞬「もしかして、病院まで連れて行ってくれた方…ですか?」
男性「そうです、お元気そうで良かった」
男性、微笑む。
瞬「…」
突然の再会に、何から話をしようか考える、瞬。
男性「…」
2人の間に沈黙が流れる。
男性「…それじゃあ、僕帰りますね。まだまだ夜は冷えるので、体には気をつけて」
男性、笑顔だけ残して去っていこうとする。
数秒遅れて、彼の背中に向かって呼びかける瞬。
瞬「あの!」
立ち止まる男性、ゆっくり振り返る。
瞬「もし…良かったら…」
男性、静かにこちらを見ている。
瞬「今日、泊めてくれませんか?」
男性「…」
自分でも思いがけない言葉に戸惑い、言い訳をしようとする、瞬。
瞬「あ…いや、あの、えーっと…」
男性「あの…よく知らない人を泊めるのは…」
男性の言葉を遮り、焦って喋る、瞬。
瞬「ごめんなさい!そうですよね!名前すら知らないですもんね!」
男性「…」
瞬「さっきのことは忘れてください。あの…お礼したくて、あなたを探してました。あの、この前は本当にありがとうございました!マジでまた死ぬとこだったんで、ほんと助かりました!」
勢いよく頭を下げる、瞬。
男性「また?」
頭を上げる、瞬。
瞬「いや、ま、色々あって…」
頭を掻いてはぐらかそうとする、瞬。
男性「あの…夕飯、もう食べましたか?」
瞬「まだです。あ、でもお腹空いてない…」
ギュルギュル。
言葉を否定するように瞬のお腹が鳴る。
急いでお腹に手を当てる、瞬。
男性「ふふっ」
瞬「あ、いやこれは…」
男性「近くにファミレスがあるので、一緒にどうですか?」
瞬「…いや、実はお金がなくて…あの、俺のことは気にしないで下さい」
男性、ちょっと考え、
男性「じゃあ、うちで食べませんか?」
瞬「え、あ、でも、俺がお礼しなきゃなのに」
男性「それは気にしないで下さい。それに…ゆっくり話もしたいから」
瞬「…」
微笑む、男性。

路地・外(夜)
男性のアパートに向かう途中、やっと自己紹介をする2人。
男性の名前は、灰沢 斗喜はいざわ とき(20)、大学3年生。
瞬、正直に隣県から来ていることや高校を中退したことを斗喜に話す。
話している間、斗喜の左小指の赤い糸の先を辿る瞬。
それは、やっぱり瞬の左小指にしっかりと繋がっている。

男性のアパート・中(夜)
アパートの玄関ドアが開き、斗喜が入ってくる。
斗喜「どうぞ、上がってください」
瞬「本当に、お邪魔していいんすか?」
斗喜、靴を脱いで鞄を床に置き振り返る。
斗喜「実は、数日前からあなたを見かけてたんだけど、なんとなく声をかけずらくて…でも、毎日あなたを見かけるうちに、もしかして僕に用があるのかなと思って声をかけました。なので、遠慮せずどうぞ入ってください」
瞬「そんじゃ、失礼しまーす」
おずおずと靴を脱ぎ、部屋に上がる、瞬。
斗喜「ここに座ってください」
シングルベッドの横に置かれた小さな円卓の前を指す、斗喜。
瞬、指示通りに円卓前に正座する。
斗喜「そんなにかしこまらないで」
瞬の固い動作を見て思わず笑ってしまう、斗喜。
スーパーで買ってきた値引きシールの貼られたお惣菜を机に並べる、斗喜。
斗喜「こんなものしか出せなくてごめんね」
瞬「いや、こちらこそ急にお邪魔してすいません」
斗喜、白ごはんをお皿によそい、瞬の前に置く。
斗喜「好きなだけ食べてね。ご飯はおかわりあるから」
瞬「ありがとうございます。なんか、いっつもピンチの時に助けてもらって…」
斗喜「そうなの?」
瞬「はい!白ごはん、うめぇ!」
箸が止まらない、瞬。

✕ ✕ ✕

瞬「ふー、美味しかった!ごちそうさまでした」
机の上の惣菜は全て空になっている。
すっかり、くつろいでいる瞬。
そんな瞬の様子を見て、微笑む斗喜。
斗喜「そういえば、わざわざ僕にお礼を言うために野宿までして探してくれたの?」
瞬「まぁー、そうっすね。あとは…」
一瞬、赤い糸がよぎり、続きを言い淀む瞬。
斗喜「あとは?」
瞬「実は俺、交通事故で死にかけたんです。で、後悔したまま死にたくないと思って。だから、運命の人を探してるんです!」
斗喜「へぇ…」
瞬「おかしいって思いますよね」
斗喜「いや、そんなことはないけど…でも、どうやって探すの?」
瞬「そ、それは…勘?」
斗喜「勘?」
瞬「そう!死にかけてから、いやに直感が働くようになっちゃって。ドラレコみたいに「目的地周辺です」(ドラレコの真似)って勝手に頭に入ってくるみたいな!」
斗喜「あははは、なにそれ面白いね」
声を出して笑う斗喜を見て、少しときめいた瞬。
瞬M(あれ?今ドキってした?)
プルルルルルルル
スマートフォンの呼び出し音が鳴る。
スマートフォンを持ち上げ、画面を確認する斗喜。
斗喜「…ちょっと電話してくるね」
笑っていた表情を固くして、玄関を出ていく斗喜。
斗喜の様子に疑問を感じた瞬だが、1人になった瞬間、強い眠気に襲われる。
瞬「ちょっとだけ…」
床に転がっているクッションを枕にして横になる瞬。

✕ ✕ ✕

斗喜「ごめん、ごめん」
言いながら、玄関を開ける斗喜。
斗喜「?」
室内の静けさを感じ、ゆっくりと部屋に入る、斗喜。
クッションを枕に床で爆睡する瞬。
微笑む、斗喜。

ー翌朝ー

顔に当たる日光で目を覚ます瞬。
瞬「!?」
覚醒しきっていない頭のまま、周囲を見渡し、ベッドで寝ている斗喜を見る。
勢いよく起き上がる瞬。
瞬M(やべ!俺、あのまま寝ちゃったってこと?最悪)
瞬の気配を感じ、目を覚ます斗喜。
斗喜「…おはよう。よく眠れた?」
背伸びをしながら話しかけてくる斗喜。
瞬「は、はい。なんか勝手に寝ちゃって、すいませんでした」
斗喜「はは、すごく疲れてたみたいだね」
ベッドから起き上がり、キッチンへ向かう斗喜。
斗喜「喉乾いたでしょ?水しかないけど飲む?」
瞬「あ、はい」
斗喜のいる方を見ると、瞬と斗喜をつなぐ、赤い糸が見える。
瞬M(この人、絶対ノンケだろうし、俺が相手とかマジ最悪だろうな…)
瞬、左小指をくいっと動かしながら、
瞬M(これってどうにか切れないもんかな)
「運命の赤い糸」に逆らう方法を探り始める、瞬。

いいなと思ったら応援しよう!