銀河連合株式会社 #10 気合でなんとか
銀河連合株式会社本部の朝。
クル=ルは三つの目をこすりながら席についた。
「昨日ほとんど寝てない……」
触手族ゼル=マルが触手をしおらせた。
「お前……そんなこと言ったら“あれ”が来るぞ……」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「ここでは“体調”より“気合”が重視されるのよ」
タナカは静かに言った。
「僕は以前、熱があっても“気持ちで負けるな”と言われました」
クル=ルは不安になった。
「気持ちで……?」
そこへ無表情ロボットK-08が現れた。
「クル=ルさん、疲れているようですね」
クル=ルは正直に言った。
「はい……少し休みたいです……」
K-08は淡々と告げた。
「休む必要はありません。
疲れは“気合”で消せます」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「き、気合で……?」
ゼル=マルが触手を震わせた。
「ほら来たぞ……精神論ブラックの真骨頂……」
ルミナは光を弱めた。
「気合で治るなら、医療はいらないわよね……」
タナカは遠い目をした。
「僕は以前、“気合が足りない”と言われて 追加タスクを渡されました」
K-08は続けた。
「なお、気合が不足していると判断された場合、
“気合強化研修”が自動的に割り当てられます」
クル=ルは震えた。
「気合強化研修って……何をするんですか……?」
「簡単です。
“気合がある”と言うまで帰れません」
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「それ……研修じゃなくて拷問だろ……」
その瞬間、クル=ルの端末に通知が届いた。
《新規タスク:気合強化研修
理由:疲れたと言ったため
終了条件:“気合でいけます”と自己申告すること》
クル=ルは三つの目を伏せた。
「ぼく……ただ疲れただけなのに……」
タナカは静かに言った。
「ここでは、“疲れた”は弱音じゃない。
気合不足の証拠なんです」
休憩スペースの照明がふっと揺れた。
その日の勤務表には――
クル=ルの“気合強化研修:参加済”が自動的に記録されていた。
