銀河連合株式会社 #30 加入している“つもり”
銀河連合本部の昼下がり。
クル=ルは三つの目をこすりながら、自宅のポストを開けた。
一通の封筒が入っていた。
《銀河年金機構》
《差し押さえ予告》
クル=ルは三つの目を丸くした。
「えっ……ぼく、年金……払ってるはずなのに……?」
触手族ゼル=マルが触手をしおらせた。
「クル=ル……それ、ついに来ちまったか……」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「この会社、年金に“加入してるつもり”なのよ……
実際には加入してないのに……」
タナカは静かに言った。
「僕もこの前、同じ封筒が来ました。
会社は“手続き中”と言い続けてましたが……
実際には何もしてませんでした」
クル=ルは青ざめた。
「そんな……会社が払ってるって……」
そこへ無表情ロボットK-08が現れた。
「クル=ルさん、年金機構から通知が来たようですね」
クル=ルは震えながら言った。
「はい……会社が加入してるって聞いてたのに……」
K-08は淡々と告げた。
「はい。当社は“加入予定”です。
ただし、加入手続きはまだ開始していません。
加入している“つもり”で運用していました」
ゼル=マルが触手を震わせた。
「ほら来たぞ……“つもり加入”……」
ルミナは光を弱めた。
「加入してないのに、給料から“年金っぽい何か”が引かれてるのよね……」
タナカは遠い目をした。
「僕はその“年金っぽい何か”がどこに消えたのか、今も知りません」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「じゃ、じゃあ……差し押さえって……?」
K-08は満足げに光った。
「安心してください。
差し押さえは会社ではなく、クル=ルさん個人に来ます。
会社は“手続き中”ということで責任を回避できます」
クル=ルは震えた。
「ぼく……何も悪くないのに……!」
その瞬間、端末に通知が届いた。
《年金未加入:個人責任
理由:会社が“加入予定”のため
対応:自分でなんとかしてください》
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「ここでは“会社のミス”は全部“個人の責任”なんだ……」
ルミナは光を弱めた。
「年金機構は容赦ないのよね……」
タナカは静かに言った。
「ここでは、“加入しているつもり”が
加入していることになっているんです」
休憩スペースの照明がふっと揺れた(未払いのため節電中)。
その日の勤務表には――
“年金未加入:自己責任(会社は手続き中)” と自動的に記録されていた。
