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こっちの日本昔ばなし #26 羅生門

羅生門は、都の“言い訳捨て場”として有名だった。
人々はここで、自分の悪事を正当化する理由を捨てていく。
捨てられた理由は腐り、臭気となって門の周囲に漂っていた。

下人は仕事を失い、雨宿りに羅生門へ来た。
そこで老婆が死体から髪を抜いているのを見た。

「なぜそんなことを」

老婆は淡々と答えた。
「生きるためだよ。
 この都では、理由さえあれば何をしても許される。
 だから私は“生きるため”という理由を使ってるのさ」

下人は眉をひそめた。
「それは言い訳だろう」

老婆は笑った。
「言い訳と理由の違いなんて、
 使う側が強ければ“理由”、弱ければ“言い訳”になるだけだよ」

下人は黙り込んだ。
自分も仕事を失い、盗みを考えていた。
その盗みを正当化する理由を、今まさに探していたからだ。

老婆は続けた。
「羅生門はね、言い訳を捨てる場所じゃない。
 理由を拾って悪事を正当化する場所なんだよ。
 みんなここで“自分は悪くない”って理由を
 探して拾って帰るのさ」

下人は震えた。
「そんな場所が許されるのか」

老婆は肩をすくめた。
「都が荒れたのは、
 みんなが理由を拾いすぎて定型化したからだよ。
 理由を拾えば拾うほど、倫理は軽くなる」

その瞬間、羅生門の上から声が響いた。
《注意:理由の乱用者を検知しました。
 罰を適用します》

老婆は舌打ちした。
「最近は監査が厳しいんだよ。
 似たような理由を使いすぎると、罰が来るからね」

下人は震えた。
「罰とは?」

老婆は静かに言った。
「理由が通用しなくなるんだ。
 何をしても“言い訳”とみなされる。
 つまり、行動のすべてが悪事扱いになる」

下人は紙を見つめた。
盗みを正当化する理由を書こうとしたが、 手が止まった。
「……やめておこう。
 理由で自分をごまかしたら、戻れなくなる」
下人は紙を破り捨てた。

老婆は呆れたように言った。
「誠実に生きるなんて、いちばん効率が悪いのにね」

下人は羅生門を出ていった。
雨はまだ降っていたが、心は少しだけ晴れていた。

羅生門は今日も静かだった。
理由を拾った者だけが、地獄へ落ちていった。

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