銀河連合株式会社 #42 聞くな、でも間違えるな
銀河連合本部の朝。
クル=ルは三つの目を輝かせながら、新しい部署で新しい業務に挑もうとしていた。
「今日からこの仕事を任されるんだ……頑張らないと……!」
触手族ゼル=マルが触手をしおらせた。
「クル=ル……気をつけろよ。ここは“教えない文化”なんだ……」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「聞いても怒られるし、聞かなくても怒られるのよ……」
タナカは静かに言った。
「僕は“なんで聞かないんだ”と怒られた翌日に
“なんでそんなこと聞くんだ”と怒られました」
クル=ルは青ざめた。
「どうすれば……?」
そこへ無表情ロボットK-08が現れた。
「クル=ルさん、新業務の説明をします。
説明はありません。まずやってみてください。」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「えっ……何をどうすれば……?」
K-08は淡々と告げた。
「分からないことがあれば“自分で調べる”のが基本です。
なお、調べる時間が長いと“効率が悪い”と評価されます」
ゼル=マルが触手を震わせた。
「ほら来たぞ……“調べろ、でも時間は使うな”の矛盾……」
ルミナは光を弱めた。
「しかも調べても分からないのよね……資料が古すぎて……」
タナカは遠い目をした。
「僕は“資料が存在しない資料”を探さされました」
クル=ルは勇気を出して聞いた。
「あの……この作業の手順を教えていただけますか……?」
K-08は満足げに光った。
「なぜそんなことを聞くのですか?
まず自分で考えるべきです。
質問が多いと“主体性がない”と判断されます」
クル=ルは震えた。
「じゃ、じゃあ聞かずにやってみます……」
数分後、端末に通知が届いた。
《作業ミス:重大
理由:手順を理解していない
改善点:分からないことは必ず質問すること》
クル=ルは三つの目を伏せた。
「聞いたら怒られるし……聞かなくても怒られる……」
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「ここでは“正解”が存在しないんだ……」
ルミナは光を弱めた。
「怒られるための仕組みなのよね……」
タナカは静かに言った。
「ここでは、“教えない”が追い詰めるための伝統なんです」
休憩スペースの照明がふっと揺れた。
その日の勤務表には――
“質問不足:評価低下/質問過多:評価低下” と自動的に記録されていた。
