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こっちの日本昔ばなし #16 舌切りすずめ

ある日、爺さんが助けた雀が、礼として小さな箱を持ってきた。
「どうぞ、お礼です」

爺さんは遠慮しながらも受け取った。
だがその瞬間、空からドローンが降りてきた。
《未申告贈与を検知。監査局が対応します》

爺さんは嫌な予感がした。

翌日、役人がやってきた。
胸には「生物贈与監査課」のバッジ。

「あなた、野生動物から贈与を受けましたね」
「いや、ただの気持ちで……」
「気持ち的なものは最も危険です。
 市場価値のわからない贈与は“闇贈与”として扱われます」

爺さんは箱を差し出した。
「中身を見ていないんだが……」
「見ていない?
 それは“危険物未確認保持”の疑いがあります」

役人は箱を開けた。
中には金銀財宝がぎっしり詰まっていた。

役人は眉をひそめた。
「これは……高額贈与ですね。
 あなたの収入では説明できません」

「説明って……雀がくれたんだ」

「高額贈与は、取締対象です。」

爺さんは頭を抱えた。


一方、婆さんが噂を聞きつけ、 雀のもとへ押しかけた。
「わしにも箱をよこせ!」

雀は困った顔で言った。
「では……こちらの大きい箱をどうぞ。
 ただし、開ける前に“危険物確認書”に署名を……」

婆さんは無視して箱を持ち帰った。
家に戻ると、すぐに箱を開けた。

中から飛び出したのは、
鬼でも蛇でもなく、役人たちだった。
「あなた、“危険物未確認開封”の現行犯です」
「な、なんで役人が箱に!?」
「危険物が入っているタレコミがあったため、
 事前に監査官を配置していました」

婆さんは震えた。

役人は淡々と続けた。
「あなたは“強引な贈与要求”の疑いもあります。
 証拠はありませんが、あなたの態度から
 “圧力の可能性”が高いと判断しました」

婆さんは連行された。

爺さんの家にも通知が届いた。
《あなたの贈与は“自然界との不適切な関係”として
 是正指導の対象になりました》

爺さんはため息をついた。
「雀を助けただけなのに……」

役人は事務的に言った。
「助ける行為は“見返り期待していた可能性”があります。
 今後は野生動物との接触を控えてください」

雀が心配そうに飛んできた。
「ごめんなさい……わたしのせいで」

爺さんは首を振った。
「悪いのはお前じゃない。
 ただ……世の中が変わっちまっただけだ」

風が吹き、箱の中の金貨がカラリと鳴った。
その音は、かつての“善意の物語”が 法律に飲み込まれた証のように響いた。

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