こっちの日本昔ばなし #1 うさぎとかめ
森の中央にある「動物評価センター」では、
すべての動物が“年次評価”を受けなければならなかった。
今年の目玉は、もちろん――
うさぎとかめの競争の再評価である。
センター長が言った。
「昔話では、かめが勝ったことになっているが……
現代の評価基準ではどうだろうね」
まず、うさぎが呼ばれた。
「あなたは途中で昼寝をしましたね」
うさぎは胸を張った。
「はい。
自己管理の一環として、適切な休息を取っただけです」
評価官たちはうなずいた。
「素晴らしい。
“休む勇気”は現代の重要スキルだ」
次に、かめが呼ばれた。
「あなたは休まずに歩き続けたそうですね」
かめは誇らしげに言った。
「はい。
努力すれば必ず報われると信じていました」
評価官たちは顔をしかめた。
「危険な思想だ。
“無理をする働き方”は時代遅れだよ」
かめは戸惑った。
「で、でも……結果は私が先にゴールしました」
センター長は書類をめくりながら言った。
「結果だけで評価する時代は終わった。
重要なのは“プロセス”と“姿勢”だ」
最終評価が発表された。
総合評価:うさぎ A 総合評価:かめ C
かめは震える声で言った。
「……私は、どうすれば評価が上がるんですか」
センター長は優しく微笑んだ。
「簡単だよ。
うさぎのように、適度な水分補給と休息を意識して
うまくサボりなさい」
かめはゆっくりとうなずいた。
その日から、森では奇妙な光景が見られるようになった。
かめたちが木陰で昼寝をし、
うさぎたちが「努力は危険だよ」とアドバイスして回るのだ。
そして森の掲示板には、新しい標語が貼られた。
『結果より、言い訳の質』
