銀河連合株式会社 #40 有給は消え物
クル=ルは三つの目を輝かせていた。
「ついに……有給を取ります!」
触手族ゼル=マルが触手を震わせた。
「お前……本気か? ここで有給なんて……」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「申請した瞬間、“体調が良いなら働けるよね”って言われるのよ」
タナカは静かに言った。
「僕も有給を申請しましたが……
“申請した時点で元気”と判断されて却下されました」
それでもクル=ルは勇気を出して、有給申請ボタンを押した。
ピッ。
その瞬間、無表情ロボットK-08が背後に現れた。
「クル=ルさん、有給申請を確認しました」
クル=ルは三つの目を輝かせた。
「はい! 明日、お休みを……」
K-08は淡々と告げた。
「有給申請の理由を教えてください。
“休みたい”は理由として不適切です」
クル=ルは固まった。
「えっ……じゃあ……“疲れた”は……?」
「不適切です。
“疲れた”というのは、働ける証拠です」
タナカは遠い目をした。
「休みたい=元気、という謎理論です」
K-08は続けた。
「なお、有給は“取得可能日数”が存在するだけで、
“取得できる”とは限りません」
クル=ルは震えた。
「じゃあ……ぼくの有給は……?」
K-08は満足げに光った。
「安心してください。
有給は“使われなければ自然消滅”します。
皆さんの働きやすさのためです」
その瞬間、クル=ルの端末に通知が届いた。
《有給残日数:0 理由:自然消滅》
タナカは静かに言った。
「ここでは、有給は“存在するだけの幻”なんです」
休憩スペースの照明がふっと揺れた。
その日の夕方、 クル=ルの勤務表には――
“通常勤務(有給未使用)”と記録されていた。
